日本食品科学工学会誌
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62 巻, 1 号
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総説
  • 八戸 真弓, 濱松 潮香, 川本 伸一
    2015 年 62 巻 1 号 p. 1-26
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    The Tokyo Electric Power Company (TEPCO) Fukushima Daiichi nuclear power plant accident caused by the Great East Japan Earthquake on March 11, 2011, resulted in the release of large amounts of radioactive materials (mainly radioactive iodine 131I, and radioactive cesium 134Cs and 137Cs) into the environment that subsequently contaminated agricultural products. Currently, agricultural contamination by radioactive iodine, with a short half-life of 8d, is no longer an issue, since three-and-a-half years have passed since the accident. However, the radioactive cesium isotopes 134Cs and 137Cs have long half-lives (2 years and 30 years), and have maintained 30% and 92% of their initial radioactivity, respectively. Therefore, long-term monitoring of these radionuclides is required with respect to food contamination. Consumers and food manufacturers alike are greatly concerned with the behavior of radioactive materials during the food processing and cooking of raw agricultural materials. Under a wide range of countermeasures to mitigate the consequences of the nuclear accident for agriculture in the affected regions of Japan, the contamination of agricultural products with radioactive cesium has been greatly reduced in the past three-and-a-half years. Furthermore, numerous studies have focused on examining the behavior of radioactive cesium during the processing and cooking of domestic agricultural, livestock, and fishery products. In this paper, we provide an overview of the inspection results of FY2011 to FY2013 on radioactive cesium levels in agricultural, livestock, and fishery products, as well as research results collected to date on radioactive cesium behavior in the processing and cooking of these products. An English version of all figures and tables in this paper is presented in the Appendix.
報文
  • 戸井田 英子, 田島 眞
    2015 年 62 巻 1 号 p. 27-33
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    国産クルミ(シナノクルミ,J. regia LINN.)の一般成分値を示した.
    DPPHラジカル消去法による抗酸化能の測定結果は国産クルミ186.2μmol TE/g-dry weight,輸入クルミ144.8μmol TE/g-dry weightであり,国産クルミは輸入クルミより抗酸化能がやや高いことを示した.輸入むきクルミの抗酸化活性は102.7μmol TE/g-dry weightであった.輸入むきクルミは殻付きクルミより抗酸化能が低いことを示した.
    総ポリフェノール含量は国産クルミ2202.3mg GAE/100g-dry weight,輸入クルミ1855.0mg GAE/100g-dry weightであり,国産クルミは輸入クルミよりがやや高いことを示した.輸入むきクルミは1216.9mg GAE/100g-dry weightは殻付きクルミよりポリフェノール含量が有意に低いことを示した.
    各クルミの総ポリフェノール含量とラジカル消去能とは非常に高い正の相関がみられ,抗酸化成分はポリフェノールであることを示した.
    クルミのポリフェノール組成はLC/MS,HPLC分析の結果,7種類の主要なエラジタンニンを同定した.国産クルミ445.7mg EAE/100g-dry weight,輸入クルミ473.5mg E-AE/100g-dry weightであり,輸入クルミが国産クルミを僅かに上回った.輸入むきクルミは281.6mg EAE /100g-d-ry weightであった.各クルミの主要なエラジタンニン含量合計値と抗酸化能との間には正の相関がみられ,抗酸化成分はエラジタンニン類であることを示した.また,未同定ポリフェノール含量と抗酸化能との相関も非常に高く,抗酸化能にはその他のポリフェノールも大きく寄与することを示した.
    ペルシャクルミ系統の国産クルミおよび輸入クルミについて,ポリフェノール組成には違いがみられ,この違いが抗酸化能に反映している.さらに,日本と米国では栽培環境が異なること,他にも育種,乾燥,保存方法が関係すると考えられる.
  • 辻井 良政, 高野 克己
    2015 年 62 巻 1 号 p. 34-40
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    米胚乳酵素活性は,品種,貯蔵および生産地域等により活性量が変化すると考えられる.我々は,米胚乳酵素活性量の様相と米の品種などとの関係を検討した.酵素活性の測定は,αおよびβ-amylase,α-glucosidase,β-glucanase,β-galactosidase,α-mannosidase,β-xylanase活性量を敏速に測定できる合成基質を用いて,高感度に定量した.得られた活性量を変数としてケモメトリックス解析を行った.
    その結果,米胚乳酵素活性はコシヒカリ近縁種間で差異があった.αおよびβ-amylase,β-galactosidase活性量の差異に明確な傾向があった.これらの米胚乳酵素活性を変数として,統計解析ソフトPirouette (informetorix社)を用いて主成分分析を行った.その結果,各品種ごとに分布し,酵素活性量の様相が異なっていることがわかった.はえぬきは,コシヒカリに近い位置に近接して分布していた.しかし,きらら397は,コシヒカリから最も離れた位置に分布していた.品種の特性を各糖質関連酵素活性量の様相で比較することができた.
技術論文
  • 林 宣之, 氏原 ともみ, 岩崎 邦彦
    2015 年 62 巻 1 号 p. 41-49
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    本研究では,消費者が望んでいる日本茶の商品情報表示について焦点を当てた.全都道府県の一般消費者を対象にし,インターネット上でアンケート調査を実施したところ,緑茶の茶葉を購入する際に最も重要と考えるものとして,性別と年齢によっては価格という回答が最も高い割合を占める場合も見られたが,全体では品質との回答が最も多かった.品質に関する商品表示への期待は高く,味や香り等の感覚関連情報に対する要望が強いことが明らかになった.ペットボトル飲料の場合においても,味や香りの表示への期待は同様に高いが,加えて生産地表示に対する要望が増加した.ほうじ茶の場合も,緑茶と類似した傾向が見られたが,購入の際に価格を重視する割合が増加した.茶葉を購入する際の品質情報への関心やその表示に対する期待は,専門店,百貨店,通信販売を利用する場合において特に高いため,感覚関連情報の表示はそのような消費者に対して有効であると考えられた.茶葉の購入場所として最も多くの消費者が利用するスーパーマーケットは,感覚関連の品質表示を適用するために最も効果的な市場のひとつであると思われるが,その利用者は,専門店,百貨店,通信販売の利用者に比べ,茶や品質への関心が低下する傾向があった.したがって,スーパーマーケットでの販売の際に品質表示の効果を得るためには,日本茶の魅力を伝え,関心を呼び起こす取り組みを併せて行う必要があろう.また,表示方法の分かり易さは,各々の消費者が重要と考える要素によって異なるため,単一の方法によって全ての人を満足させることは難しいが,ターゲットとなる消費者層が限定できる場合には,その群の多数派に合わせることによって,表示の効果を一層高めることが可能と考えられた.
    これまでにも緑茶に関する消費者調査は存在したが,商品表示について消費者の意識を調査したのは本研究が最初である10) .日本茶の商品購入に際して消費者が知りたい情報や利用する購入先によって消費者の茶に対する意識が異なっているという今回明らかになった事実は,商品情報を効果的に提供する方法を考えるときに重要な指針となるに違いない.
研究ノート
  • 遠藤 千絵, 石黒 浩二, 瀧川 重信, 野田 高弘, 波佐 康弘
    2015 年 62 巻 1 号 p. 50-55
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    生食用ジャガイモ品種の低温貯蔵による糖増加特性を解析した.品種によって糖の増加程度が異なること,特に「インカのめざめ」「インカのひとみ」は長期低温貯蔵で糖が顕著に増加することが明らかとなった.増加した糖組成の解析から「インカのめざめ」は「ショ糖増加型」,「キタアカリ」は「還元糖増加型」,「ノーザンルビー」は両タイプの中間的な特性を持つ品種であることがわかった.「インカのめざめ」においては,二地点の圃場で収穫された塊茎でも同一カ所の低温貯蔵で1ヶ月以降同程度の糖増加が見込めること,低温貯蔵出庫後,室温におくと1週間程度で増加した糖の40%弱が,1ヶ月後までには50∼70%強が消失すること,1週間後までに室温から低温に戻せばその後3週間程度で出庫時の80%程度まで糖量を回復できることが明らかとなった.
  • 八戸 真弓, 内藤 成弘, 明石 肇, 等々力 節子, 松倉 潮, 川本 伸一, 濱松 潮香
    2015 年 62 巻 1 号 p. 56-62
    発行日: 2015/01/15
    公開日: 2015/02/28
    ジャーナル フリー
    乾麺の製麺,茹で調理における放射性セシウムの濃度,加工係数Pf,および残存割合Frを調べ,乾燥処理が放射性セシウムの動態に及ぼす影響を評価した.製麺加工では乾燥処理により水分が蒸発するため,放射性セシウム濃度の低下は認められず,加工係数Pfは太麺(1.8mm×3mm) 0.935,細麺(1.1mm,丸麺)0.977となった.一方,適正な茹で調理により,太麺·細麺ともに放射性セシウム濃度は茹でる前の1/10以下になり,麺に含まれる放射性セシウムの80%以上が茹で麺から除去されることが示された.今回の乾麺の茹で調理における放射性セシウムの動態は,我々がすでに報告している生麺の茹で調理の動態と同程度であったことから,製麺加工時の乾燥処理は,茹で調理における放射性セシウムの動態に影響を及ぼさないことが明らかとなった.
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