本研究では二次醪pHが芋焼酎の発酵経過や香気成分,酒質に与える影響について調べた。その結果,対照であるpH4.3の醪と比べて醪pHが3.3,3.6および5.4では,発酵の立ち上がりが若干遅れたものの,最終的にはほぼ同様の発酵経過となった。熟成醪の酵母総菌数と生菌率は,pHが3.3と3.6の醪で低い値であった。熟成醪のアルコール度数は,pHが4.5より低くなる醪ほど低い値となり,特にpH3.3の醪はアルコール収得量が216.6mL/kgと最も低かった。揮発酸度は,醪pHが低くなるほど高くなった。
GC-MS分析の結果,高級アルコールと酢酸エステルは醪pHが高くなるに従い緩やかに増加する傾向が認められた。β-ダマセノンとアルデヒドは醪pHが高くなると減少する傾向にあった。テルペンは,醪pHの影響を明らかに受けている成分として,α-テルピネオール,リナロール,ネロリドール,ネロールおよびネロルオキサイドがあった。ローズオキサイドとシトロネロールは, pHが高くなるに従い緩やかに増加する傾向が認められた.官能評価の結果,低pHほど「華やか」,「柑橘香」などと評価され,pHが高くなるほど「蒸し芋臭」や「黄麹様」などと評価された。
本研究により,醪pHを調整することで酒質の多様化を図ることが期待できることが明らかとなった。
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