日本食品科学工学会誌
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48 巻, 6 号
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  • 狩野 幹人, 橋本 篤, 椎木 靖彦, 伊藤 健介, 元永 佳孝, 亀岡 孝治
    2001 年 48 巻 6 号 p. 401-408
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    FT-IR/ATR法による溶質量既知のマルトオリゴ糖(G1-G7)の重合度の推定について検討した結果,以下の結果を得た.
    (1) マルトオリゴ糖スペクトルの特徴として,指紋領域におけるG5-G7のスペクトルパターンが類似する傾向が認められた.さらに,スペクトルのピークの吸光度と重合度との間には,線形関係が認められなかった.
    (2) PLS-1によりマルトオリゴ糖の重合度推定を行ったところ相関係数0.999の良好な結果が得られた.
    (3) 吸収ピークの詳細を把握するため波形分離処理を行い,各分離波の帰属を文献より明らかにした.そして,各分離波の吸光度と重合度の関係より,重合の様子がより反映されている分離波を選定した.
    (4) 選定した分離波のピーク波数におけるスペクトルの吸光度,また,これらの分離波の影響が強いスペクトルの吸収ピークの吸光度を用いて重回帰分析を行ったところ,両方の場合とも,相関係数0.99以上の良好な結果を得た.さらに,溶質0.1gの場合においても,相関係数0.99以上の高い再現性が得られた.T-IR/ATR法により溶質量既知である単一成分のマルトオリゴ糖水溶液であれば,重合度の推定が十分可能であることが示された.
  • 橋本 俊郎
    2001 年 48 巻 6 号 p. 409-415
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    白菜の塩漬における亜硝酸の異常蓄積原因について検討した.亜硝酸のほとんどは硝酸還元能を有する大腸菌群によって生成された.これらの微生物はpH 4.0で生育阻止されたが,異常蓄積する白菜漬のpHは緩慢な低下を示し,大腸菌群が長期間に生存した.pH低下の遅れる原因として,白菜の窒素成分に基づく緩衝作用が関係すると考えられた.この異常蓄積は乳酸菌の添加で改善された.
  • 盛永 宏太郎
    2001 年 48 巻 6 号 p. 416-421
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    大豆種子の組織を破壊した後,加水膨潤と加熱を行い組織破壊の程度がTIの熱失活に与える影響を調べて次の所見を得た.
    (1) 膨潤丸大豆と磨砕大豆に0.05Mリン酸緩衝液(pH 7.6)を加えて沸騰水浴中で20分間加熱したところ,いずれも膨潤丸大豆に残存するTI活性の方が磨砕大豆のTIよりも小さい値になった.そしてその値は120℃ 30分間加圧加熱したときの磨砕大豆の残存TI活性値に匹敵するものであることを認めた.
    (2) 丸大豆と破砕大豆微粉にリン酸緩衝液を加えて吸水膨潤後に沸騰水浴中で加熱したところ,加熱約5分までは微粉のTIの方が急激に熱失活した.そして両者共に,加熱5分後のTI活性は大豆1mg当たり,生大豆の約1/10相当する数単位になった.しかしそれ以後は微粉のTIは下げ止まりの傾向を示すのに対して,丸大豆はさらに減少し加熱20分後には破砕大豆のTIの約1/2にまで減少した.
    (3) リン酸緩衝液を加えて吸水膨潤した丸大豆と破砕大豆微粉を20分間加熱したところ,80℃以下の温度では,TI活性減少率は微粉の方が大きかったが,80℃以上では,丸大豆の方が大きくなった.
    (4) 破砕大豆にリン酸緩衝液を加えて吸水膨潤後に沸騰水浴中で20分間加熱したところ,微細に粉砕した大豆のTIほど熱失活しなくなった.しかし粒径1mm程度で限界に達し,それ以上に粉砕してもさらなる差異は生じなかった.
    (5) 圧扁大豆にリン酸緩衝液を加えて吸水膨潤後に沸騰水浴中で20分間加熱したところ,圧扁の程度が増すほどTIは熱失活しなくなった.
    (6) 剥皮した大豆を150℃ 20分焙煎すると剥皮処理を行うことでTIが熱失活しなくなる傾向が見られた.しかし湿式加熱ではこの傾向は認められなかった.また大豆をナイフで切断した大豆にリン酸緩衝液を加えて吸水膨潤後に沸騰水浴中で20分間加熱したところ,分割の程度が少ない大豆では,TIの熱失活しなくなる傾向は認められなかったが,8分割以上に細かく分割した大豆では,有意にTIが熱失活しなくなることが認められた.
    以上(1)-(6)までの結果,大豆種子は湿式加熱においても,焙煎加熱で見られたように,組織破壊の程度に応じてTIは加熱しても熱失活しなくなることが明らかになった.
    従来,大豆加工や調理においては食味向上を兼ねて大豆組織が充分に軟らかくなるまで煮熟するのが一般である.しかし以上の結果から,単に大豆のタンパク質の消化向上を目的とする場合は,過度の煮熟は必要なく,また加熱前に大豆を挽き割ったりすり潰したりする処理も不要であるように思われた.
  • 柳原 哲司, 長谷 浩, 徳永 善也, 三浦 清之
    2001 年 48 巻 6 号 p. 422-428
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    米に含まれる抗原活性の米粒内分布を明らかにし,通常精白米あるいは玄米に比較して,高度精白米の抗原活性がどの程度低下しうるかを,定量的に示すことを目的として生化学的な検討を行った.
    (1) 蛋白質含量は米粒表層画分で高く,内部の画分になるに従い低下する分布を示した.70%高度精白米の蛋白含量は玄米の約7割であった.
    (2) 塩可溶蛋白質含量は米粒表層20%で高く,それより内部では低下し,中心部までほぼ均一であった.その抗原活性は米粒表層画分で極めて高く,内部の画分で急激に低下した.この結果,米粒全体で見ると米の抗原活性は米粒表層に局在する分布を示すことが明確となった.
    (3) 精白歩合を70%まで高めることにより,抗原活性は玄米の4%程度にまで低減化することが明かとなった.
    (4) 塩可溶蛋白質と抗原活性の米粒内分布には若干の品種間差が認められたが,胚乳中心画分に存在する比率に品種間差は認められず,蛋白質含量が同レベルであれば,いずれの品種を原料として用いても,同程度に抗原活性が低減化された高度精白米の調製が可能と考えられた.
    (5) 本報告のデータは,今後高度精白米の臨床的な検証および安全な利用法の検討を進める上で,基礎的知見として有効に活用できるものと考えられた.
  • 中津川 研一, 大橋 きょう子, 島田 淳子
    2001 年 48 巻 6 号 p. 429-436
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    DAGの酸化特性を,常温での酸化(紫外線照射あり,および無しの場合)と高温での酸化(紫外線照射無し)についてTAGと比較検討した.
    (1) 常温における酸化安定性は,紫外線照射の有無にかかわらず,DAGの方がTAGより優れていることが分かった.このことから,酸化安定性にDAGの分子構造が寄与していることが示唆された.
    (2) 高温での酸化における酸化安定性では,DAG, TAGの間にほとんど差は見られなかった.
    (3) 常温での酸化,高温での酸化ともに,DAGがTAGに比べやや着色しやすい傾向がみられたが,これはDAG, TAGの構造の違いによるとも考えられ,この点についてはさらに検討する必要がある.
  • 高畑 薫, 植田 晶子, 渡辺 四男也, 秋山 陽, 寺田 厚
    2001 年 48 巻 6 号 p. 437-443
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    油脂含量の高い水産缶詰食品中のBPA分析法について検討し,次の結果を得た.
    (1) 試料を酢酸エチルで抽出し,n-ヘキサン/アセトニトリル分配により脱脂した後,ポリスチレンビーズを充填した固相カートリッジ(GL-Pak PLS-2)でクリーンアップすることで処理操作が簡便となった.
    (2) BPAをTMS化した後,GC/MS (SIM)で測定することで,注入時の吸着や共存物質の影響を受けず高感度分析が可能であった.
    (3) さば水煮を用いて添加回収試験を行ったところ,93.4±2.5% (n=3)の良好な回収率を得た.本法の定量限界は10ng/gである.
    (4) 本法を用いて市販の水産缶詰食品14検体について調査したところ,8検体から21.1ng/g-134.8ng/gのBPAが検出された.
  • 山崎 均, 谷口 知央, 増田 哲也, 森地 敏樹
    2001 年 48 巻 6 号 p. 444-448
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    山羊は季節繁殖動物であるため,その乳を原料としたソフトタイプチーズの通年販売は困難である.そこで凍結カードから製造したサントモールチーズの性状について検討した.-20℃で1-3か月凍結したカードを製造直後のカードと比較すると,3か月凍結したカードの水溶性タンパク態窒素含量に僅かな増加が確認されるものの,タンパク分解様相には凍結の顕著な影響はなかった.凍結カードより製造したチーズのpH 4.2不溶性画分の泳動像でタンパク分解が進行していることが確認され,さらに凍結カードから製造したチーズの熟成2週間後の水溶性タンパク態窒素含量も顕著に増加した.3か月凍結カードより製造したチーズを試食すると不快臭(獣脂臭;tallowy)が強かったが,2か月凍結カードより製造したチーズは非凍結のものと風味の点でも遜色なく,カード凍結による供給期間の延長が可能であることが示された.
  • 進藤 久美子, 安井 明美, 大澤 良, 堀田 博, 鈴木 東子, 金子 勝芳, 鈴木 建夫
    2001 年 48 巻 6 号 p. 449-452
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    玄ソバについて古くから行われている寒ざらし処理が,ソバ殻を除いた可食部の成分組成に与える影響を検討し,そば切りの品質向上効果にかかわる伝承の実証を試みた.
    (1) 寒ざらし処理後も,タンパク質,脂質,炭水化物,灰分,無機質,食物繊維およびルチンについては,ほとんど溶出していなかった.
    (2) 寒ざらし処理により,全ポリフェノール量の低下および遊離アミノ酸組成の変動が認められ,遊離アミノ酸の中ではγ-アミノ酪酸(GABA)が2倍に増加していた.
    (3) 成分含有量に大きな変化は見られなかったが,ポリフェノール量と遊離アミノ酸組成の変化は,そば切りの品質向上の可能性を示していると考えられた.
  • 相島 鐵郎, L.M POSTE, D.A MACKIE, G BUTLER, E LARMOND
    2001 年 48 巻 6 号 p. 453-466
    発行日: 2001/06/15
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
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