ダイズ種子の発芽に伴う形態生理変化の可視化を目的に,励起蛍光マトリクス(EEM)とマイクロスライサを利用した3次元可視化手法の開発を試みた.
ダイズ種子断面のEEMを計測・主成分分析し,可視化に有効な波長条件を選定した.次に,マイクロスライサによって露出される連続断面に対して,選定した計測波長条件で順次撮影し,主成分分析を利用した情報圧縮により,連続断面を可視化した.これら可視化した連続断面画像をボリュームレンダリングすることにより,立体再構築した.この手法を用いて,吸水直後から発芽までの3段階のダイズ種子内部の3次元可視化を試みた.
低波長領域の計測波長(波長セットA)で発芽前ダイズを3次元可視化したところ,維管束状構造及び胚軸が観察された.しかし,発芽に伴い,胚軸を可視化することはできなくなり,維管束構造を観察することは困難になった.
一方,高波長領域の計測波長(波長セットB)では,発芽前ダイズを可視化することはできなかった.しかし,発芽後には,この波長領域で維管束状の構造が観察された.更に,仮想的に内部を観察した結果,両子葉間に初生葉が発現している様子が見られた.
以上より,ダイズ種子の発芽過程において,内部の形態構造及び成分特性の変化が可視化され,本手法が生体の内部構造の3次元可視化に有効であることが明らかになった.
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