日本食品科学工学会誌
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55 巻, 7 号
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総説
報文
  • 柚木崎 千鶴子, 青木 宏太, 本多 可奈, 高司 清香, 井野 寿俊, 赤木 功, 窄野 昌信, 福田 亘博
    2008 年 55 巻 7 号 p. 323-329
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    本研究において,宮崎県の主要品種である「佐土原3号」(S3)が「宮崎こいみどり」(KM)と同様にラット肝臓脂質低下作用を有することが明らかとなった.さらにS3から有効成分を効率的に抽出するために,100,80および60%エタノール溶液を用いて抽出物を調製し,ラット血清および肝臓脂質濃度に及ぼす影響を検討した.その結果,80%および60% EFはラットの肝臓TG濃度を,60% EFはラットの肝臓CHOL濃度を有意に低下させた.
    また,宮崎県で新規に育成された宮崎N1号,宮崎N2号,宮崎N3号および宮崎N4号の4品種(N1,N2,N3,N4)を用いてラット血清および肝臓脂質濃度に及ぼす影響をS3と比較検討した.その結果,N1,N3およびN4は,ラットの肝臓TGおよびCHOL濃度を有意に低下させ,S3同様に肝臓脂質濃度低下作用を有することが明らかとなった.加えて,N3およびN4はS3よりも肝臓TG濃度を低下させる傾向が観察された.
  • 長谷川 温子, 中澤 文子, 熊谷 仁
    2008 年 55 巻 7 号 p. 330-337
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    超音波パルスドップラ法を用いて,嚥下量の変化による咽頭部での流速分布の測定を行い,食物の量が嚥下に与える影響から誤嚥の危険性の低い嚥下量を明らかにした.誤嚥しにくいとされているヨーグルトは嚥下量3.0~15.0gでは量が少ないほど,最大流速が小さく,誤嚥の危険性が低いことを示した.誤嚥しやすいとされている水は量が少ないほうが最大流速は小さいが,ヨーグルトに比べると2倍以上の最大流速であるため注意が必要である.水とヨーグルトともに嚥下量が少量のほうが最大流速は小さく,被験者によるばらつきも小さいことから,少量の嚥下量であれば多くのヒトは誤嚥の危険性が低くなることを明らかにした.
技術報文
  • 小出 章二, 八十川 大輔
    2008 年 55 巻 7 号 p. 338-344
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    Aspergillus nigerを種々の温度条件(18℃~35℃)のもとPDA培地で成長させ,その菌糸マット径と分生子発芽円径(分生子形成部径)の経時変化を計測した.得られたそれぞれの測定温度での測定値をmodified Logistic,modified Gompertz,Weibullモデルを用いて近似した結果,Weibullモデルが最良の結果を示した.次に,Weibullモデルのパラメータを温度の関数とし,温度変化に対応出来る新Weibullモデルを構築した結果,計算値は各温度での測定値(18℃~35℃)を良く表現した.これより,新Weibullモデルを用いて温度変動条件(温度範囲20℃~30℃)下でのA. nigerの菌糸マット径・分生子形成部径の経時変化を計測し,測定値と計算値を比較したところ良好な近似を得た.
    本報は,カビについては初めての知見であり,今後更に広い温度範囲で測定を行い,温度変動環境下でのカビの制御やカビを用いた発酵に応用したい.
研究ノート
  • 豊田 正武, 佐藤 真理, 阿部 圭子, 坂本 万希子, 田中 佑佳, 横山 奈緒美, 渡邊 智江, 渡邉 美紀, 近藤 健, 菊池 知古
    2008 年 55 巻 7 号 p. 345-349
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    カキの葉には,ビタミンCとタンニンが多く含まれる.しかし,カキの若葉の成分についての研究はそれほど多くなく,特に天ぷらに用いる若葉についての研究は全くない.そこで,2006年5月に東京と横浜で採取した11品種(‘富有’・‘次郎’・‘前川次郎’・‘伊豆’・‘東京御所’・‘松本早生富有’・‘陽豊’・‘禅寺丸’・‘西村早生’・‘西條’・‘平核無’)13試料の若葉についてビタミンCとタンニン含有量を比較した.また,一部の若葉は天ぷらにし,調理影響を調べた.ビタミンCは2,4-ジニトロフェニルヒドラジン法で測定し,ポリフェノールはアルコール抽出液をフォーリン・デニス法で測定し,タンニン酸として濃度を算出した.総ビタミンCの平均含量は756.2±139.0mg/100gであり,品種別では最も多い品種が‘平核無’の978.7mg/100g,少ない品種が‘富有’の567.1mg/100gであり,総ビタミンCに占める還元型ビタミンCの割合は85.1±5.7%であった.ポリフェノールの平均含量は927±217mg/100gであり,品種別では多い品種が‘禅寺丸’の1484mg/100g,少ない品種が‘富有’の569mg/100gであった.若葉の総ビタミンC及びポリフェノール含量の平均値は,完全甘ガキ,不完全甘ガキ,渋ガキの間で差がなかった.天ぷらにした若葉の総ビタミンC含量は少し減少し,タンニン量に変化はほとんどなかった.5~7cmのカキ若葉の天ぷらを1枚食べることにより,ビタミンCは3.7mg,ポリフェノールは5.3mg摂取できることが分った.
  • 折笠 貴寛, 柴田 高志, 根井 大介, ロイ ポリトッシュ, 中村 宣貴, 椎名 武夫, 田川 彰男
    2008 年 55 巻 7 号 p. 350-354
    発行日: 2008/07/15
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    あらかじめ含水率1.0(d.b. decimal)まで水分を調整したダイコンを熱風,真空およびマイクロ波により乾燥し,乾燥特性,物理的性質および色彩について検討したところ,以下の知見が得られた.
    (1)ダイコンの含水率変化は指数モデルが適用でき,含水率1.0(d.b. decimal)以下の範囲におけるダイコンの乾燥は,いずれの乾燥方法においても減率乾燥第一段にあることが示された.
    (2)マイクロ波乾燥における乾燥速度定数は,熱風乾燥と比べて8.7倍,真空乾燥と比べても6.8倍となった.これより,含水率1.0(d.b. decimal)以下の範囲における乾燥末期においてマイクロ波乾燥を適用することで,熱風乾燥,真空乾燥などの直接加熱乾燥法と比べて6-9倍程度乾燥を促進できることが示唆された.
    (3)乾燥過程に影響を及ぼす試料の硬度,表面積および空隙率といった試料の形状変化について調査したところ,マイクロ波乾燥において内部空隙の増加,硬度の減少および表面積比の増加が観察された.
    (4)試料色彩を測定し,その値から色差ΔEを算出したところ,マイクロ波乾燥を用いることにより,色彩の変化を抑制できる可能性が示された.
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