日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
69 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
総説
  • 松宮 健太郎
    2022 年 69 巻 6 号 p. 259-264
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    Many liquid-type food products exist either partially or wholly as an emulsion and a foam. In such systems, mixed states at the beginning and prevention of subsequent time-dependent changes are usually significant for quality management. In this research, as an intermediate material between traditional emulsifier molecules and solid particles, fine soft particles, i.e. microgels obtained from milled rice, soybean protein isolate, and polysaccharides were examined. Studies on the emulsifying properties of gelatinized rice flour, the enhanced technological functionality of soybean protein isolate via microgelation on emulsification and foaming, and the impartation of emulsifying ability to surface-inactive polysaccharides were reviewed to present the usefulness of the microgels in food emulsions and foams. In addition, interfacial properties of soft and porous microgels were summarized to promote their future application in practical food products in emulsified and foamed states.

  • 相良 泰行, 粉川 美踏
    2022 年 69 巻 6 号 p. 265-275
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    Drying is a simultaneous heat and mass migration phenomenon in which water phase transition occurs based on energy transfer by conduction,convection, and radiation.

    It is essential to develop technologies that improve drying efficiency and shorten the processing time for creating branded products that elicit consumer confidence with thorough consideration for food safety. In this paper, basic knowledge has been provided on experimental drying technologies that are necessary for optimizing heat and mass transfer within the product and achieving the desired physical structure. We provide an introduction to vacuum freeze-drying technology in order to illustrate the effects of barometric pressure on the drying process.

報文
  • 中津 沙弥香, 飯田 悦左, 渡邊 弥生, 柴田 賢哉, 神山 かおる, 坂本 宏司
    2022 年 69 巻 6 号 p. 277-285
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    乳化油含浸処理が熱風乾燥ジャガイモの食感に及ぼす影響を明らかにするため, 人が食べた時の咬筋筋電位計測を実施した. 乱塊法を用いて個人差をブロック因子とし, 二元配置分散分析した結果, 摂食時間, 咀嚼回数, 総筋活動量, 一噛みあたりの平均筋活動量および一噛みあたりの平均筋活動時間に有意差が認められ, 乳化油含浸した方がしないものに比べて値が小さかった. 乳化油含浸処理は, 乾燥ジャガイモのサクサク感を増加させ, 咀嚼初期の構造破壊を容易にし, 最初の嚥下までの食塊形成に要する仕事量を減少させたことが示唆された. 乱塊法を用いることで, 加工処理による効果から個人差を分離して解析できることが示唆された.

技術論文
  • 西本 有紀, 中村 澄子, 出澤 侑也, 高津 地志, 藤田 明子, 大坪 研一
    2022 年 69 巻 6 号 p. 287-300
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    (1) 高温障害粒の割合が高いほど食味は低下する.

    (2) 食味官能評価と動的粘弾性との関係について, 貯蔵弾性率 (G') は硬さと正の相関関係があることを確認した.

    (3) 玄米のα-アミラーゼ活性において, 高温障害粒の割合が高いほど, α-アミラーゼ活性が高くなる傾向を確認した.

    (4) 玄米白濁部位とそれと同じ粒の整粒の部位のアミロペクチン側鎖鎖長分布を測定した結果, 顕著な違いは認められなかった.

    (5) RVAに関して, 食味の良い米 (整粒割合が高い米) は, 最高粘度が高く, ブレークダウンが大きいことを確認した.

    (6) ヨード呈色多波長走査分析に関して, 2021年度の試験結果では, 良食味指標のλmax/Aλmaxの値は, 高温障害粒の割合が高いほど, 低下傾向を示した.

  • 櫻井 直樹, 秋元 秀美
    2022 年 69 巻 6 号 p. 301-312
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    食品を噛んだ時の歯の振動を総合的に評価するために, 食品に差し込むプローブの振動を互いに直角に取り付けた2つの加速度センサで, 垂直方向と水平方向の振動にわけで検出した. それぞれのセンサから出力された電圧値は, 半オクターブ21帯域のフィルターに分けた. 食感値は帯域の周波数, プローブ挿入時間, プローブの質量を用いて, エネルギー食感値 (Energy Texture Index, ETI, J/s) として各帯域でそれぞれ求められた. リンゴの垂直及び水平振動のETIは, 全帯域を通じてキウイフルーツ, バナナよりも高かった. キュウリと白菜は, 水平振動で高い周波数帯域 (2 240~8 960 Hz) に共通のピークを示した. キュウリと白菜ではプローブ挿入方向を変えると異なる結果が得られた. 焼き菓子である, ビスケット, クッキー, クラッカーでは, 垂直振動では1 120~1 600 Hzに一つのピークが, 水平振動では4 480~8 960 Hzにピークが認められ, 3種焼き菓子のスペクトルはよく似ていた. ビスケットが高周波帯域 (6 400~51 200 Hz) で高いETIを示し, クッキーは低い周波数帯域 (0~280 Hz) で高いETIを示した. スナック菓子 (米菓, トルティーヤチップス, ポテトチップス) の中では, 米菓が垂直・水平振動とも他よりも高いETIを示した. 焼き菓子とスナック菓子は, それぞれ特有の垂直及び水平振動スペクトルを示した. 本測定法は, 食品を前歯で噛むときに発生する振動を楔形プローブの振動としてとらえ, 垂直振動は骨伝導音および歯の根元の神経が感じ取る感覚, 水平振動は空気伝導音として外耳から耳に到達する音の主要因として食感を多面的に評価できる可能性が示唆された.

研究ノート
  • 森田 朗, 原 崇, 城斗 志夫
    2022 年 69 巻 6 号 p. 313-319
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    常温貯蔵がイヌリンの分解に及ぼす影響を明らかにするため, キクイモを90日間, 20℃と5℃で貯蔵し, 貯蔵中のイヌリン含量と分子量の変化を調べた. その結果, 90日目の減少率は, 20℃で37.4%, 5℃で31.1%と20℃の方がやや大きくなった. また, 20℃で60~90日貯蔵することにより鎖長3~4単位のフラクトオリゴ糖が顕著に増加することを見出した. ゲル濾過クロマトグラフィーによりイヌリンを低分子と高分子に分け, Bifidobacterium属菌に対する増殖効果を調べたところ, 低分子のものが高い効果を示した. また, 低分子のフラクトオリゴ糖を豊富に含む20℃貯蔵のキクイモ抽出物は, 収穫直後のものよりBifidobacterium属菌の増殖効果が高かった. 以上, キクイモの貯蔵温度を変えることで, プレバイオティクス効果を向上させ, キクイモの付加価値を高めることができることを示した.

  • 脇 尚子, 鈴木 重德, 海老原 淑子, 菅沼 大行
    2022 年 69 巻 6 号 p. 321-327
    発行日: 2022/06/15
    公開日: 2022/06/15
    ジャーナル フリー

    様々な食シーンにおいて, しばしばトマトと組み合わせて摂取される食品としてチーズがある. そこで, チーズと組み合わせることによりトマトからのリコピン吸収率が向上するか否かを, 非盲検クロスオーバー比較試験にて検証した. 研究対象者に, トマトピューレーのみ (リコピン24mg) , またはトマトピューレーとチーズとを組み合わせたもの (リコピン 24mg, 脂質 19.5g) を単回摂取させ, 摂取0, 2, 4, 6, 9時間後の血清中及び血清におけるtriglyceride-rich lipoprotein fraction (TRL画分) 中のリコピン濃度を測定した. その結果, トマトピューレーのみを摂取した場合と比較して, トマトピューレーとチーズとを組み合わせて摂取した場合の方が, 血清中及び血清TRL画分中のリコピン濃度が有意に高値を示した. したがって, チーズと組み合わせることによりトマトからのリコピン吸収率が向上することが明らかとなった.

feedback
Top