本研究では, 籾の加水・適温GABA富化技術の開発について検討を行い, 以下の知見が得られた.
(1) 加水貯留試験において, 貯留温度とGABA含有量には正の相関がみられた.
(2) 加水貯留試験において, 60℃ならびに65℃試験区では貯留後水分が高くなるにつれGABA含有量が増加した.
(3) 籾水分値が高い状態で60℃・98 %RH・5時間もしくは65℃・98 %RH・3時間貯留することにより, 効率のよいGABA富化が可能となる.
(4) 加水の際, 米酢を1.5 %添加すると, 55℃・5時間でのGABA富化が可能である.
(5) 米酢添加区の米飯食味は, 香りと総合評価を除いて対照区と同様であり, 食味の向上が示唆された. また, 用途を限定した商品展開 (お寿司用GABA米) が可能であると考えられる.
本研究では, 異なる4種の培地を用いて市販納豆菌のβ-グルコシダーゼ活性とアグリコン型イソフラボン (IA) の生成量を調査するとともに, それらを枯草菌168株による結果と比較した. 納豆菌では, 大豆固体発酵においてIAの生成はほとんど見られなかったが, 半固体発酵において一定量のIAの生成が認められた. 枯草菌168株では, 大豆固体および半固体発酵において顕著なIAの生成が見られた. 両培地を用いた発酵において, 納豆菌のβ-グルコシダーゼ活性は枯草菌168株の活性に比べて著しく低かった. 大豆液体 (煮汁) 発酵では, 納豆菌のβ-グルコシダーゼ活性は枯草菌168株よりも低かったが, 両菌種において発酵中期以降の同じ時期に, 同等量のIAが生成された. イソフラボン配糖体を含有するLB液体培地 (LB-DG培地) を用いた培養試験では, 0.2 %グルコースを含有するLB-DG培地を用いた納豆菌もしくは枯草菌168株の培養において, グルコース非含有に比べて培養初期のβ-グルコシダーゼ活性が有意に高かった. 以上の実験結果から, 大豆培地を用いた発酵のうち半固体および液体 (煮汁) 発酵では, 納豆菌がIA生成のためのスターターとなりうることが示された. また, 納豆製造過程にIAがほとんど生成されない理由には, 納豆菌のβ-グルコシダーゼ活性が低いことのみでなく, 本酵素活性に依存しない IAの生成時期の遅れが関与しているものと推察された. さらに, 大豆培地を用いて枯草菌を培養する際に, 培地中のグルコース含量がIAの生成に影響を与える可能性が示唆された.
本研究では, グルテンを添加しない大麦混合パン (以下, 大麦パン) の膨化特性について大麦4品種と製粉4方法を組み合わせた14種類の大麦粉を調製し, 実践的スケールの製パン試験 (山型食パン, 大麦配合率;10~50 %) を行った. 大麦品種として, 食物繊維量の異なるうるち性2品種ともち性2品種を用いた. 製粉方法として, 気流粉砕法, ピンミル法, ロール製粉法, 高速グラインダ法を比較した. その結果, 大麦パンの膨化特性に影響を与える重要な因子は, 大麦粉中のβ-グルカンやアラビノキシランを主体とする細胞壁や食物繊維の粉砕状態, および大麦パン中に含まれる食物繊維の総量であることが示唆された.
(1) 膨化特性に優れた大麦粉の製粉条件は, デンプン粒子が糊化しない30℃以下の低温製粉技術とデンプン粒子が胚乳細胞から散逸しやすい細胞壁の破れを作り出す微粉砕化技術と考えられた.
(2) 膨化特性は大麦パン中に含まれる総食物繊維量と有意な負の相関性が認められた.
(3) うるち性大麦パンともち性大麦パンで回帰分析を行った結果, アミロース含量は膨化特性に影響しないと推察された.
玄米豆腐の製造において, 異なる植物源澱粉の本葛粉の代替利用としての可能性を検討した. 官能評価から, バレイショ澱粉ならびにタピオカ澱粉が利用可能であると考えられた. さらに, テクスチャー解析結果から, 硬さ評価では本葛粉の場合と同等であったが, 付着性はバレイショ澱粉では高く, タピオカ澱粉は低かった. 以上より, 本葛粉を用いた玄米豆腐の品質を保持した上で, 本葛粉を他の植物源澱粉に代替えする場合, タピオカ澱粉が最適であると結論づけた.