ブレンドによって試作したモデル食酢を用い,すし用調味酢の減塩(半減)に,調味酢中で「酢酸:グルコン酸=約1:1(モル比)」とすることが有効であると明らかとなった。次に,エタノールが全て酢酸に変換された酢酸発酵終了後も培養を継続する新製法を採用し,原料組成を工夫し,
Komagataeibacter xylinusを用いることで,この調味酢のベースとなる醸造酢(米酢)を実際に試作することに成功した。得られた醸造酢の組成は,2.2%(V/V)酢酸,7.9%(W/V)グルコン酸,9.8%(W/V)グルコースであり,エタノールは非検出で酸度は4.9%であった。この試作米酢を用いたすし酢を調製し,官能評価を行ったところ,食塩を半減させたすし飯であっても,市販米酢を用いた食塩通常量使用のすし飯と比較して,美味さの点で有意差がなかった。この美味しさの維持は,グルコン酸とナトリウムイオンが共存した際に発現する緩衝能に起因することが示唆された。活性炭と分画分子量3万の膜ろ過の併用で,野生酢酸菌の増殖や保管中の不溶物発生が市販米酢並みに抑制できたことに加えて,活性炭処理に起因する淡色化の問題は熟成によって回避できた。
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