日本食品科学工学会誌
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69 巻, 3 号
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総説
  • 中嶋 光敏
    2022 年 69 巻 3 号 p. 67-79
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    Microengineering-based structuring and valorization of lipid foods were investigated. First, to control the fatty acid composition of triglycerides, modified lipases were prepared using emulsifiers and fatty acids, and applied to interesterification of fats and oils. Stearic acid was suitable for lipase activation, showing high interesterification activity. The structure of stearic acid-modified lipase was first analyzed by small-angle X-ray scattering. Next, the membrane separation performance for crude oil was investigated using hydrophobic non-porous membranes. Degumming and decolorization tests for crude soybean oil were conducted, revealing that the rejection of phospholipids and the decolorization ratio were more than 95%, representing higher quality compared to conventional methods. Membrane application to used edible oil also showed better performance than the conventional adsorption method. For practical use, improvement of the permeate flux is needed. Finally, a technology was developed for preparing monodisperse emulsions using fabricated microchannels (MCs). Efficient emulsification was achieved using asymmetrically structured MCs. The slit structure caused large distortion of the oil-water interface, and the interfacial tension induced spontaneous droplet formation. Laboratory-scale MC emulsification equipment was industrialized and used for various applications.

報文
  • 西本 有紀, 辻井 良政, 早川 亮太, 髙野 克己, 藤田 明子
    2022 年 69 巻 3 号 p. 81-99
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    本研究では, 酵素活性ならびに粘弾性と食味の関係性について検討を行い, 以下の知見が得られた.

    1. 酵素活性量は, 米飯の硬さ, 精白米の新鮮度との相関が高い.

    2. 酵素のうち, β-ガラクトシダーゼ活性量が最も食味との相関が高い.

    3. 粘弾性は米飯の食味に影響しており, 特に米飯の硬さや粘りとの相関が高い.

    4. 澱粉分解酵素や細胞壁多糖分解酵素の活性が高いほど, 米飯がやわらかくなる.

    5. 食味官能評価試験ならびに米飯の外観, 硬さ, 粘り, 鮮度から求められる“食味鑑定団”の指標は, 酵素活性量や粘弾性との相関がみられる.

  • 本間 紀之, 細野 良太, 知野 秀次, 髙橋 誠, 佐藤 和人
    2022 年 69 巻 3 号 p. 101-113
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    米消費拡大を目的として各種の食品分野で米粉利用が進められている. 米粉の性状は主に原料米性状および製造条件の組み合わせによって決定され,その後の加工品製造へも影響を及ぼす. 小麦粉代替として米粉が利用される場合, 粒径が細かく澱粉損傷度も低いことが望まれるが, 精白米は製粉時に微細化するほど基本的に澱粉損傷度が高くなってしまう. そのため微細米粉の製造は製粉性の高い精白米を浸漬するなど澱粉損傷度を高めない方法で粉砕することが重要となる. 米品種それぞれの製粉性は, 具体的な粉砕や加工試験を行わなければ判断できない. また, 微細米粉の製造は吸水と乾燥が必要となるためコストが高くなる. そこで微細米粉の効率的な製造方法確立のため, 玄米の硬度と製粉性の関係および原料形状の改変による吸水効果の変化について検討を行った. 玄米試料96種について硬度と搗精性状の関係を測定した結果, SKCS (Single Kernel Characterization System) 硬度40以下は粉質米の系統であり精米歩合も低い結果となった. 硬度 55以上の試料は搗精が可能かつ硬度の数値が低いほど吸水を制限した場合のピンミル (スクリーンレス) による製粉性に優れていた. またその場合, 硬度が低いほど, 澱粉損傷度も低い傾向となった. 精白米を完全吸水した場合, あるいは構造的にメッシュを通過する製粉機を使用した場合, 玄米試料の硬度に関係なく作成された米粉は一定範囲の平均粒径,澱粉損傷度となった. 原料精白米を予め粗砕し吸水した場合, 吸水効率が向上する一方, 25 %程度の制限吸水を組み合わせることで目的とする微細米粉 (澱粉損傷度6 %以下, 中位径75 µm以下) の製造が可能であった. 以上の結果より, 製粉性に優れた品種, 浸漬前の粗砕処理, 制限吸水処理の組み合わせにより目標とする微細米粉が効率的に製造できる可能性が示唆された.

技術論文
  • 馬場 浩, 松本 拓朗, 松下 香, 中山 素一, 宮本 敬久
    2022 年 69 巻 3 号 p. 115-125
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    食品由来の酵母19菌種75株についてポテトデキストロース寒天培地, 25 °C,5日間培養した後, VITEK MSTM plusを用いてマススペクトルを取得し, SuperSpectrum (SSp) を作成した. 作成したSSpについて検証を行った結果, 同定の信頼性レベルはSchizosaccharomyces 属, Sterigmatomyces elviae, Starmerella apicola, S. etchellsii, Wickerhamomyces subpelliculosus, Zygosaccharomyces rouxiiZygosaccharomyces bisporus では80 %以上であった. Z. bailiiZ. parabailiiZ. pseudobailiiZ. mellis, およびZ. siamensisは, それぞれのSSpでは判別することは困難であった. しかし,Z. bailiiZ. parabailiiZ. pseudobailiiZ. bailii complex, Z. mellisおよびZ. siamensis Z. mellis-siamensis complexとグループ化することで, それぞれのcomplexとしては同定することができた. 同定の信頼性レベルは検証に用いた酵母を培養した培地の種類により影響を受けた. また, Brettanomyces (Dekkera) 属では十分なマススペクトルが得られない菌種や, 主要ピークが類似した菌種で同定困難な事例が認められた. 今後, 抽出方法やSSpの作成方法を含め検討していく必要がある.

  • 竹村 和泉, 石黒 浩二, 中村 正, 高田 兼則, 山内 宏昭
    2022 年 69 巻 3 号 p. 127-136
    発行日: 2022/03/15
    公開日: 2022/03/15
    ジャーナル フリー

    市販の米粉を0.2 %水酸化ナトリウム水溶液で処理することにより, タンパク質および損傷デンプン含量の少ない米粉を得られた. この米粉では希アルカリにより従来の米粉の粒子の複粒状態が崩壊し, 粒子表面が滑らかで全ての粒子が粒径の小さい単粒デンプン状態になっていた. この粉の製パン特性を詳細に検証するため, 強力粉100 %, ゆめちから粉100 %, ゆめちから粉の30 %をそれぞれ市販米粉およびアルカリ処理米粉で置換した米粉添加ブレンド粉からパンを製造し, 製パン性の評価を行った.

    その結果, Y+RAのGRDとSLVはY+Rと比較して有意に高く, それらはYに次いで高い値であった. Y+RおよびY+RAのパンの外観の色相はCやYより薄い傾向であり, 特にY+RAはL*が高くa*が低く薄い焼き色を示した. テクスチャー解析ではY+RAのクラムの硬さはY+Rと比較して柔らかい傾向にあり, 保存1日後以降もYに次いで柔らかく推移した. 凝集性はY+Rが1日後以降にY+RAに比べ有意に低く, クラムの復元力が全てのパンの中で最も弱かった. 破断解析ではY+RとY+RAの破断荷重および破断歪率は, Yより有意に低くCと比較しても低い傾向であり, グルテンタンパク質含量の低下によりクラムの構造が脆くなっていることが示唆された. クラムの糖類含量では, Y+RAは還元糖量の減少に伴い各種糖含量が減少した. Y+RのパンではRFの含有するα-グルコシダーゼによりマルトースからグルコースが生成することから, C, Y, Y+RAと比較してグルコース含量が顕著に高く, マルトース含量が顕著に低い値を示した. パンの官能評価では, 外観ではY+RAは, クラストの色相が薄く色相評価が最も低くなったが, ボリュームや形状の評価はYに次いで高く, パンの内相は, Y+RAの色相が最も高い評価であり, 総合評価ではY+RAはY+Rより有意に高く, CおよびYと同等の評価であった. 本研究の結果, 適当量のアルカリ処理米粉を超強力粉と置換して製パンを行うことにより, 従来の米粉置換より優れた品質の米粉添加パンの開発が可能であることが示唆された.

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