コエンザイムQ
10 (以下CoQ
10)は微量で体内の代謝に重要な働きをしている成分であり,この10は下付きが正しい記載である.細胞内エネルギー産生に関わる電子伝達系の補酵素作用を示すキノンの意味から命名された.体内でCoQ
10はメバロン酸とp-ヒドロキシ安息香酸から生合成されるので,ビタミンでは無く,ビタミン様物質の範疇に属する.CoQ
10にはユビキノン-10の別称もあり,自然界に広く存在するユビキタスなキノンの意味から命名されたが,ユビキタスに存在する理由は抗酸化作用と考えられている.
末尾の10或いはCoQ
10の下付きの10は,側鎖イソプレン単位の繰り返し個数を示し,自然界には2~12が存在しているが,人間は10を利用している.
世界各国で研究されているが,初めて工業生産を行ったのは日本であり,日本では1974年から専ら医薬品として使用されて来た.日本から輸出したCoQ
10は海外で食品として流通していた国もあったためか,2001年に至り日本でも医薬品的な効能効果を標榜しない限りにおいて食品としての使用も認められた.この際に,成分として認められたので製法は問わないとされ,また,食品としての販売実績があるものについて自主規格の設定が指導され,国内各社はこの指導に従った.
体内のCoQ
10は,生合成される量と食品から摂取する量の和と考えられている.各臓器でのCoQ
10は加齢と共に減少する事が知られており,心臓・腎臓等では基礎代謝エネルギーの減り方より激しい.
ユビキノンの名称の通り,植物や動物の各組織にも広く分布しており,ほとんどの食品に含まれているので,人間は毎日の食事からCoQ
10を摂取している.通常の食事から摂取するCoQ
10量はデンマーク人3~5mg/日,日本人8~9mg/日と云われるが,逆に,これ以上に大量に摂取しようとしても,余り適当な食品は無く,サプリメント等で摂取する方法が良いと思われる.CoQ
10は,極めて脂溶性が高く,水には全く溶解せず,エタノールにも極めて溶け難い為に,通常は食事と一緒に摂取しないとその吸収性は良くない.例えば,サプリメント形態で90mgを摂取させた場合に吸収率は3%との報告があり,また,豚の心臓(CoQ
10換算30mg相当),或いはサプリメント形態CoQ
10 30mgを摂取させた場合の血中濃度上昇は同等との報告もある.更に,CoQ
10を夕食時に2粒をまとめて飲むよりも,1粒ずつ朝食・夕食時に分けて飲む方が吸収は良いとの報告もある.
CoQ
10は脂溶性の為に,食品に添加する場合に添加出来る食品が限定されていたが,最近,CoQ
10を水溶化したものが市販され,種々の食品に添加する事が可能となった.また,水に溶かして飲めるので,サプリメント形態が飲み難い人に好評である.特に,ダイエットの必要のある人や高齢者等が脂肪分の少ない食事を摂取している場合には,空腹時でも吸収性の良い水溶化CoQ
10が好ましい.今後は水溶化CoQ
10を添加した食品の需要が高まると想定される.ただし,CoQ
10を食品等と混合した場合に,混合する成分によってはCoQ
10が分解する場合もあるので,安定性も確認してから実用化する必要がある.
CoQ
10は生命にとって必須の成分で,マウスのCoQ
10生合成遺伝子ノックアウト体は致死である.CoQ
10不足は種々の疾患の原因と成り得ると云われ,CoQ
10不足に由来する疾患には,CoQ
10投与が効果を示す可能性が在るが,その詳細は以下の参考文献等を参照して欲しい.
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