日本食品科学工学会誌
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58 巻, 5 号
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総説
  • 吉井 洋一, 本間 紀之, 赤石 隆一郎
    2011 年 58 巻 5 号 p. 187-195
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル フリー
    A major use of rice is as cooked rice, which is a staple food in Japan. Furthermore, rice is also used as a raw material for various food items such as rice crackers, rice flour and sake by making use of its characteristics. However, the recent decrease in rice consumption has led to strong demands for the expanded use of rice. Therefore, research has been undertaken into various developments in the use of rice flour in Niigata Prefecture over the past 30 years. Two milling methods to make rice into fine rice flour have been established, the ‘two-step milling method” and the ‘enzyme-treated milling method”. These two methods have resulted in the use of rice flours in place of wheat flour in the production of foods such as breads and noodles. Rice flours produced by the two-step milling method and the enzyme-treated milling method have been used in western-style confectionery, as well as the production of breads and noodles, respectively. Niigata Prefecture holds the patents to these methods, which are used by 8 companies in Niigata and other prefectures. As for the processed food items from rice flour, two types of noodles have come into the market. Rice noodles are made only from rice flour, and therefore contain no wheat flour or gluten. The other type of noodle is made with koshinomenjiman, a high-amylose rice variety bred in Niigata Prefecture. This has the characteristic quality of an elastic texture, and has therefore been brought to market. These technologies are used as the basis for the Rice flour 10% Project (‘R10 Project’), which is a policy of Niigata Prefecture. This project aims to replace the use of wheat flour with rice flour by more than 10%.
報文
  • 柴田 真理朗, 杉山 純一, 蔡 佳瓴, 蔦 瑞樹, 藤田 かおり, 粉川 美踏, 荒木 徹也
    2011 年 58 巻 5 号 p. 196-201
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル フリー
    糊化させた米のパンの品質への影響を評価するため,小麦粉パン,米粉パンに加え,糊化させた米粉を添加したパン(糊化米粉パン),お粥を加えたパン(お粥パン)を調製し,それぞれの形状,粘弾性係数,および気泡パラメータを計測した.
    (1) お粥パンが最も膨張し,糊化米粉パンも小麦粉と同等に膨張したことから,糊化処理した米の添加によってパンの膨張が促進されることが分かった.
    (2) 糊化させた米を添加したパンは,小麦粉,米粉パンより粘弾性が低い,つまり柔らかいことがわかった.
    (3) 4種類のパン試料の気泡構造は同一であったことから,粘弾性の差は気泡壁(固相)の違いに依るものと推察された.
    以上より,糊化処理をした米粉または米の配合が15%の場合,グルテンなどの品質改良剤や,特別な前処理なしで従来の小麦粉100%のパン,または米粉パンより膨張性が良く,柔らかい食感を持つパンを調製することが可能であることが確認された.
  • 大賀 早希, 田中 翠, 小垂 眞, 田代 操
    2011 年 58 巻 5 号 p. 202-207
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル フリー
    ウズラ卵白オボムコイド(OM)を添加していないコントロール飼料と,飼料100g中にOMを1%含有するOM飼料,1% OMと同等のインヒビター活性を有する量のウズラ卵白を含むEW飼料を作製し,ラットにそれぞれの試験食を3週間摂取させた.
    試験食終了時の解剖前に,小型動物用X線CT装置にて撮影を行い,体脂肪の比較を行った.その後解剖を行い血液,肝臓,膵臓を採取した.摂食期間中の体重,摂食量の増減の記録,また解剖時得られた血液,肝臓の脂質成分の定量,肝臓,膵臓の臓器重量,タンパク質量,各種酵素活性の測定を行った.
    CT撮影の結果,皮下脂肪量においてコントロール群よりOM, EW両群で有意な低下を示した.また脂肪率,内臓脂肪量においてはコントロール群よりOM, EW両群で減少傾向にあった.さらにOM, EW群はコントロール群と比較して,膵臓重量,膵タンパク質量,膵酵素活性において有意な上昇が見られた.しかし,血漿の脂質成分分析結果は異なるものであった.したがって,OMは卵白タンパク質の脂質代謝改善作用の全てではなく,一部のみを担うことが示された.
  • 高橋 真介, 柳内 延也, 塩谷 茂信, 遠藤 準也, 萩原 昌司, 鍋谷 浩志
    2011 年 58 巻 5 号 p. 208-215
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル フリー
    既報において生体内で産生される3種の活性酸素種(ROS)を用い,それらが示す標的蛋白質分解作用を阻止する活性として天然に存在する抗酸化剤の抗酸化活性を評価する方法が報告されている.しかしながら,もう一つの生体内産生ROSである過酸化水素については,その蛋白質分解能が低いために未評価であった.本報では,過酸化水素がDNA分子を分解することから,DNAを標的として次亜塩素酸ラジカル,水酸化ラジカルおよび過酸化亜硝酸ラジカルに過酸化水素を加えた4種のROSに対する食品由来の各種天然抗酸化剤のDNA分解抑制作用による抗酸化活性の試験を行った.DNA分子はタン蛋白質分解系と同様に,各種ROSにより濃度依存的に分解された.このDNA酸化分解作用を抑制する抗酸化剤の作用は,蛋白質分解阻止作用で観察されたと同様な活性酸素種に対する作用特異性を持つことが観察された.すなわち,次亜塩素酸ラジカルに対してはチキンエキスから得られたイミダゾールジペプチドであるアンセリン-カルノシンが,水酸化ラジカルに対してはフェルラ酸が,そして過酸化亜硝酸ラジカルに対してはビタミンCとイミダゾールジペプチドが強い抗酸化活性を示した.過酸化水素に対しては試験した抗酸化剤の中ではイミダゾールジペプチドが最も強い抗酸化作用を示した.またアンセリンはOH・ラジカルによるDNAの分解も阻止する作用を示したことから,生体内で産生される4種のROSによるDNA分解を全て抑制することが出来ることが示唆された.水酸化ラジカルと過酸化亜硝酸ラジカルに対する抗酸化作用はイミダゾールジペプチドのアンセリンによる作用であった.一方,ビタミンCは過酸化水素によるDNA分解を顕著に促進する作用を持つことが観察された.
研究ノート
  • 奈良 一寛, 鳥潟 諭, 長内 宏之, 河野 武平, 加藤 陽治
    2011 年 58 巻 5 号 p. 216-221
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル フリー
    各種剪定材(カキ,クワ,サクラ,ウメ,ナラ,ブドウおよびリンゴ)を菌床に用いて栽培した鹿角霊芝子実体の水抽出物の差異について検討した.子実体から抽出した水溶性画分(WS)は,菌床の違いで収量(全糖量)が異なり,WSから得られた水溶性多糖画分(WS-H)でも収量に差異が認められた.WS-Hの全糖量はカキで最も多く,次いでリンゴとクワが多かった.構成糖組成の比較を行ったところ,カキおよびクワではアラビノースおよびキシロースが顕著に多く見られた.他のものではガラクトース,マンノースおよびグルコースが多く含まれていた.糖結合様式について検討したところ,ガラクタン系多糖およびグルカン系多糖で構成されていた.一方,カキおよびクワではガラクタン系多糖の他に,キシラン系多糖も多く含まれていた.したがって,異なる剪定材を菌床に用いて栽培した鹿角霊芝の子実体より抽出した水溶性多糖には違いがあることがわかった.
    今回の結果から,菌床を変えることで,異なる効能を備えた鹿角霊芝子実体の栽培が期待できるとともに,本来廃棄物として処理されている剪定材を有効に利用する可能性が示唆された.
  • 佐川 岳人, 西 香菜子, 納富 美穂, 平岡 龍之, 塚本 和巳, 早川 和一
    2011 年 58 巻 5 号 p. 222-228
    発行日: 2011/05/15
    公開日: 2011/06/30
    ジャーナル フリー
    生スィートバジルを乾燥する際に引き起こされる香りの変化を,香気成分バランスやスィートバジルの組織構造とそのレオロジー特性について,比較解析を行う事で,生スィートバジルの香りを維持する為に必要とされる因子の探索を行った.スィートバジルの香気寄与成分として特定したシネオール,リナロール,オイゲノール,オクタナール,1-オクタノール,(E)-2-ヘキセナール,(Z)-3-ヘキセノールの7種類の香気成分は官能評価の特徴を説明する因子となると考えられる.その中でも,生スィートバジルの香りを特徴づける因子としては,微量成分バランスが大きな役割を果たし,ハーブ自体には (E)-2ヘキセナールや (Z)-3-ヘキセノールが存在するが,それがハーブティーに溶出されずオクタナールが高い比率で溶出されることが重要であった.そのような性質を持つ組織構造は,葉内部の細胞壁の形状が乾燥工程を経ても維持されており,その状態は貯蔵弾性率の測定でも比較説明が可能であることが明らかになった.これらの結果により,ハーブの組織構造とハーブティーとして溶出される香気成分バランスに密接な関係がある可能性が示唆された.但し,今回確認された (E)-2-ヘキセナールや (Z)-3-ヘキセノールはみどりの香りと称される物質の1つである.これらの物質は植物中のリノレン酸や配糖体を前駆体として酵素が関与し発現するものであり12),食品加工時に発生することも知られている14)~16) .今後は配糖体量の変化と酵素の関係についても検討を行い,組織構造変化の香りに対する影響をより明確にしてゆく必要があると考える.しかしながら,細胞壁の損傷が少ない状態であった真空乾燥スィートバジルが生特有の香りを保持していたという事実から,乾燥工程を経ることで喫食時に感じる香りの違いは,単純な香気成分の増減という因子だけではなく,組織構造変化という因子からも説明できる可能性が示唆された.乾燥ハーブの香りに対する品質評価を行う上で,乾燥ハーブからハーブティーに抽出されてゆく香気成分のバランス変化や内部組織構造変化の比較といった多面的なアプローチは,今後の有効な評価手法の1つとなることが期待できる.
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