日本食品科学工学会誌
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59 巻, 1 号
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総説
  • (平成23年度日本食品科学工学会技術賞)
    小田 有二, 山内 宏昭, 田村 雅彦
    2012 年 59 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    Eight yeast strains were isolated from samples collected in Hokkaido after enrichment culture with a high concentration of sucrose. Among them, strain AK 46, which was derived from dough containing fermented cherry fruits was identified as Saccharomyces cerevisiae. The nucleotide sequence of the rDNA spacer region from this strain was identical to those from yeasts used for the production of whisky, wine, and bread. Strain S. cerevisiae AK 46 carried only only SUC2, which is one of multiple genes that encodes invertase, in contrast to the other baking strains, and its sequences were diverged from those of the corresponding gene found in the other strains. In a comparison of six baking strains, strain AK 46 showed lower leavening ability in dough with and without the addition of 5% sucrose by weight of flour but showed high leavening ability in sweet dough containing 30% sucrose. The activities of enzymes α-glucosidase and invertase, which are related to dough fermentation, were lower than those in the other strains. A baking test showed that strain AK 46 was suitable for breadmaking by various methods. Cells of strain AK 46 were propagated industrially and used for the commercial production of dry yeast called “Tokachino”, which is named for the region from which it was isolated.
報文
  • 松尾 啓史, 林 宣之, 氏原 ともみ, 藤田 進, 龍野 利宏, 御手洗 正文, 槐島 芳徳, 豊満 幸雄, 木下 統, 谷口 知博
    2012 年 59 巻 1 号 p. 6-16
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    釜炒り茶と煎茶の渋味について味覚センサーを用いて比較を行ったところ,釜炒り茶は煎茶よりも渋味が少ないこと,煎茶では蒸熱時間が長くなると渋味が緩和されることが明らかとなった.また味覚センサーでの渋味推定値を目的変数,浸出液のカテキンおよび水溶性ペクチン含有量を説明変数として重回帰分析を行った結果,渋味は浸出液のカテキンおよび水溶性ペクチン含有量で説明でき,カテキン含有量が多いほど,水溶性ペクチン含有量が少ないほど渋味が強くなることが判明した.浸出液のカテキンおよび水溶性ペクチン含有量は,釜炒り茶よりも煎茶で多く,水溶性ペクチンの溶出割合は,釜炒り茶よりも煎茶で高い結果となったが,これは茶葉に対して釜炒り茶の製茶工程では,煎茶ほど揉圧が加えられないためと考えられた.また茶葉中の水溶性ペクチンは,蒸熱時間が長くなると増加し,恒率乾燥が保たれる殺青以降の工程では明確な増加がみられないことから,茶葉が90~100℃程度に加熱される工程で増加するものと推察された.
  • 小善 圭一, 森 真由美, 原田 恭行, 横井 健二, 里見 正隆, 舩津 保浩
    2012 年 59 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    市販の魚醤油に,一定量のベントナイトを添加することで魚醤油中のHm付着·吸着を試みた.また,魚醤油モデル溶液を調製し,温度,pHおよび塩濃度がベントナイトのHm吸着能に及ぼす影響を検討し,ベントナイトによる魚醤油中のHm付着·吸着の特性についての知見を得た.以下に結果を示す.
    (1)市販魚醤油に対し,ベントナイト添加量が0.1∼30% (w/v)の範囲では添加量の増加に伴って,Hm付着·吸着量も増加し,高い相関関係が認められた.
    (2)市販魚醤油中でのHm付着·吸着量はベントナイト添加直後(0.5分)から速やかに上昇するが,吸着平衡に達するには3時間程度を要した.
    (3)魚醤油モデル溶液において,Hm付着·吸着量は,低温および低pH側で高く,高温および高pH条件下では低下した.一方,NaCl濃度はHm付着·吸着量に有意な影響を及ぼさなかった.
  • 小野寺 允, 深江 亮平, 江口 智美, 西成 勝好, 吉村 美紀
    2012 年 59 巻 1 号 p. 22-33
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,平均分子量および分布状態の異なる3種類のテラピア鱗由来コラーゲンペプチドを用いてそのゾルの特性とコラーゲンペプチドを寒天に添加したときの寒天ゲルの力学的および熱的特性に及ぼす影響について検討を行った.またテラピア鱗由来コラーゲンペプチドと豚皮由来コラーゲンペプチド添加の影響9)との比較·検討を行った.
     CPは多分散性を示した.CP1000は7.6×102付近と2.3×102付近に2つの大きなピーク,CP5000は5.0×103付近に最も大きなピーク,2.0×103と1.0×103付近に小さなピークが観察された.CP10000は,1.3×104付近に大きなピークが観察され,それ以下の低分子量画分は少なかった.
     Mw=7.4×102のCPを寒天に添加した場合,10% (w/w)以上濃度で破断応力·初期弾性率が増加し,離水が促進された.Mw=4.5×103Mw=1.0×104のCP添加では,平均分子量と濃度の増加に伴い破断応力·初期弾性率は減少し,離水が抑制され,寒天1mgあたりの融解やゲル化に伴うエンタルピーが減少し,CPが寒天の架橋構造の形成を著しく阻害したと推察される.これらの結果から,CPが寒天ゲルの特性に影響を及ぼすかどうかは平均分子量および分布状態に影響し,Mw=4.5×103Mw=1.0×104のCPの中でも高分子量側に分布している分子画分が影響を及ぼしたと推察された.
     テラピア鱗由来CPと豚皮由来CPとの結果を比較すると,CPゾルの損失剛性率と構造変化に伴うエンタルピーの大きさやAGゲルの破断応力に及ぼす影響は,平均分子量および分布状態とアミノ酸組成に影響を受けたことが推察された.
技術論文
  • 宮下 留美子, 奈良 昌代, 木下 幹朗, 間 和彦, 中塚 進一, 落合 潔, 大西 正男
    2012 年 59 巻 1 号 p. 34-39
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    本研究では,美容分野へのニーズと共に,健康食品や一般食品,飲料等に広く利用,販売されるようになった食品素材としての植物由来グルコシルセラミド(GlcCer)について,最近市販された標準試薬品(トウモロコシおよびコメからそれぞれ分離された精製GlcCer)を用い,既報の蒸発光散乱検出器付き高速液体クロマトグラフィー(HPLC-ELSD )分析の条件下での定量分析法の単一試験室による妥当性確認を行った.その結果,今回評価したパラメータ(選択性,直線性,真度,併行精度および室内再現精度)においてはいずれも良好な結果が得られた.このように,市販の機能性食品素材中のGlcCerをHPLC-ELSD法で定量分析することについて,コムギで開発された既報の分析条件プロトコルは,異なるマトリックスにおいても適用が可能であることが確認された.また,植物GlcCerには分子種多様性が見られるが,既報および本研究の結果から,測定する試料ごとに,マトリックスと一致する標準品を用いて検量線を作成することで,本法は他のマトリックスへの拡張が可能であると考えられた.
  • 永田 雅靖
    2012 年 59 巻 1 号 p. 40-44
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    4∼5月は寒玉キャベツの端境期であり供給が不足する.そこで,2月に収穫した寒玉キャベツを2か月間貯蔵した場合と,4月まで圃場で栽培を続けた場合の品質特性について検討した.2月に収穫して2か月間包装貯蔵したキャベツの貯蔵歩留りは約65%で,ビタミンCがやや減少するものの,糖度は高く保たれた.一方,圃場で栽培を2か月間続けた場合には,重量が約1.5倍になったが,ビタミンCと糖度が半減した.さらにカットキャベツを調製して褐変程度を比較したところ,貯蔵キャベツに比べて4月まで栽培を続けたキャベツは,明らかに褐変しやすかった.
研究ノート
  • 石丸 幹二, 古賀 咲江, 高田 真菜美
    2012 年 59 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2012/01/15
    公開日: 2012/02/29
    ジャーナル フリー
    微生物制御発酵茶は,近年特に日本において開発,商品化されている新しいタイプの発酵茶である.単一の微生物を用いて発酵処理を行うのが特徴であるが,特にAspergillusで発酵処理した茶から,新しいカテキン代謝物であるteadenol類が発見され,その化学構造の新規性と抗メタボリックシンドローム活性が注目されている.今回,現在日本で市販されているAspergillusで発酵処理した5種の微生物制御発酵茶についてHPLC分析をおこなった.分析したすべての茶においてteadenol類が含まれていたが,発酵条件等の違いによる成分含量の差異も認められた.また,茶葉からのteadenol類の調製に関する実験では,比較的安全·安価な試薬類を用いたカラムクロマトグラフィーによりteadenol類を効率的に単離することができた.今後も,茶由来の新規機能性成分の生産とカテキン代謝機構の解明に利用される新しい微生物制御発酵茶の開発が期待される.
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