日本食品科学工学会誌
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54 巻, 3 号
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総説
報文
  • 江越 加州生, 岡 輝美, 山下 浩子
    2007 年 54 巻 3 号 p. 113-117
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    メラトニン(MEL)のプレカラム蛍光誘導体化法を利用し,生乳中MELの定量法を確立した.生乳をパパインで酵素処理後,MELをクロロホルムで抽出した.抽出物中のMELに過酸化水素存在下アルカリ性で硫酸銅を添加し,加熱・誘導体化後,酢酸エチルで抽出し蛍光検出器付HPLCで定量分析した.生乳中MELの確認は,ピークの保持時間,励起スペクトル及び発光スペクトルの比較により行った.MEL標準品を生乳に加えたときの添加回収率は85.2±7.3%(n=5)であった.
  • 上野 真理子, 寺島 晃也, 多田 耕太郎, 山口 静子
    2007 年 54 巻 3 号 p. 118-127
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    富山県の伝統食品かぶらずしの品質と食味特性の関係を明らかにするため,県下の代表的な10社の市販品の理化学的分析と官能評価を行い,主成分分析による総合的な解析を行った.市販品は微生物数から推察される発酵状況や有機酸,糖組成に差があり,発酵を主とする伝統的製法タイプ,発酵度合い不十分タイプ,甘味添加を主とする食味調整タイプの3つに大別された.
    さらに,理化学特性と官能特性を総合した主成分分析の結果,消費者には 2つの価値観が同等の重みを持って存在することが明らかになった.1つは甘味中心に調整された食味を高く評価する価値観で,もう1つは伝統的製法に基づき熟成された食味を高く評価する価値観であり,少なくともいずれかの価値観を満たさない食味は消費者嗜好に適合しないことが示唆された
研究ノート
  • 相馬 さやか, 森永 詞子, 吉本 宇子, 三池 美佳, 中村 誠, 田中 賢二
    2007 年 54 巻 3 号 p. 128-132
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    スケトウダラ原卵に含まれる亜硝酸根の定量では試料液の白濁やろ過遅延・発泡といった問題が生じ,これはたらこ製造の工程管理において大きな負荷要因となる.
    そこで,原卵とたらこの亜硝酸根分析作業の迅速化のため,前処理方法における除タンパク剤添加条件および消泡剤の使用効果について検討した.
    その結果,ろ過速度を速める条件として,従来法の2倍濃度の除タンパク剤を2分の1量添加する方法を見出すことができた.また,発泡抑制に有効な消泡剤はシリコン樹脂を主成分とする和光純薬のSIで,ホモジナイズ前の試料液に対し10倍希釈液を100μl添加する方法が最適であった.消泡剤添加はろ過速度の改善にも効果を示した.
    本法により,試料溶液のろ過速度の低下や発泡といった問題を生じるスケトウダラ卵製品の亜硝酸根量を正確に且つ迅速に測定することができる.
  • 卯川 裕一, 小嶋 靖, 杣 佳次郎, 三島 隆, 久松 眞
    2007 年 54 巻 3 号 p. 133-137
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    ハタケシメジ抽出エキスをマウスに単回経口投与もしくは20週間継続的に摂取し,投与期間中の一般症状と死亡の有無を観察するとともに,観察終了日に病理解剖を行い,異常の有無を肉眼的に観察した.その結果,ハタケシメジ抽出エキス投与群では,対照群と同様,一般症状,体重増加推移に変化はなく,異常な剖検所見や死亡は観察されなかった.
    さらに,ハタケシメジ熱水抽出エキスを成人1日あたり2.88g, 2週間摂取し,血液検査,尿検査,血圧・身体測定および問診から安全性について検討した結果,血液学検査,肝機能,腎機能,糖代謝,脂質代謝,血圧および身体検査の各試験項目において,臨床上問題となる異常所見の発現は一切認められなかった.また,アガリチンについて,ハタケシメジ熱水抽出エキスに含まれるか否かを分析した結果,検出限界2ngで検出されなかった.以上の結果,ハタケシメジ抽出エキスは,安全性の高い食品であり,生活習慣病の1次予防の手段としてハタケシメジの利用が期待される.
  • 山本 寿, 村上 真理絵, 中地 聖子, 西野 由記子, 西川 彩子
    2007 年 54 巻 3 号 p. 138-141
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    2級冷凍すり身に米デンプンを,特級冷凍すり身に米デンプン,α化米デンプン,ヤマノイモ(長芋)をそれぞれ添加して加熱ゲルを調製し,その応力-ひずみ特性(初期弾性率,降伏および破断特性)の変化を調べた.
    (1)品質の劣る2級すり身に米デンプンを添加した場合,添加量の増大に伴って加熱ゲルの応力-ひずみ特性値は,降伏ひずみを除いて,全て増大した.20%添加すると,加熱ゲルの破断応力と破断エネルギーは特級すり身加熱ゲルと同程度に達した.
    (2)特級すり身に米デンプン,α化米デンプンをそれぞれ添加すると,無添加の場合に比べて初期弾性率は増大したが,降伏および破断特性値は全て低下した.
    (3)特級すり身にα化米デンプンを3%添加した試料とヤマノイモを10%添加した試料の応力-ひずみ特性は,初期弾性率と降伏ひずみを除いて,互いに近似した.
技術用語解説
  • 新本 洋士
    2007 年 54 巻 3 号 p. 142
    発行日: 2007/03/15
    公開日: 2007/10/04
    ジャーナル フリー
    動物の体内には腸内細菌や口腔内細菌のような常在菌が多数存在する.このうち実験動物を飼育するにあたって,実験の障害になるような特定の病原菌が存在しないことが保証される条件をSpecific Pathogen Free(SPF)と言う.
    実験動物のブリーダーから購入できる動物の多くはSPFを維持できるバリア施設で飼育繁殖されたものでありSPF動物と呼ばれる.SPFを維持して実験動物を飼育するためには,高度にバリア性の高い飼育施設と,SPFを維持するための管理体制が必要である.飼育室はHEPAフィルター(High Efficiency Particulate Air Filter)を通した空気で与圧し,外部から微生物が進入するのを防ぐ.圧力を逃がすリリーフダンパーの形状によっては昆虫が風の流れに逆らって飛び込む事もあるので空調施設の設計には細心の注意を要する.
    実験者は手指を消毒し,清浄な実験衣に着替えて飼育室に入室する.前室ではエアシャワーなどによって付着物を除去する.入室者の室間の移動は一方向でなくてはならない.入室し,飼育室,実験室を通って作業を行い,別の出口から退室する.動物や器具はエアロック構造のあるパスボックスを通して搬入,搬出する.準備室と飼育室をつなぐ大型のオートクレーブを設置することもある.
    SPFに対して通常の実験室で実験動物を飼育することをコンベンショナル飼育と言う.通常の栄養実験等はコンベンショナル条件下で行われることが多い.これに対して,免疫,アレルギー,発癌,薬理試験などはバリア施設内でSPF動物を用いて行われることが多い.SPF動物は飼育条件が一定に保てるため,他の実験施設での試験成績との比較がしやすい.
    コンベンショナル条件下でもHEPAフィルターを通った空気を送ることのできる飼育キャビネットを用いることによって,バリア環境下でSPFに近い環境で動物を飼育することもできる.
    バリア施設の汚染原因と考えられるのは,飼育実験作業従事者が病原菌を持ち込む場合,あるいはブリーダーから購入した動物が汚染されている場合である.ブリーダーは定期的に動物汚染チェックを行っており,汚染動物が納入されてしまうことはほとんどない.作業従事者からの汚染を防ぐためには,自宅でげっ歯類を飼育しない,コンベンショナル飼育室で作業を行った後はバリア施設に入室させない,などの注意も必要である.
    SPF動物の清浄性を維持するためには,定期的に飼育動物の微生物モニタを行う必要がある.微生物モニタを受託するブリーダーもあるので,指定された滅菌容器に動物を入れてブリーダーに送る.数週間のうちに微生物検査の結果が得られる.
    病原菌による汚染が見つかった場合には直ちに実験を中止し,動物を処分して施設の消毒をし直す必要がある.動物をどうしても処分できない場合には,できる限り数を減らした後,動物を抗生物質等で除菌する.病原性微生物が完全に除去できたことを確認した後,実験を再開し,新しい動物を購入する.
    実験動物とは別に,食肉としてSPF豚が販売されている.SPFであるので無菌豚というわけではないが,日本SPF豚協会によると,萎縮性鼻炎,豚赤痢,オーエスキー病,トキソプラズマ感染症,マイコプラズマ肺炎の5つの病気については,SPF豚はこれらに感染していないことが保証されている.
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