壼酢の発酵醪より,乳酸菌,酵母,酢酸菌を分離して同定を行い,壺酢製造における微生物のフローラを調べた.
(1) 壺酢発酵中の乳酸菌叢については,仕込み1, 5, 10, 20, 30日目の発酵醪より,計230株の乳酸菌を分離して同定試験を行った結果,仕込み5日目は
L. plantarumが主勢菌株で,10~20日目では
L. casei subsp.
caseiが増殖し,30日目では
L. coryniformis subsp.
coryniformisが68%を占め,残りは
L. sakeが20%,
L. brevisが12%であった.仕込み1ヵ月間で乳酸菌は,3種類の菌種の交代があった.
(2) 壺酢発酵中の酵母菌叢については,仕込み5, 10, 20, 30日目の発酵醪より,計110株の酵母を分離して同定試験を行った結果,全ての分離菌株は
S. cerevisiaeであり,発酵初期のエタノール生成に大きく関与していることが分かった.
(3) 壺酢発酵中の酢酸菌叢については,仕込み45, 60, 75, 90, 120日目の発酵醪より,計150株の酢酸菌を分離して同定試験を行った結果,各試料共A.
pasteurianusが65~81%と主勢菌株で,
A. acetiが18~35%の割合を占めていた.
(4) 壺酢製造における微生物菌叢については,仕込み初期には同定された乳酸菌により,1%前後の乳酸が生成され,雑菌の増殖を防いでいる.乳酸の生成と同時に酵母の
S. cerevisiaeが増殖し,アルコール発酵が行われ,アルコールが生成される.アルコール生成が終了すると,酢酸菌の
A. pasteurianusが主勢で,
A. acetiも増殖し酢酸発酵が行われ,酢酸が生成される.このように壺酢製造における微生物菌叢を明らかにした.
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