日本食品科学工学会誌
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63 巻, 3 号
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報文
  • 田中 福代, 岡崎 圭毅, 樫村 友子, 大脇 良成, 立木 美保, 澤田 歩, 伊藤 伝, 宮澤 利男
    2016 年 63 巻 3 号 p. 101-116
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
    リンゴみつ入り果と非みつ果の香味特性および香味成分のプロファイリングを実施し,嗜好性と香味成分との関連を検討した.みつ入り果の揮発性成分はメチルエステル類,エチルエステル類が特徴的に増加した一方,酢酸エステル類や炭素数3以上のアルコール由来のエステル類は減少した.可溶性成分ではソルビトール,スクロース,L-アラニン,ピログルタミン酸,デヒドロアスコルビン酸が増加し,グルコースが低下した.試算した甘味度積算値はみつ入り果がわずかに大きかった.官能評価の結果,‘ふじ’ のみつ入り果は全体的な香り,フルーティ,フローラル,スィートが顕著に強く,嗜好性も高かった.みつ入り果で特徴的に検出されたエチルエステル類等(特に2-メチル酪酸エチル,ヘキサン酸エチル,チグリン酸エチル,2-メチル酪酸メチル)は嗅覚による閾値が小さく,スィート·フローラルな,リンゴ·パイナップル様の香調を呈する.以上から,みつ入り果の嗜好性の高さは糖類よりもメチル·エチルエステル類を中心とした香気成分が強く寄与したものと示唆された.また,これらの成分はみつ部分における低酸素·高炭酸条件下の代謝により集積したものと推定した.
技術論文
  • 原田 恭行, 大泉 徹
    2016 年 63 巻 3 号 p. 117-126
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
    冷風乾燥した塩干品の呈味成分の変化を明らかにするため,マアジを約20°C(冷風乾燥区)または約50°C(熱風乾燥区)で20時間乾燥させ,FAAと核酸関連物質の経時変化を比較した.その結果,熱風乾燥区ではIMPの急激な減少に伴いHxが増加するとともに,苦味を呈するFAAの増加が著しかった.一方,冷風乾燥区ではIMPの減少が小さく,苦味を呈するHxとFAAはあまり増加しなかった.このような呈味成分の差異は乾燥時間の経過とともに顕著となった.一方,両乾燥区における乾燥2時間(水分約68%)の半乾品を焙焼すると,冷風乾燥区では,甘味を呈するアミノ酸が増加する傾向にあったが,熱風乾燥区では,Hx含量が増加し,リジンとヒスチジンが顕著に減少した.さらに,両区を官能評価すると,冷風乾燥区は,甘味が有意に強く,苦味が弱い傾向にあり,総合評価で有意に好ましい結果となった.これらの結果は,塩干品の冷風乾燥の優位性を呈味の面から示唆するものである.
研究ノート
  • 亀谷 宏美, 蔦 瑞樹, 藤田 かおり, 等々力 節子, 杉山 純一
    2016 年 63 巻 3 号 p. 127-131
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
    ESRスペクトルの多変量解析により小麦粉灰分量の推定を行った.灰分の推定式作成にはPLS回帰分析を用い,ESRスペクトルから灰分を推定する検量線を作成した.
    (1) ESRスペクトル面積を説明変数,灰分量を目的変数としたPLS回帰分析による灰分の推定精度は決定係数0.479と低かった.
    (2) ESRスペクトル面積と小麦の品質指標を説明変数,灰分量を目的変数としたPLS回帰分析の結果,推定精度は決定係数0.683と大幅に向上した.
    以上の結果から,本研究の推定精度は実用的な利用には不十分であるが,灰分の簡易的な推定の可能性を示すことができた.
  • 吉田 充, 西塚 菜穂子, 村上 恵理, 八戸 真弓, 濱松 潮香
    2016 年 63 巻 3 号 p. 132-135
    発行日: 2016/03/15
    公開日: 2016/04/28
    ジャーナル フリー
    試料中の放射能分布の不均一性がゲルマニウム半導体検出器による放射性セシウム濃度(134Csと137Csの濃度の合算値)の測定値に及ぼす影響を,実際の食品試料を用いて調査した.放射性セシウムを含む玄米,玄ソバ,大豆試料をそれぞれ,空隙を模擬した放射性セシウムを含まないビーズとともに,2 Lマリネリ容器に充填した.測定容器中における空隙の偏在は,放射性セシウム濃度の測定値に大きな影響を与え,容器内に空隙なく放射性セシウムを含む試料を充填した場合や放射性セシウムを含まないビーズを均一に分散させた場合と比べて,容器下部にビーズが集中すると測定値は低くなる傾向が示された.一方,上部にビーズが集中すると測定値が高くなる傾向が示された.放射性セシウムを含まないビーズの存在位置が放射能測定値に及ぼす影響は,玄米,玄ソバと大豆において傾向は一致していた.
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