日本食品科学工学会誌
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52 巻, 12 号
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報文
  • 井原 啓一, 加治屋 千鶴, 嶋田 康伸, 浅野 祐三, 小久保 貞之
    2005 年 52 巻 12 号 p. 553-559
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    (1) ホイップ速度の違いによりホイップドクリームの物性に差が見られ, 低速ホイップ品 (回転数 : 120rpm, 140rpm) は保存時の貯蔵弾性率の低下が少なく, 高速ホイップ品 (回転数 : 180rpm, 220rpm) は貯蔵弾性率の低下が大きかった.
    (2) 低速ホイップ品は脂肪球凝集が生じる前に気泡の導入がほぼ終わり, 高速ホイップ品は気泡の導入途中に脂肪球凝集が生じていると考察された.
    (3) 低速ホイップ品は1日の冷蔵保存中においても顕著な気泡の巨大化は観察されなかったが, 高速ホイップ品は顕著な気泡の巨大化が見られた. 低速ホイップ品では連続相粘度が高く, 高速ホイップ品では低かったのが原因であると考えられる.
    (4) 気泡の導入と脂肪球凝集の生じるタイミングが以上の現象の原因である可能性が示唆された.
  • 山本 晋玄, 白板 孝朗, 中村 靖人, 山日 達道, 神山 かおる
    2005 年 52 巻 12 号 p. 560-565
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    高齢者に噛み切りやすいイカ加工食品を開発するために, 外套膜の体軸方向と体軸直交方向の2方向の試験片を引張試験と剪断試験により, スルメイカの破断特性を調べた. イカ肉は表皮第4層と内臓側皮組織, 2種類の筋繊維の層状構造により, 破断特性には, 高度に異方性, 部位差があることが, 引張試験及び剪断試験より明らかになった. また, 破断荷重やヤング率の温度及び変形速度依存性からは, 低温や高速の方が低い値を示すことがわかった.
  • 長砂 太蔵, 田川 彰男, 小川 幸春, 飯本 光雄
    2005 年 52 巻 12 号 p. 566-571
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    アズキおよびダイズを数段階の温度において浸漬し, 含水率の経時変化を測定した. また吸水中の体積変化を調べ, 以下の知見を得た.
    (1) アズキの吸水過程は初期吸水期間と減率吸水期間に二分割され, 初期吸水期間には拡散方程式の近似解から導いた式を, 減率吸水期間には拡散方程式の近似解である式, もしくはPageの式を用いることにより各浸漬温度における含水率予測が可能であることが示唆された.
    (2) ダイズの吸水過程は, アズキの減率吸水期間と同様に, 拡散方程式の近似解, もしくはPageの式を用いることにより各浸漬温度における含水率予測が可能であることが示唆された.
    (3) 各吸水期間におけるアズキおよびダイズの吸水速度定数と浸漬温度の関係は, Arrhenius型の式に良く従った.
    (4) アズキおよびダイズの比容積は, 含水率の増加にともない一次的に増加するが, 浸漬温度の高低にはほとんど影響を受けないことが明らかとなった. またその値は, 浸漬温度と含水率の関数として予測が可能である事が示された.
  • 宮口 右二, 坂本 太郎, 林 佑樹, 永山 精美
    2005 年 52 巻 12 号 p. 572-577
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    採卵廃鶏の有効利用を目指し, 豚水洗処理肉で調製した食肉製品の物性に及ぼす鶏筋漿タンパク質の効果について検討した. 廃鶏より採取したムネ肉およびモモ肉から筋漿区分を抽出し, 同区分を硫酸アンモニウム (硫安) で塩析処理し, 分画された筋漿タンパク質を豚水洗処理肉に添加し, 加熱処理後のモデルソーセージの物性を調べたところ, 筋漿タンパク質画分の添加は, 破断応力を増大させた. とくに, 75%飽和硫安上清 (f3) 画分を添加した場合には, 廃鶏の原料および部位に関係なく, 全筋漿タンパク質を添加した場合よりも, 破断応力が有意に高かった. SDS-PAGEおよび同デンシトメトリー解析により, ムネおよびモモ肉ともに, f3画分には, グリセルアルデヒド三リン酸デヒドロゲナーゼ (GAPDH) が共通成分として含まれていることが示された. ただし, f3画分のGAPDHの酵素活性並びに高速ゲルろ過の結果からは, GAPDHがソーセージの物性に対する直接的な関与は示されなかったが, 本結果より採卵廃鶏が食肉製品のゲル化剤の原料になりうる可能性が示された.
  • 森村 茂, 稲垣 秀一郎, 梅崎 宗規, 重松 亨, 木田 建次
    2005 年 52 巻 12 号 p. 578-583
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    大豆煮汁からの醸造酢製造では, 味噌麹 (米) と清酒酵母K77を用いてエタノール発酵を行った後, 酢酸菌A. aceti IFO3283を用いて酢酸発酵を行うことで, 香味の優れた製品を製造できることがわかった.
    次に, 大豆煮汁からの醸造酢製造を実用化するためにスケールアップの検討を行った結果, 発酵槽を用いた通気培養では発泡が問題となった. 発泡現象を解消するための検討を行った結果, 麹と酵母を用いたエタノール発酵を行うことで, 酢酸発酵時の発泡をかなり抑制することができた. 大豆に含まれる界面活性物質であるサポニンの分析を行ったところ, エタノール発酵の過程でサポニンが分解されていることがわかった.
    得られた醸造酢の生理活性についてin vitro評価を行った結果, 優れた抗ラジカル活性およびACE阻害活性を有することがわかった.
  • 山本 (前田) 万里, 永井 寛, 江間 かおり, 神田 えみ, 岡田 典久, 安江 正明
    2005 年 52 巻 12 号 p. 584-593
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    A double-blind clinical study was carried out on subjects with Japanese cedar pollinosis for the evaluation of the effects and safety of ‘Benifuuki’ green tea, which contains epigallocatechin-3-O-(3-O-methyl)-gallate (O-methylated catechin), and a combination of ‘Benifuuki’ green tea and ginger extract, with ‘Yabukita’ green tea as a placebo. First, the effect of the combination of ‘Benifuuki’ green tea and various vegetable extracts on cytokine production inhibition was investigated using mast cells ; the simultaneous use of ‘Benifuuki’ green tea and ginger extract was found to suppress cytokine (TNF-α or MIPI-α) production to a remarkable extent. Subjects were given 1.5 g of ‘Benifuuki’ green tea, ‘Benifuuki’ green tea containing 30 mg of ginger extract, or ‘Yabukita’ green tea with water twice every day for 13 weeks. As cedar pollen scattering increased, the severity of pollinosis symptoms among the groups was observed to increase in the following order : placebo group>’Benifuuki’ group>’Benifuuki’ and ginger group. Eleven weeks after the beginning of treatment, during the most severe cedar pollen scattering period, symptoms of runny nose and itchy eyes were significantly relieved among the ‘Benifuuki’ group compared with the placebo group (p<0.05). In the ‘Benifuuki’ and ginger group, runny nose, itchy eyes and nose symptom scores were significantly reduced at the eleventh week, and nasal congestion, sore throat and nose symptom medication scores were significantly reduced at the thirteenth week compared with the placebo group. Among all test groups, hematological examination, general biochemical examination, determination of total IgG, CMV antibody titer, and serum iron content, and interviews throughout the intake period found no changes related to clinical problems. These results suggest that intake of ‘Benifuuki’ green tea over one month is useful in reducing some of the symptoms of Japanese cedar pollinosis, and did not affect normal immune response in subjects with Japanese cedar-pollinosis. It was also found that the addition of ginger extract enhanced the effect of ‘Benifuuki’ green tea.
技術論文
  • 人見 英里, 三浦 裕美子, 三原 香奈, 大西 志麻, 原 直子, 中野 昌俊
    2005 年 52 巻 12 号 p. 594-598
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    ルイボスティー熱水抽出物の食品に対する抗酸化能を探るためにDPPHラジカル消去能, ラードに対する抗酸化能, 各種鉄化合物により鉄を強化したモデルクッキーにおける抗酸化能を検討した. ルイボスティー熱水抽出物は濃度依存的にDPPHラジカル消去能を示した. ラードにおいても, ルイボスティー熱水抽出物の添加量の増加に伴って酸化が抑制された. クッキーの保存試験では, コントロールクッキーに比べ, 塩化第一鉄, 酵素処理ヘム鉄, クエン酸第二鉄, クエン酸鉄アンモニウムを添加した場合に, 著しく脂質過酸化が促進されたが, さらにルイボスティー熱水抽出物を添加することにより, 酵素処理ヘム鉄以外で, 脂質過酸化を抑制することができた. 以上のことから, ルイボスティー熱水抽出物は, 高脂肪含有食品に対する抗酸化物質として利用可能であることが示唆された.
  • 劉 海傑, 中嶋 光敏, 西 泰治, 木村 俊範
    2005 年 52 巻 12 号 p. 599-604
    発行日: 2005年
    公開日: 2007/04/13
    ジャーナル フリー
    アクリルPMC基板に対して親水化処理とO/Wエマルションの作製を試みた. 高分子コーティング, スパッタと真空蒸着の3種類の親水化法を実施した. その結果, 高分子コーティング法の中で, エクセバールコーティングを施したPMCを用いた場合, 単分散のO/Wエマルションの作製が可能であった. また, スパッタ法により処理したPMCは膜応力による剥離が生じて, エマルションの調製に不適であった. さらに, SiO2真空蒸着法により処理したPMC基板を用いて単分散のO/Wエマルションの作製が可能であり, また, エクセバールコーティングと比べ, 超音波耐性に優れていることが示された.
研究ノート
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