本研究は, β-グルカン量の異なる3種類の大麦粉で餃子皮を作製し, その物性, 機能性成分および糖質消化性を小麦粉で作製した餃子皮と比較することで評価した. 大麦粉を60 %含む餃子皮は, 焼成後も目立った損傷なく再現性良く作製された. 焼皮のβ-グルカン量は「ダイシモチ」>「もち絹香」>「サチホゴールデン」>小麦の順に多かった一方, TP量は, 「ダイシモチ」>「サチホゴールデン」>「もち絹香」>小麦の順に多かった. 小麦焼皮は白色を帯びた黄色であったのに対し, 大麦焼皮は褐色や茶色を示し, 特に「ダイシモチ」は黒みのある焼皮であった. 「もち絹香」および「ダイシモチ」の硬さは最も低く, 「ダイシモチ」の伸びは最も小さかった. 糖質消化率は, 小腸消化の初期においてもち絹香および小麦が急激に上昇したのに対し, 「サチホゴールデン」および「ダイシモチ」が緩やかに上昇した. eGIは, 「もち絹香」が最も高く, 「サチホゴールデン」が最も低かった. 平衡消化率はAA量 (r = -0.99, p < 0.01) およびRS量 (r = -0.98, p < 0.05) と負の相関を示した. 焼皮のβ-グルカン量は, 硬さ, 伸び, みかけの粘度および糖質消化性との間に相関関係がみられず, 間接的にこれらの性質に影響した可能性が示唆された.
本研究では, パイナップルの8週間の摂取によって, 肌トラブルが気になり便秘傾向の日本人男女の肌質と腸内環境が改善される可能性が示唆された. 特に肌質に関しては, 先行研究と同様に肌の乾燥やシミの自覚的評価が改善したことに加え, これらの効果について機器測定値による裏付けも得られた. 本研究により, パイナップル摂取による健康効果について更なる知見が得られたことから, 人々の美容や健康に貢献できる食材であることが期待される.
本研究では発酵スターター (SC) と市販酵素製剤 (CE) を用いて3種類の食塩濃度 (28 %, 25 %, 20 %) でしょっつるを製造し, 30°Cで6か月間熟成後の最終製品の品質特性を調べた. いずれの試料も色調はほぼ類似した値であった. Hmレベルはいずれの試料も28~76 ppmの範囲でSCの添加効果は見られなかった. 味覚センサー分析データの主成分分析結果から食塩濃度20 %-14-1株添加区は食塩濃度20 %-14-1株無添加区に比べてうま味 (先味と後味) が強くなった. 順位法による官能評価では同処理区は味が有意に (p < 0.05) 好まれた. 伝統的製法のしょっつるは常温で熟成に2~3年かかり, 食塩量も28 %と高いが, SCおよびCEを用いて製造したしょっつるは30 °Cで6ヶ月程度の熟成で仕上がり, 食塩濃度も28 %から20 %に低減可能で, 味も好まれることから, 新たなタイプの製品の製造の可能性が示唆された.
最近, 味噌の製造工程で発酵・熟成工程に使用される容器は, 従来の木製の桶から繊維強化プラスチック (FRP) や金属製のタンクに代わってきている. そのため, 仕込み容器の違いが味噌に与える影響を明らかにすることを目的に, 木桶およびFRP製の仕込み容器で同一原材料と原料処理および配合条件で仕込み, 製造された米味噌を用いて解析を行った. その結果, 木桶味噌とFRP味噌との差異は, 栄養成分, 有機酸および遊離アミノ酸量において若干認められたが, 味覚に関しては大きな影響を与えないことが示された. しかしながら, 香気成分では両者に大きな差が認められ, 木桶で製造された味噌の方が香気成分含量および種類ともに多かった. この要因として, 木桶味噌とFRP味噌の菌叢分布差異が影響していると示唆された.