加熱温度と大豆粉濃度およびGDL濃度が大豆粉水分散液のゲル化過程に及ぼす影響について動的粘弾性測定,DSC測定により検討した.
1.加熱温度の影響
加熱及び未加熱大豆粉水分散液は,加熱温度(40∼90°C)が高いほどゲル化開始時間t
0は短くなり,ゲル化速度定数kが高く,ゲル化が速く進んだ.これらの結果は,通常の豆乳および7Sグロブリンのゲル化過程の温度依存性と同様の傾向を示した.加熱大豆粉水分散液は未加熱より,kは大きく,損失正接tanδの最小値は低い値を示した.未加熱大豆粉水分散液では,加熱温度が高いほど貯蔵剛性率G'が高くなり,80°Cあるいは90°C加熱で弱いゲルの特徴を示した.加熱大豆粉水分散液では,70°CにおけるG'が最高値を示し,次に80°C,90°Cであり,真のゲルの特徴を示した.DSC曲線より,未加熱大豆粉水分散液は70°C,90°C付近に2つの吸熱ピークが見られたが,加熱大豆粉水分散液ではピークがみられなかった.加熱大豆粉水分散液では90°Cの加熱で蛋白質の球状状態がほぐれて蛋白分子間での相互作用が起こりやすい状態になっており,GDL添加の80°Cあるいは90°C加熱により強いゲルが形成したことが推察された.
2.大豆粉濃度の影響
大豆粉濃度(11∼17%)が高いほど,t
0は短く,kは大きく,ゲル化が進んだ点でのG'値は高く,ゲル化は速く進み,強いゲルとなった.通常の豆腐において,豆乳濃度が高いほど強いゲルになることが報告されており,同様の結果を得た.7s成分,11s成分のkについては,蛋白質濃度(1∼6%)が増加するにつれ,減少する報告があるが,本実験では異なる結果を得た.
3.GDL濃度の影響
GDL濃度が高い方がt
0は短く,kは大きく,ゲル化が進んだ時のG'は高い傾向を示した.DSC曲線より,GDL濃度が高くなるほど吸熱ピーク温度は高温側にシフトし,熱安定性が増加した.力学的挙動より,GDL存在下での加熱大豆粉水分散液の凝固において,GDL濃度が高い方がより強いゲルが形成されることが推察された.
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