日本食品科学工学会誌
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64 巻, 9 号
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報文
  • 近藤 知巳, 上橋 朋佳, 渡辺 朋子, 河野 朝美, 黒木 勝久, 福井 敬一, 水光 正仁, 榊原 陽一
    2017 年 64 巻 9 号 p. 457-463
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー

    近年,食品成分による抗酸化に関する研究は盛んに行われており,抗酸化能を評価する手法についても多くの手法が開発されている.化学反応を用いた評価手法は,簡便な操作で検討できることや特殊な機器を必要としないことなどのメリットがある一方で必ずしも,実際の生体内における抗酸化活性と同等の評価になりえないなどのデメリットがあると言われている.そこで本研究では,比較的簡便に抗酸化能を評価できる化学的手法とより生体条件に近いと考えられる細胞応答を基盤としたルシフェラーゼレポーターアッセイ系による抗酸化ストレス作用を抗酸化能の評価系として用い,食品成分の抗複合的な抗酸化活性の評価の可能性について検討を行った.

    検討の結果,抗酸化活性の高いポリフェノール類であっても,評価法の選択により抗酸化活性に差が生じることや化学的な評価法とレポーターアッセイのような細胞応答を基盤とした評価法を組み合わせることで,複合的な抗酸化活性の知見を得ることが出来る可能性が示された.今後,食品の抗酸化活性の評価は単に抗酸化活性を有する化合物の有無だけでなく,生体内での抗酸化酵素誘導活性を含む評価をすることで,多角的な抗酸化活性を評価出来る可能性があるのではないかと考えられる.

技術論文
  • 沖 智之, 古川(佐藤) 麻紀, 渡辺 純, 竹林 純, 大潟 直樹
    2017 年 64 巻 9 号 p. 464-470
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー

    ゴマ「まるひめ」およびナタネ「ななはるか」の圧搾油の抗酸化能をL-ORAC法およびH-ORAC法で評価するために,油脂類の高速溶媒抽出装置を用いた抽出法およびL-ORAC法に改変を加えた.抽出方法については添加回収率が許容範囲内であること,L-ORAC法についてはトコフェロール類で測定値への影響が小さいことを確認した.ゴマ「まるひめ」の圧搾油ではL-ORACおよびH-ORACの平均値は,それぞれ2926,130μmol-TE/100gであった.ナタネ「ななはるか」の圧搾油では,L-ORACおよびH-ORACの平均値は,それぞれ552,87μmol-TE/100gであり,いずれの圧搾油でもL-ORACがH-ORACより高かった.L-ORACへのトコフェロール類の寄与率は「まるひめ」圧搾油では7〜22%であり,「ななはるか」圧搾油では24〜55%であることがわかった.本試験で供試した圧搾油ではL-ORACへのトコフェロール類以外の抗酸化成分の関与が大きいことが示された.

研究ノート
  • 折笠 貴寛, 遠藤 隆平, 加藤 一幾, 藤尾 拓也, 吉田 泰, 川村 浩美, 小出 章二
    2017 年 64 巻 9 号 p. 471-475
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー

    VMWは,食味や消費エネルギーの面ではMWよりも劣るものの,高い成分残存率を示した.一方で,MWは,食味の良いトマトピューレの製造と消費エネルギーの削減が期待されることから,トマトピューレの濃縮法の新技術となりうると考えられた.実際の現場では,濃縮工程後に殺菌処理などの2次加工処理が行われる.植村ら27) は,交流高電界処理は従来の加熱処理よりも短い加熱時間で殺菌効果を示し,かつ熱に弱い食品材料中の香気成分や栄養成分の多くを保持することが可能であると報告している.このような方法とVMW処理を組み合わせることにより,高機能性を有するトマトピューレの製造が期待される.今後は,2次加工処理も含めた濃縮工程に伴う機能性成分の変化について,反応速度論的解析28) 29) などの手法により明らかにすることが望まれる.

  • 中澤 洋三, 坂 尚憲, 山﨑 雅夫, 佐藤 広顕
    2017 年 64 巻 9 号 p. 476-482
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー

    エミュー肉は,アメリカやオーストラリアにおいて,健康的な食材として流通しているが,その加工特性は不明な点が残されている.本研究は,エミュー肉を使ったフランクフルトソーセージ製造のための化学的および加工特性を明らかにすることを目的とした.豚もも肉と比較し,エミューもも肉は,高タンパク質であるが,コレステロールを含む脂質の量が顕著に低かった.また,エミューもも肉は豚もも肉よりも6倍多くの鉄を含んでいた.エミューのひき肉に塩を加えたところ,塩溶性タンパク質の溶出が低かったが,得られた加熱ゲルは高いゲル強度を示した.発色剤によって発色されたエミュー肉糊の色は,豚肉のそれと比較し,加熱に対し安定性を示した.これらの結果を基に,最適化した方法で調製したフランクフルトソーセージは,良好な物性と色調だけでなく,高タンパク,高鉄分,低脂質,低塩分および低カロリーを示す製品であった.

解説
  • 北條 健一, 杉山 純一
    2017 年 64 巻 9 号 p. 483-489
    発行日: 2017/09/15
    公開日: 2017/09/22
    ジャーナル フリー

    Rice gel is an intermediate material obtained by high-speed shearing of high amylose gelatinized rice. Rice gel exhibits a high affinity with oil, and thus it acts as a physical property improver, a thickener, and an emulsifier when added to oil and sheared at high speed. The emulsified rice gel suppresses not only changes in E* (hardness) but also changes in tan δ (gel texture) during storage as compared to rice gel without added oil. For this reason, the emulsified rice gel is an effective option when distributed and used as an intermediate material in various industries. Emulsified rice gel can be expected to be used in the development of various products such as meat products, iced confections, dressings, breads and fillings.

技術用語解説
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