日本食品科学工学会誌
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55 巻, 6 号
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総説
報文
  • 木下 幹朗, 柚木 恵太, 得字 圭彦, 川原 美香, 大庭 潔, 弘中 和憲, 大西 正男
    2008 年 55 巻 6 号 p. 270-275
    発行日: 2008/06/15
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    ナガイモのガンに対する機能性を探索する目的で,1,2-ジメチルヒドラジン投与マウスにおける大腸腺腫(ACF)発症に与える食餌性ナガイモ粉末の効果を検証した.ナガイモ粉末をAIN-93G標準飼料のコーンスターチ部分に100%または50%置き換えて投与したところ,大腸腺腫の発症が有意に抑制された.また,加熱および非加熱の生ナガイモ粉末ともに同様の効果が認められた.DNAマイクロアレイを用いて大腸での遺伝子の異同を調べたところ,ナガイモ投与群ではアポトーシスを誘導する遺伝子群の増加が認められた.
  • 佐川 敦子, 森下 真理子, 森高 初惠
    2008 年 55 巻 6 号 p. 276-286
    発行日: 2008/06/15
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    寒天ゲルを分散したペーストの種類による力学特性と飲み込み特性の相違を検討する目的でキサンタンガム,グアーガム,澱粉,水を分散媒として用いて実験を行い,以下の結果を得た.
    (1)キサンタンガムペーストでは他のペーストよりも硬さは低く,凝集性は高く,硬さ,凝集性および食塊の最大移動速度は分散媒の添加割合および咀嚼回数の影響を受けず,添加の効果は4種類のペーストの中で最も高かった.
    (2)グアーガムペーストでは咀嚼回数の増加に伴い,硬さと貯蔵弾性率は低下したが,付着性が大きいという特徴をもち,食塊の最大移動速度は咀嚼回数の影響を受けにくかった.
    (3)澱粉ペーストでは咀嚼回数の増加に伴い,貯蔵弾性率は低下したが,食塊の最大移動速度は反対に速く,寒天ゲルへの添加効果は弱かった.
    (4) 水では食塊の最大移動速度は速く,硬さは咀嚼後でも他のペーストを添加した試料より高い値を示し,添加効果は最も小さかった.
  • 章 超, 倉田 理恵, 奥野 博紀, 高瀬 良和, 吉元 誠
    2008 年 55 巻 6 号 p. 287-292
    発行日: 2008/06/15
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    サツマイモ焼酎粕の有効利用の一環として,サツマイモ焼酎粕とサツマイモ焼酎粕パンの成分特性について検討した.
    (1)サツマイモ焼酎粕固液分離液には栄養成分および機能性成分が豊富に含まれている.
    (2)サツマイモ焼酎粕パンにはミネラル,ビタミン,γ-アミノ酪酸,クエン酸,ポリフェノール等の成分が豊富に含まれている.
    (3)サツマイモ焼酎粕パンはコントロールパンよりラジカル消去能が高い.
    (4) サツマイモ焼酎粕固液分離液を添加したサツマイモ焼酎粕パンは食味,香り,色調が良く,硬くなりにくい.
    以上のことから,焼酎粕の成分特性を活かした高付加価値,良食味のサツマイモ焼酎粕パンの開発を通して,サツマイモ焼酎粕固液分離液が,食品素材として利用可能なことが明らかとなった.
技術論文
  • 柚木崎 千鶴子, 酒井 美穂, 小坂 妙子, 堂園 眞澄, 窄野 昌信, 福田 亘博
    2008 年 55 巻 6 号 p. 293-298
    発行日: 2008/06/15
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    レモンバーム葉のようなハーブ類の乾燥は,風乾によることが多いが,5~10日を要し2)天候にも左右されるため,機械乾燥も行われている.本研究では,レモンバーム葉のラジカル消去活性を保持するための最適な乾燥条件を見出すことを目的として,45,55,65℃で熱風乾燥試験を行なった.各温度の乾燥粉末から80%エタノール抽出液を調製し,DPPHラジカル消去活性,ポリフェノール含量およびロスマリン酸含量を測定した結果,いずれも45℃乾燥粉末で最も高い値を示した.また,乾燥粉末からの熱水抽出液も,DPPHラジカル消去活性を有しており,ロスマリン酸を含むポリフェノールが含まれることが確認された.乾燥温度別では45℃乾燥品が最も高いラジカル消去活性を示すことが明らかとなった.
    以上のことから,高いラジカル消去活性を保持するためには,レモンバームをハーブティーとして加工する際の乾燥温度として,45℃が適切であることが示唆された.
  • 古田 正範, 黒田 理恵子, 塚谷 忠之, 樋口 智子, 廣藤 祐史, 宮川 浩, 牟田 誠一, 州崎 収
    2008 年 55 巻 6 号 p. 299-303
    発行日: 2008/06/15
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    GABAは血圧が高めの人(軽症高血圧や正常高値の人)が毎日10mgの飲食を継続すれば血圧降下の効用があると言われている(特定保健用食品PR等).本研究の大豆煮汁からは選定した乳酸菌株の使用により3.5mM(36mg/100ml)のGABAを乳酸発酵により生成でき,グルタミン酸の添加(今回0.05~0.1%(w/v)で試験)で更に多くのGABAを生成(46~79mg/100ml)できた.また煮汁そのものに大豆浸漬により生成したと考えられるGABAが1.7~1.9mM(17~19mg/100ml)含まれていた.更に大豆煮汁に高いACE阻害活性,DPPHラジカル消去能があり,α-グルコシダーゼやα-アミラーゼ阻害活性の機能性もあること,乳酸発酵後もその機能を有していること等を明らかにした.機能性食品素材として利用が大いに期待できるので実用をめざし検討を継続したい.
研究ノート
  • 嘉手苅 崇, 當山 洋, 安元 健
    2008 年 55 巻 6 号 p. 304-308
    発行日: 2008/06/15
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    生活習慣病の予防および改善作用が期待されるカロテノイド系新規食品素材であるフコキサンチン(FX)の安全性評価を目的に精製FX(ワカメ由来,純度95%以上)のラット28日反復経口投与毒性試験を行った.その結果,精製FXについて明らかな毒性は認められなかったが,高投与量条件(10及び50mg/kg/day)では,血中総コレステロールおよびHDL-Cの有意な上昇が認められた.
  • 坂ノ下 典正, 桜井 孝治, 中村 泰輔, 柳沢 幸江
    2008 年 55 巻 6 号 p. 309-316
    発行日: 2008/06/15
    公開日: 2008/07/31
    ジャーナル フリー
    レジン系補綴材料に低付着性となるよう設計されたチューインガム(低付着性チューインガム)と一般チューインガムを調製し,2種類のチューインガムについて,歯科処置に用いられる材料との付着性を,機器測定およびアンケート調査の両側面より比較検討した.
    (1)付着性測定 : 歯の処置に用いられるアクリルレジン等の樹脂系材料,金属合金系材料および天然歯を想定し,各材料の組成モデルとして,アクリルレジン製,ステンレス製および象牙製のプランジャーを調製した.これらのプランジャーを用い,機器測定による物性評価を行い,材料毎のチューインガム付着性を比較した.測定の結果,アクリルレジンを用いた場合,低付着性チューインガムは一般チューインガムの1/5の付着性であった.一方,ステンレスおよび象牙を用いた場合,2種のチューインガムの付着性は同様に低かった.
    (2)チューインガム付着感のアンケート : 歯の処置歴および2種のチューインガム付着感のアンケート調査を行った結果,低付着性チューインガムは一般チューインガムと比較して,官能的に低付着であることが示された.
    付着性測定結果とアンケートの調査結果が対応していることより,本研究で用いた付着性評価方法は,チューインガム咀嚼時の付着感を評価しうるものであることが示唆された.また,本研究で用いた低付着性チューインガムは,歯の処置を受けた人でも過剰な付着感無しに喫食できるチューインガムであることが示唆された.
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