日本食品科学工学会誌
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70 巻, 10 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
総説
  • 中川 究也, 中林 磨耶, Pramote Khuwijitjaru, Busarakorn Mahayothee, 西村 晃一, 安信 淑 ...
    原稿種別: 総説
    2023 年 70 巻 10 号 p. 457-474
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/10/16
    [早期公開] 公開日: 2023/05/24
    ジャーナル 認証あり

    Freeze-drying (lyophilization) is a drying method characterized by using sublimation as one of the dehydration principles. This paper presents an atmospheric freeze-drying technique, which is a freeze-drying process that does not use a vacuum condition. The characteristics of foods dried by atmospheric freeze-drying are introduced in terms of various properties, such as retention of vitamins, anti-oxidative properties, and lipid oxidation. It is expected to delay lipid oxidation during storage and retain food functional components, in addition to ensuring superior taste appeal, by applying appropriate processing conditions. By clarifying the significance of this process, we hope to suggest the potential of atmospheric freeze-drying as a food manufacturing technology for labor-saving production of high-quality products.

報文
  • 比嘉 梨乃, 加藤 莉子, 太田 穂波, 江頭 祐嘉合, 諏訪 聖二, 今井 啓太, 平井 静
    原稿種別: 報文
    2023 年 70 巻 10 号 p. 475-484
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/10/16
    [早期公開] 公開日: 2023/06/02
    ジャーナル 認証あり

    内臓脂肪型肥満者の脂肪組織では, 酸化ストレスが亢進し代謝異常が引き起こされることで, メタボリックシンドロームの発症および進行に繋がる. ラッカセイ種皮は, 通常, 加工工程において, 大量に廃棄されているが, 抗酸化作用を有するポリフェノールを高含有していることが知られている. 本研究では, ラッカセイ種皮含有黒酢飲料が, 高脂肪食誘導性肥満マウスの糖・脂質代謝異常に及ぼす影響を検討した. 6週齢のC57BL/6J雄マウスに60kcal% fat高脂肪食を摂取させるとともに, 40倍 (低濃度:LD) または20倍 (高濃度:HD) に希釈したラッカセイ種皮含有黒酢飲料を20週間自由飲水させた. その結果, 終体重は対照群と比較してLDおよびHD両群で有意に減少した. またHD群ではインスリン感受性指標であるHOMA-IRの有意な低下と, インスリン抵抗性指標であるQUICKIの有意な上昇が認められた. 以上の結果より, ラッカセイ種皮抽出物含有黒酢飲料による肥満および糖代謝異常の改善が示唆された.

  • 津留 真里絵, 野口 明日香, 渡辺 睦行
    原稿種別: 報文
    2023 年 70 巻 10 号 p. 485-494
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/10/16
    [早期公開] 公開日: 2023/07/13
    ジャーナル 認証あり

    近年, n-3系多価不飽和脂肪酸 (n-3 PUFA) の摂取不足が健康上の問題となっている. n-3 PUFAには, 魚由来のEPAやDHAと植物由来のα-リノレン酸が存在するが, 日本人の魚の摂取量は減少傾向にある. また, 欧米諸国には魚を摂取する習慣が少ない国も多いことから, α-リノレン酸高含有植物油の活用が期待されている. 植物油の一般的な摂取方法として, ドレッシングなどの生食による摂取と炒め調理などの加熱による摂取が挙げられるが, α-リノレン酸は酸化安定性が低いため加熱調理には不向きとされている. 一方で, α-リノレン酸高含有植物油の1つであるアマニ油を炒め調理に用いた研究によると, 短時間であれば喫食する際の油の劣化度や嗜好性に問題はないことが報告されているため, α-リノレン酸高含有植物油を炒め調理に使用できる可能性がある. しかし現状では, α-リノレン酸高含有植物油の種類や炒める食材の違いによる油の劣化への影響の報告はなされていない. そこで本研究では, α-リノレン酸高含有植物油(アマニ油, エゴマ油, グリーンナッツオイル)を用いて野菜(もやし, にんじん, ピーマン)を炒め調理した時の油の劣化度 (過酸化物価) を測定し, α-リノレン酸高含有植物油を炒め調理に用いる際の油および食材の適切な組み合わせを検討した. その結果, 190 ℃で3分の炒め調理であればα-リノレン酸高含有植物油を用いることが可能であると示された. さらに, 炒める食材量に対して25 %以上の短冊切りのにんじんを用いると酸化劣化が抑制されることが明らかとなった. 以上より, α-リノレン酸高含有植物油を炒め調理に用いることによってn-3 PUFAの摂取量を安全かつ簡便に増加させ, n-3 PUFAの摂取不足の改善に寄与することが期待される.

  • 木村 優輝, 木宮 隆, 吉田 周平, 伊藤 瑞姫, 保科 由智恵, 西川 正純
    原稿種別: 報文
    2023 年 70 巻 10 号 p. 495-503
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/10/16
    [早期公開] 公開日: 2023/06/14
    ジャーナル 認証あり

    食用ウニ類は外観から生殖巣重量や生殖巣指数を予測することが困難である. 本研究では, 青果物の内部品質の非破壊評価に広く用いられている透過方式の近赤外分光装置を用いて, キタムラサキウニ (Strongylocentrotus nudus) の生殖巣重量および生殖巣指数の評価手法の開発を試みた.

    試料は, 2021年および2022年に宮城県石巻市または女川町で水揚げされたキタムラサキウニ216個体を用いた. 得られた近赤外吸収スペクトルを主成分分析で解析したところ, 2次微分処理を行ったスペクトルの第1主成分の寄与率は90 %であり, そのローディングベクトルでは, 主に脂質の吸収帯である930 nm付近に負のピークが観察された. また, Partial Least Squares回帰分析を行った結果, 2次微分スペクトルを用いた生殖巣重量の検量モデルの評価結果は, 因子数4, 相関係数0.78, 標準誤差4.4 gであった. 同様に生殖巣指数では, 因子数4, 相関係数0.76, 標準誤差4.6 g/100 gであった. これらの結果から, 生殖巣重量および生殖巣指数を非破壊・非接触的に評価できることが示唆され, これは生殖巣の脂質が検知されることによるものと考えられた.

    本手法を用いた非破壊評価システムの構築により, 天然については身入りの良好な個体を出荷し, 身入りの悪い個体は海に放流あるいは養殖に向ける等, 新たな判断基準として活用することができる.

技術論文
  • 江木 伸子, 廣瀬 理恵子, 平尾 和子, 野田 誠司, 齋尾 恭子
    原稿種別: 技術論文
    2023 年 70 巻 10 号 p. 505-511
    発行日: 2023/10/15
    公開日: 2023/10/16
    [早期公開] 公開日: 2023/06/05
    ジャーナル 認証あり

    大豆分離タンパク質 (SPI) の部分的酵素加水分解が乳化安定性に影響することは既に報告されている. 著者らは市販の部分的加水分解された大豆タンパク質素材を用いて, 乳化安定性の高いエマルションの調製について報告した. 本報の目的は, 数種の熱帯果実の果汁をSPIに直接反応させることにより, SPIから保形性および安定性の高いエマルションを調製することである. その結果, パイナップル, キウイ, イチジク, メロン, パパイア (未熟) の果汁をSPIと反応させることにより, 擬塑性流動を示し,保形性のある安定なエマルションを, パパイン酵素と同様に調製できることを明らかにした. 本研究の範囲において, 果実の種類, 産地, 熟度, 果汁とSPIの反応条件により, エマルションの外観, SDS–PAGEによるタンパク質分解物のパターン, 流動曲線による物性等が変化した. 電気泳動パターンでは11Sの酸性サブユニットの消失とエマルションの安定性との関係が示唆された.

研究ノート
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