日本食品科学工学会誌
Online ISSN : 1881-6681
Print ISSN : 1341-027X
ISSN-L : 1341-027X
42 巻, 11 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 佐藤 恵美子, 三木 英三, 合谷 祥一, 山野 善正
    1995 年 42 巻 11 号 p. 871-877
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    胡麻豆腐の物性に対する胡麻の添加量の影響について,前報2)の「煮つめ法」の結果から,最も構造的に均一な調製条件である250rpmで25分間加熱して調製した胡麻豆腐のクリープ測定,離水率および走査型電子顕微鏡観察により検討し,次のような結果を得た.
    (1) 胡麻の量20-80gに水450gを加えてミキサーにかけ,50メッシュのフルイを通して得られた胡麻乳(450ml)に,葛澱粉40gを添加して加熱攪拌した葛澱粉ゲルと胡麻豆腐のクリープ測定の結果,フック体弾性率(E0),フォークト体弾性率(E1),ニュートン体粘性率(ηN),フォークト体粘性率(η1)の4要素モデルとして近似的に表すことができた.また,胡麻の添加量の増加にともなって,弾性率(E0, E1)は高くなり,粘性率(ηN1)は低くなり,遅延時間も小さくなった.
    (2) 走査型電子顕微鏡観察により,葛澱粉ゲルの写真では太く均一な樹枝状の構造が観察されたが,空隙が多いため,ゲルそのものの保形性はよくない.胡麻の添加量が80gの場合は胡麻豆腐の蜂の巣状構造は胡麻乳の固形物のために空隙が小さくなり,繊維状の微細構造が観察された.
    (3) 葛澱粉ゲルには3%の離水が認められたが,胡麻20gでは1.2%程度であり,胡麻60g, 80gではほとんど認められなかった.以上の結果から,胡麻の成分が葛澱粉ゲルの補強及び安定化に影響を及ぼしていると考えられる.
  • 納豆に関する研究(第5報)
    菅野 彰重, 高松 晴樹
    1995 年 42 巻 11 号 p. 878-886
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    納豆の粘質物の構成成分であるγ-ポリグルタミン酸(γ-PGA)の定量のための,簡単で迅速な吸光光度分析法について報告した.本法はγ-PGAとセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CET)との複合体形成を基本としたものである.この複合体を400nmの吸光度を測定することにより,γ-PGAを定量することが可能であった.本法の直線関係はγ-PGAとして0-54.85μg/6ml反応液において得られた.グルタミン酸,グルタミルグルタミン酸,レバン,ペクチンおよび大豆蒸煮液から調製した80%エタノール沈澱物質は,CETと複合体を形成しなかった.
    γ-PGAを納豆菌のファージ誘導性γ-グルタミルデポリメラーゼにて分解したところ,分子量の低下に伴って反応液の粘性は低下したが本法の数値は大きく変化せず,本法の分析結果はγ-PGAの分子量に影響されにくかった.
    納豆製造工程において,γ-PGAは発酵後10時間から検出され,以後増加した.市販納豆34点中のγ-PGA含量の平均値と標準偏差は,100gあたり328±120.99mgであった.
  • 田村 啓敏, 中本 英喜, 楊 栄華, 杉沢 博
    1995 年 42 巻 11 号 p. 887-891
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    アナアオサの精油の分離法を連続蒸留抽出法,減圧水蒸気蒸留法により検討したところ,後者の方が適していた,この方法で得られた精油についてGC及びGC/MS分析により精油成分として60成分を同定した.
    さらに,得られた精油をシリカゲルカラムにて極性順に6画分に分画し,全精油及びアナアオサ様の香気を持つFr. 1, Fr. 3についてGC-Sniffingにより官能評価を行った.その結果,不飽和アルデヒド類及びジメチルスルフィド等の13成分がアナアオサを連想させる匂いを持つことがわかった.また,精油中の各オーダ-ユニットの算出によ,GC-Snffiingで選ばれた成分以外に新たに4成分がアナアオサの匂いに寄与していると考えられた.選ばれた成分のうち入手可能な15成分から調合した溶液は海藻様の匂いを示していた.
  • 川上 晃, 茅原 紘, 氏原 暉男
    1995 年 42 巻 11 号 p. 892-898
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    ダッタンそば粉中の苦味成分の特性および除去方法を検討した.その結果,ダッタンそばを苦味のない食材として利用するためには(1)1番粉を利用する.(2)エタノール水溶液,アセトン水溶液(特に75%(v/v)エタノール水溶液)による洗浄を行う.(3)ダッタンそば粉を70℃以上に加熱処理する.以上の方法が有効であることがわかった.ここで,ルチンの摂取を目的としてダッタンそば粉を摂取する場合,ルチン含有量の少ない1番粉は適さないと考えられる.そのためダッタンそば粉に(2)・(3)の処理を加えるのが苦味除去に有効であると思われた.明らかにした苦味成分のうち,ケルセチンはルチンの加水分解によって生じる.この加水分解反応を防ぐのに有効とされる70℃以上の加熱処理は,苦味物質ケルセチンやF3の産生も防ぐため,苦味除去の観点からも有用である.75%(v/v)エタノール水溶液による洗浄処理ではルチンは損なわれず,ケルセチンとタンニンのみを除去可能である.そばタンニンは,タンパク質の消化吸収を妨げる原因となると考えられており,その除去はそばの消化吸収性の促進につながると考えられる.最後に,ダッタンそばの苦味成分としてケルセチンおよびF3の存在を明らかにした.しかしながら,F3の構造や別の苦味画分F4の諸物性について,今後の研究の進展を期待している.
  • 児島 雅博, 外川 達秋, 村瀬 誠, 戸谷 精一, 杉本 勝之
    1995 年 42 巻 11 号 p. 899-906
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    麺の組織構造と物性に及ぼす加水量と食塩量の影響について検討した.
    (1) 加水量が35%以下の場合,食塩量の増加によって生地混合中のトルクの振幅は小さくなった.加水量が39%及び43%の場合,食塩無添加では,振幅が小さくかつ最大トルクを示した後のトルクの安定性は低かったが,食塩量の増加によってトルクの振幅は大きくなり,安定性も増加した.
    (2) 乾麺のグルテン組織の構造については,加水量の増加によって太い繊維性の網目構造から球面状の微細な網目構造に変化した.一方,食塩の増加はこれとは逆の変化をもたらした.
    (3) ゆで麺の引張り強度については,加水量と食塩量の組み合わせで様々な値を示した.これらの物性変化を重回帰分析した結果,有意な重回帰式が得られ,任意の加水量あるいは食塩量からゆで麺の引張り強度の予測が可能となった.
    (4) トルクの振幅が大きく,最大トルクを示した後のトルクの安定性の高い生地から調製した乾麺のグルテンの組織構造は繊維性と連続性が高く,ゆで麺にした場合の引張り強度も高く,物性的に優れることが明らかとなった.
  • 寺下 隆夫, 縄間 誠, 吉川 賢太郎, 獅山 慈孝
    1995 年 42 巻 11 号 p. 907-912
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    きのこの子実体生育と担子胞子の形成に子実体中のプロティナーゼがどのようなかかわりを持つかを明らかにする目的で,エノキタケを培養し,生産されるプロティナーゼについて検討し,以下の結果を得た.
    (1) 本菌の子実体には活性至適pH 3.2と6.5を示す酸性プロティナーゼおよび中性プロティナーゼが存在した.両酵素の活性は子実体の生育に伴って,菌柄部では大きな変動はなかったが,菌傘部で著しく上昇した(約12倍).酸性プロティナーゼは過熟子実体で最高値(3.0×102U/ペトリ皿)を示し,中性プロティナーゼは成熟子実体形成時に最も高い活性(5.9×102U/ペトリ皿)を示した.菌傘部の中性プロティナーゼの総活性を成熟子実体で比較すると酸性プロティナーゼの約4倍で,比活性でも3.3倍であった.
    (2) 各種の酵素阻害剤に対する挙動から酸性プロティナーゼはカルボキシルタイプ,中性プロティナーゼはメタルタイプであることを確認した.また,メタルプロティナーゼのpIは6.0であった.
    これらの結果から,エノキタケの子実体傘部の生育には菌傘部で生産されるpI 6.0のメタルプロティナーゼが重要で,担子胞子の形成にもこの酵素が主要な働きをするものと推察された.
  • 鐘ケ江 幸洋, 三輪 真敬, 中対 勇, 原田 篤也
    1995 年 42 巻 11 号 p. 913-919
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    食品中のカードランの定量法として,Bacillus curdlanolyticusの生産するβ-1, 3-グルカナーゼを使用した酵素法について検討した.
    (1) 加熱凝固ゲルが完全に分解される酵素反応条件として,カードラン濃度1.0mg/ml以下,酵素量2U/ml, pH 6.0,温度37℃,反応2時間を設定した.
    (2) 酵素反応により生成されたラミナリビオースは,1-フェニル-3-メチル-5-ピラゾロンで誘導体化してから,Capcell pak C 18を使用した液体クロマトグラフィで分離した.これにより,食品中の二糖類やグルコースとの分別が可能となった.
    (3) カードラン含有量が高い食品では,前処理なしでも,定量が可能であった.しかし,カードラン含有量が低い場合や,食品の組成によっては,前処理が必要であり,総食物繊維の定量法であるPROFSKY法を採用した.その結果,木綿豆腐,蒲鉾,プレスハム,うどん,中華麺,プロセスチーズのいずれの食品でも,94%以上の回収率が得られた.
    このように,この方法は,食品中のカードランの特異的な定量法として,幅広く利用できることを明らかとした.
  • 礒野 康幸, 鍋谷 浩志, 中嶋 光敏
    1995 年 42 巻 11 号 p. 920-925
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    微水系でのアスパルテーム前駆体合成を効率よく行うため,合成に適した有機溶媒の選択および界面活性剤修飾酵素の応用について検討し以下の結果を得た.
    (1) 合成に適した有機溶媒を検索し,有機溶媒均一系ではピリジン,メトキシエタノール,酢酸ブチル,酢酸エチル,tert-アミルアルコールで,水飽和有機溶媒均一系,有機溶媒-水二相系ではtert-アミルアルコール,酢酸エチル,酢酸ブチル,クロロホルム,フルフラールで高い転換率が得られた.総合して,酢酸エチル,酢酸ブチル,tert-アミルアルコール,クロロホルムが適していることがわかった.
    (2) 界面活性剤修飾酵素はクロロホルム均一系で有効であることがわかった.これは修飾に用いた界面活性剤と溶媒との親和性によるものと推察された.有機溶媒ごとに適した修飾用界面活性剤を検討する必要があると考えられた.
  • バイオセンサ法による食品中の亜硫酸測定(第6報)
    松本 隆志, 深谷 正裕, 秋田 澄男, 川村 吉也, 伊藤 誉志男
    1995 年 42 巻 11 号 p. 926-931
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    バイオセンサ法による液体食品中の残存亜硫酸の測定条件について検討した.
    バイオセンサ法による総亜硫酸の測定において,試料中の結合型亜硫酸の遊離は,室温でアルカリ処理を行う前処理方法により可能であった.ビールにおいては脱気処理により,バイオセンサ法の適用が可能であった.
    アルカリ分解法の最適条件を検討した結果,酸化防止剤としてL-システイン塩酸塩を使用し,その濃度は4.0(w/v)%が最適であった.
    アルカリ分解法による7種液体食品の亜硫酸添加回収試験を行った結果,いずれの試料においても90.0から99.4%の高い回収率を得ることができた.また,バイオセンサ法は改良ランキン滴定法の測定値ともよく一致し,改良ランキン滴定法よりも再現性良く測定できることが分かった.
  • 遠藤 泰志, 村上 泰隆, 藤本 健四郎, 阿尻 雅文, 新井 邦夫
    1995 年 42 巻 11 号 p. 932-936
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    食品の劣化や褐変に関与する金属含有の酸化還元酵素を中心に,酵素に対する超臨界二酸化炭素(SC-CO2)の影響を調べた.各種酵素の水溶液にSC-CO2を圧力10-20MPa,温度35℃で0-120分および20時間導入したところ,カタラーゼ,ペルオキシダーゼ,ポリフェノールオキシダーゼは,SC-CO2処理により容易に活性が低下した.その効果は時間が長くなるほど,また圧力が高いほど顕著であった.一方,リパーゼやピルビン酸デカルボキシラーゼはSC-CO2処理による著しい活性の低下は見られなかった.以上より,酵素の種類によりSC-CO2に対する感受性が異なることが明らかとなった.このことは,SC-CO2処理の条件(温度や圧力)を適当に選択することにより,食品中の特定の酵素だけを失活させることが可能なことを示唆した.
  • 佐々木 康人, 中村 享子, 篠原 和毅
    1995 年 42 巻 11 号 p. 937-944
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
    アマランス種子抽出物の透析内液が,ヒト型ハイブリドーマ細胞HF10B4の増殖と抗体(IgM)産生に及ぼす影響を検討した.HF10B4に対するIgMの産生促進は,アマランス種子抽出物の添加濃度が,0.25mg/mlから2.5mg/mlにおいて確認された.また,HF10B4細胞に対する増殖促進活性は,0.007mg/mlから0.01mg/mlの添加濃度において,若干ではあるが示された.アマランス種子抽出物のIgM産生促進(IPS)活性は,40, 60,80℃で20分間の加熱処理後においても安定であった.Sephacryl S-100 HRを用いたゲル濾過により,IPS活性は分子量3万以上の画分に存在していることが確認された.DEAE-Sepharoseイオン交換クロマトでは,IPS活性は吸着部および非吸着部の両方に存在していた.
  • 平成7年度日本食品科学工学会技術賞
    松岡 博厚
    1995 年 42 巻 11 号 p. 945-951
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
  • 山田 耕路
    1995 年 42 巻 11 号 p. 952-958
    発行日: 1995/11/15
    公開日: 2009/05/26
    ジャーナル フリー
feedback
Top