日本食品科学工学会誌
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56 巻, 6 号
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総説
報文
  • 岩井 浩二, 張 有做, 河口 友美, 雜賀(江草) 愛, 清水 宗茂, 大森 丘, 高畑 能久, 森松 文毅
    2009 年 56 巻 6 号 p. 326-330
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    降圧作用を有する鶏コラーゲン加水分解物(C-COP)を健常人に摂取させ,C-COPの血中動態およびアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性との関連性について検討した.
    体重60kgあたり25gのC-COPをヒトに単回摂取させた場合,血中に遊離ヒドロキプロリン(Hyp)とともに,ペプチド型のHypも確認された.血中のペプチド型Hyp量は,2時間後(91.1μmol/L)に最大となった.摂取2時間後の血中からPro-Hyp, Leu-Hyp, Pro-Hyp-Gly, Phe-Hyp, Ala-Hyp, Hyp-Gly, Glu-Hyp-Gly, Ala-Hyp-Gly, Ser-Hyp-GlyのHyp含むペプチドが確認された.血中ペプチドは,ACEに対する阻害活性を有しており,Ala-Hyp(IC50 : 0.177mmol/L)の活性がもっとも高かった.以上より,C-COPの降圧作用は,血中ペプチドによるACE阻害が作用機序であると考えられた.
  • 葉 玉霜, 何 若瑄, 李 丹昂, 周 繼發
    2009 年 56 巻 6 号 p. 331-335
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    鉄の生体利用効率に関連して,ラクトース溶液(4.8%,6.0%および7.2%)およびホエータンパク質(W)とカゼイン(C)比率(W/C)の異なる3.3%乳タンパク質溶液ならびにこれらの混合液を透析し,塩化第二鉄の還元性および鉄の透析性を調べた.W/Cは0 : 10,2 : 8,4 : 6,6 : 4,8 : 2および10 : 0とし,タンパク質は酵素(ペプシンおよびパンクレアチン-胆汁酸塩)処理を行なった.
    (1) 6.0%および7.2%ラクトース溶液では,三価鉄イオン(Fe3+)の二価鉄イオン(Fe2+)への還元性は,コントロールおよび4.8%ラクトース溶液より高かった.一方,4.8%~7.2%ラクトース溶液中の鉄の透析性には差が認められなかった.
    (2) W/Cの異なる乳タンパク質溶液では,Fe2+および透析性鉄がホエータンパク質比率の増加とともに高まった.
    (3) ラクトース-乳タンパク質混合液では,W/C 6 : 4およびラクトース7.2%でFe2+,透析性鉄ともに最高になった.しかし,牛乳の組成に近いW/C 2 : 8およびラクトース4.8%では向上が認められなかった.
  • 紙谷 雄志, 岩井 和也, 福永 泰司, 木村 良太郎, 中桐 理
    2009 年 56 巻 6 号 p. 336-342
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    本研究は,超臨界抽出により脱カフェイン処理したコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素阻害と,その主成分であるクロロゲン酸異性体の寄与,さらにラットによる糖質負荷後の血糖値上昇抑制作用について検討した.
    (1) コーヒー豆抽出物のクロロゲン酸類含有量は38.8%であり,8種のクロロゲン酸異性体はコーヒー豆抽出物の糖質分解酵素の阻害活性に63.1-85.8%寄与することが確認された.
    (2) クロロゲン酸異性体の阻害活性はジカフェオイルキナ酸が最も強く,順にカフェオイルキナ酸,フェルロイルキナ酸であった.その阻害活性にはカフェオイル基がフェルロイル基より強く作用し,カフェオイル基数と共にキナ酸への結合部位も重要であることが推察された.
    (3) コーヒー豆抽出物はα-GI剤(アカルボース,ボグリボース)と類似した作用機序を示し,効果量より低いα-GI剤量に対して,相加的な併用効果があることが推測された.また,α-グルコシダーゼ阻害を介した血糖値の上昇抑制作用を示し,糖尿病予防効果のある健康食品素材としての可能性が示唆された.
  • 氏原 邦博, 吉元 誠, 和田 浩二, 永井 竜児, 広瀬 直人, 照屋 亮
    2009 年 56 巻 6 号 p. 343-349
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    黒砂糖の色調,栄養成分,機能性成分および食味等に搾汁機のローラーの材質およびライミング処理が及ぼす影響を調査し,以下の結果を得た.
    (1) 市販黒砂糖の暗色化の原因は,搾汁機のローラー由来の鉄とライミング処理によるものであり,これらがアミノカルボニル反応を促進することで着色が進み,暗色化していることが明らかとなった.搾汁機のローラーの材質をステンレスに換え,ライミング処理しないことにより,黒砂糖の色調は明るくなった.
    (2) ステンレス製ローラーで搾汁し,ライミング処理しない黒砂糖は鉄製ローラーで搾汁し,ライミング処理した黒砂糖よりも鉄含量とカルシウム含量は少なかったが,スクロース含量,アミノ酸組成,カリウム含量,マグネシウム含量および機能性成分であるポリフェノール含量は同程度であった.
    (3) ステンレス製ローラーで搾汁し,ライミング処理しない黒砂糖の明るい色調は消費者に好まれ,食味は苦味,えぐみ等が改善されたことにより評価が優れ,料理への適性も高いと考えられた.
  • 元永 智恵, 近藤 正敏, 林 篤志, 岡森 万理子, 古米 保, 北村 良久, 嶋田 貴志
    2009 年 56 巻 6 号 p. 350-355
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
     卵巣を摘出した11週齢の雌SDラットに,富山湾深層水由来乳酸菌Enterococcus faecalis TN-9で発酵させた豆乳を連日強制経口投与して,体重,摂餌量,体脂肪率,脂肪重量および各種血液生化学的検査に対する影響を検討した.対照群には生理食塩水を,豆乳群には市販の豆乳を,低用量群および高用量群には発酵豆乳を2mL/kg B.W. および5mL/kg B.W. 50日間連続経口投与した.また,陽性対照として偽手術を施したSham群を設けた.体重において対照群,豆乳群,低用量群,高用量群およびSham群は試験最終日にそれぞれ406.0g,399.0g,427.5g,358.1gおよび303.2gを示し,摂餌量では20.9g/day,20.7g/day,21.6g/day,18.0g/dayおよび19.0g/dayを示し,血清グルコース値では134mg/dL,135.8mg/dL,142mg/dL,111mg/dLおよび111mg/dLを示した.これらの項目において高用量群が対照群と比較して低値を示した.体重および摂餌量では,試験開始時より高用量群が低用量群と比較して低値を示した.試験最終日の血清グルコース値および体脂肪量において,高用量群が低用量群と比較して有意な低値を示した.高用量群においてみられた体重増加,血清グルコース値の上昇抑制は摂餌量の低下に起因するものであると考えられた.さらに,摂餌量の低下は乳酸菌発酵豆乳による影響が示唆される.
研究ノート
  • 岩根 敦子
    2009 年 56 巻 6 号 p. 356-358
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    既報5)で,生育過程におけるリンゴの果実部位別無機成分の動向を検討したところ,ボルドー液散布の影響として,果皮の銅の高濃度が認められた.
    ボルドー液散布中止15年後の2001年産果実について,既報5)1980年産果実と同じ栽培環境の品種‘ふじ’を生育期別・果実各部位別に銅含量の変化を調べた.
    開花盛期後3週から収穫期までの果肉,果芯,種子は両年度の銅濃度が同じ動向を示しており,同時期の銅濃度は近い値である.果肉収穫期の銅濃度は両年度で同じ値を示した. 2001年産果実は1980年産果実より,果皮を除き果肉,果芯,種子の銅濃度および果実1個当たり銅含量が高かった.
    2001年産の皮なしおよび皮付リンゴの銅含量は,同値で生鮮重量0.053mg/100g, 1980年産は皮なしが0.048mg/100g 皮付0.072mg/100gであり,皮付使用でも銅摂取量への影響は低かった.
  • 津嘉山 正夫, 市川 亮一, 山本 幹二, 佐々木 貴啓, 河村 保彦
    2009 年 56 巻 6 号 p. 359-362
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    マイクロ波照射によるメタノール中ユコウ搾汁乾燥果皮から生理活性機能性物質タンゲレチンとノビレチンが迅速・効率よく分離され,ヘスペリジン以外にこれら2種の化合物の存在が始めて明らかにされた.マイクロ波の2.5~5分間の照射によるユコウ乾燥果皮中のポリメトキシフラボンの抽出は,通常加熱抽出法に比べて極めて短い時間で効率よく分離され優れていることが分かった.これらの結果からマイクロ波抽出法は,柑橘類搾汁残渣(果皮)からの有用成分の効率的抽出法として応用できる可能性があり,再利用に有効であることを示唆している.
  • 坂ノ下 典正, 桜井 孝治, 中村 泰輔, 江端 より子, 柳沢 幸江
    2009 年 56 巻 6 号 p. 363-369
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    低付着性チューインガムと一般チューインガムを調製し,2種のチューインガムの付着について,機器測定およびアンケート調査の両側面より比較検討した.アンケートは高齢者パネルを対象とし,若年者パネルの回答結果と比較した.
    1) 付着性測定 : 乾燥条件において,低付着性チューインガムの付着性は一般チューインガムと比較して有意に低かった.しかしながら,水中条件に見られたような,プランジャー材料間の付着性の差異(アクリルレジンでは付着性が有り,ステンレスおよび象牙で付着性は僅か)は認められなかった.
    2) チューインガム付着感のアンケート : レジン系歯科材料を用いていると思われる群,すなわち,『その他処置』群および『総義歯使用』群では,若年者パネル,高齢者パネルともに,低付着性チューインガムは一般チューインガムと比較して,顕著に付着感が低かった.また,回答全体および『金属処置』群において,若年者パネルと比較して,高齢者パネルでは2種のチューインガムの付着感の差が顕著となり,パネル間に有意差が認められた.これは,年齢による口腔乾燥度合いの差に起因するものと予想される.
    物性測定とアンケートの対応性を検討した結果,チューインガムの付着感を予想する際,若年者および健常な高齢者の場合は水中条件による測定,口腔乾燥症のある人の付着感を予想する際は乾燥条件による測定を行うことが望ましいと考えられた.また,低付着性チューインガムは口腔条件に関わらず,一般チューインガムと比較して付着感の低いガムであることが示唆された.
  • 老田 茂
    2009 年 56 巻 6 号 p. 370-372
    発行日: 2009/06/15
    公開日: 2009/07/31
    ジャーナル フリー
    未発芽小麦種子から,Z-G-G-R-MCA分解活性を指標に精製したペプチダーゼは,反応至適pHが7.5で,セリンプロテアーゼ阻害剤で阻害された.本ペプチダーゼは,アトピー性皮膚炎に関わる小麦グリアジンのIgEエピトープであるPQQPFやQQPFPを分解したが,小麦グルテニンのエピトープであるQQQPPは分解しなかった.
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