緑色野菜であるミツバを用い,真空度(30, 100mmHg)と加熱温度(100, 90, 80℃)が,クロロフィルと分解物,官能評価,ならびに微生物におよぼす影響について検討した.
(1) 加熱後の外観は,真空包装(30, 100mmHg)で加熱温度が高いもの(100℃, 90℃)は,鮮緑色を示した.常圧包装した試料は一部分新鮮な状態に近い色を呈した.なお70℃加熱では変色し加熱温度として不適当であった.
(2) 総クロロフィル含量は真空度,加熱温度による違いがほとんどみられなかった.吸収スペクトル特性では加熱により415nm付近の吸収増加がみられ,この増加は加熱温度が高い方が少なかった.真空度による差はみられなかった.HPLC分析よりフェオフィチンの生成が認められた.
(3) 還元型アスコルビン酸含量は,加熱温度が高いほどよく保持されていた.100℃では真空度による差がみられなかったが,90℃, 80℃では密封時の真空度が高いほど含量が多かった.
(4) 官能検査では真空調理の方が普通調理によるミツバより香り,食べた時の風味が有意に強いと評価されが,総合評価では差異が認められなかった.
(5) 貯蔵中,葉の黄化がみられ,その変化の進行は貯蔵温度が低い方が遅かった.総クロロフィル含量はほとんど変化がみられなかった.吸収スペクトル特性では415nm付近に吸収増加がみられ,この増加は貯蔵温度が低い方が少なかった.フェオフィチンa, bの検出と増大が認められた.
(6) 貯蔵中の還元型アスコルビン酸は減少し,酸化型アスコルビン酸が増加した.貯蔵温度が低い方が,酸化型アスコルビン酸の増大が抑制された.
(7) 貯蔵温度5℃では8日間の貯蔵期間を通して微生物が検出されなかったが,20℃では2日,10℃では6日で急増した.
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