各醸造メーカーより各種豆味噌,米味噌および麦味噌を入手し,この味噌中の8-OHD, 8-OHGおよび6-OHD含量を調べるとともに,その抗酸化力を測定した.また,これらのODIに及ぼす貯蔵および加熱の影響を検討することにより,これらイソフラボン類の味噌中での抗酸化的役割を評価した.
(1) いずれの豆味噌においても3種のODIは十分に含有されていた.しかし,米麹や麦麹を蒸煮大豆とともに仕込みを行った米味噌や麦味噌中には,いずれのODIも全く検出されなかった.
(2) 豆味噌用の味噌玉麹には3種のODIが含有されていた.これらの結果より,ODIの生成には原料ダイズを直接に麹発酵させることが重要であると考察された.
(3) 各種味噌の抗酸化力を調べたところ,ODIが含有される豆味噌が米味噌や麦味噌より強い活性を示した.また,ODI含有量と抗酸化活性との間には正の高い相関(r=0.812)が認められた.
(4) 豆味噌中の3種のODIは,味噌を30℃で約9ヶ月間貯蔵しても,ダイゼインやゲニステインと同様にほとんど分解・減少しなかった.
(5) これら3種のODIは,豆味噌を味噌汁の状態で30分間加熱しても,ほとんど安定であった.
これらの結果より,8-OHD, 8-OHGおよび6-OHDは味噌,特に豆味噌中の主要な抗酸化物質であり,その醸造過程および貯蔵時における脂質安定性に大いに寄与していると推定される.
抄録全体を表示