This paper describes the mechanism behind consumer evaluations of the palatability of food. Preliminary observations leading to the quantitative analysis of palatability were made while traveling in Italy and France and studying the local food culture. The traditional food processing technologies in Italy that produce their well-known balsamic vinegars, hams, and risotto rice, provide a basis for highly palatable meals. Additionally, an evaluation method, practiced at the Bocuse d’Or in Lyon, France, showed that we use all five senses to evaluate a plate of food. These observations should be valuable for creating a structured platform for evaluating palatability based on communication between our five senses.
市販WPの加熱誘導ゲル形成性に及ぼすEt-OH前処理の効果を超音波分光分析,タンパク質の表面疎水性評価,動的粘弾性測定およびタンパク質二次構造解析を通して明らかにした.WPを異なる濃度(10%, 25%, および50%)のEt-OHを用いて前処理後,溶媒を除去したタンパク質溶液の加熱に伴う超音波速度の変化を調べたところ,ゲル形成の指標となる圧縮率の増加量,およびゲルネットワーク中へのタンパク質分子の参画度(寄与の程度)が反映される超音波減衰の周波数依存性が10% Et-OH前処理WPで顕著に大きかった.次に,タンパク質溶液の表面疎水性度を調べたところ,Et-OH濃度の上昇に伴い,タンパク質の表面疎水性が増大していることが観察された.FT-IR分析を用いたタンパク質二次構造解析から,未処理WPでは変性温度以下(60℃)の温和な熱処理により,その主要成分である β-LGのモノマー化(初期変性)が進行していたにもかかわらず,10% Et-OH前処理WPは未処理のそれよりもなお,天然状態(ダイマー状態)を保持していた.前処理による変性の程度が比較的小さいWPが最終的には,ネットワーク中に取り込まれやすく,結果的により強固な構造を有した加熱誘導ゲルを創出することが示唆された.
以上のように,10% Et-OH前処理がWPのゲル化に及ぼした影響は未処理および25% Et-OH前処理とは異なるユニークなものであった(Table 2).即ち,未処理に比べ僅かに大きく膨張した可溶性凝集体(a)がより緻密に集合し,未処理および25% Et-OH前処理に比べ,よりコンパクトに圧縮された系(b)が構築され,そのゲル中でより多くのタンパク質がゲル形成に関与していた(c).また,動的弾性率の温度依存性から観察された相転移(d)は,その開始から終了までには幅があったが,3種類の試料間では10% Et-OH前処理試料が最もシャープな転移が生じていると考察された.この現象は上記(b)において,10% Et-OH前処理試料の超音波速度の減少が,よりスティーパーであったことと関連しているものと示唆される(Table 2).
以上のことから,WPに対する希薄なEt-OH前処理は,その濃度により様々な物性発現を誘導することができる高い可能性をもつ食品加工手段であることが示唆された.
三重県の特産果実(カラ,みえ紀南4号,サマーフレッシュ,パッションフルーツ,アテモヤ)の果汁をビール副原料として用いた際,どのような香味をビールに付与できる可能性があるのか調べるため,小スケールのビール小仕込み試験を実施した.小仕込みに供した果汁添加麦汁はすべて健全にアルコール発酵が進行した.副原料由来のクエン酸やかんきつ類由来のテルペン類の香気成分はビールから検出された.果汁で検出された一般細菌は製成したビール中では検出されなかった.これはアルコールおよびホップの抗菌作用によるものと考えられる.官能評価の結果から,副原料として用いた果実の香味はビールに残存したことが示されたが,その一方で,副原料の特性を十分香味に反映させるには,それぞれの副原料に応じた添加条件の最適化が必要であることがわかった.
納豆は特有の曳糸性を大きな特徴とする日本の伝統的な発酵食品である.この糸の主成分はポリ-γ-グルタミン酸(γ-PGA)であり,発酵中に納豆菌によって生産される.納豆菌の γ-PGA生産能は,ゲノム中に存在する挿入配列ISが二成分制御系因子をコードするcomP遺伝子座に高頻度に転移することによって容易に喪失する.納豆菌のIS転移が形質転換培地で高頻度に生じることやrecA遺伝子依存的な転移が見られる納豆菌ISが存在することから,納豆菌recA遺伝子破壊株を単離して解析を行った.継代培養を繰り返すと,親株では12代継代後に91 %のコロニーが γ-PGA生産性を喪失したのに対し,recA遺伝子破壊株では γ-PGA生産性を喪失したコロニーは検出されなかった.また,comP遺伝子座への転移をPCRにて確認したところ,親株ではISの転移が確認されたが,recA遺伝子破壊株では転移は検出されなかった.更に12代継代後の菌株集団を用いて納豆を製造したところ,recA遺伝子破壊株に比べて親株の γ-PGA生産量が1/10未満に低下していた.以上のことから,recA遺伝子破壊は納豆製造における曳糸性を安定化させる技術として有用であると考えられた.
製造工程が異なる2種のかつお節(本枯節と荒節)を用いて,各々から普通肉と血合肉を採取し,含有されるエキス成分の組成をもとめた.その結果,遊離アミノ酸ではいずれの節,肉にも共通してタウリン,ヒスチジンおよびアンセリンが比較的多いことがわかった.これらの中でタウリンは本枯節で血合肉よりも普通肉の方に多いこと,ヒスチジンとアンセリンはどちらの節でも普通肉に多いことなどがわかったが,節間には著しい相違は見られなかった.結合アミノ酸にも多くの種類が認められたが,遊離アミノ酸に見られるような著しい含量の相違は検出されなかった.核酸関連物質の中ではイノシン酸とイノシンの含量が多く,前者はどちらの節でも血合肉よりも普通肉に多かった.一方,後者では肉間の差異は認められなかった.このような血合肉よりも普通肉に多い傾向はクレアチン,クレアチニン,乳酸,水分,エキス窒素などの含量についても認められた.また,グルタミン酸とイノシン酸の含量から計算したうま味の強度はどちらの節でも血合肉よりも普通肉の方が大きいことがわかったが,荒節と本枯節の間で顕著な差異を見いだすことはできなかった.