日本醸造協会誌
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107 巻, 7 号
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解説
研究
  • 島岡 芳和, 金内 誠, 笠原 紳, 吉澤 淑
    2012 年107 巻7 号 p. 517-528
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/12/12
    ジャーナル フリー
    1)亜硝酸消失に関わる微生物の探索を行うため,酒造場3場より恵与された麹を用いての亜硝酸消失試験を行った。
    2)サンプル麹2種は,亜硝酸の消失が見られた。さらに亜硝酸消失は,麹に付着している微生物が関与していた。
    3)麹から4タイプの酵母と48株の乳酸菌を分離した。Type 1の酵母は1mMの亜硝酸イオンを98%消失させた。
    4)Type 1の酵母は細胞の形は卵型で,増殖形態は多極出芽で,偽菌糸形成はなく,レモン型の内性胞子を形成した。資化性および発酵性と26S rRNAをコードするDNAの塩基配列からPichia angustaと同定し,今後Pichia angusta Y-11393株とし,実験に供した。
    5)Pichia angusta Y-11393株は亜硝酸を酸化させ,硝酸へと変換することで,亜硝酸を除去していた。
    6)本株は1~5mM亜硝酸までは良好に増殖した。しかし,亜硝酸濃度10mM以上では,増殖阻害がみられた。このとき,1~5mM亜硝酸は2日目以降,良好に分解され,4日目の亜硝酸残存率が6~16%であった。実際の生?系の亜硝酸含有率は0.3mMで,本株で十分分解できると考えられた。
    7)本株は,エタノール含有と酸性条件では,生育できなかった。ゆえに酒母中の亜硝酸消失に関係し,その後の醸造工程に影響するものではないと推察された。
    8)モデル生?系でのL.sakeiと本株を混合培養した結果,亜硝酸耐性のない乳酸菌は,本株の酵母によって亜硝酸が除去され,酸菌が生育できた。その後,乳酸菌が生産する乳酸等により,本株の死滅率は増加した。
    9)本株は105~107(cells/mL)オーダーの対数増殖期中期~後期の少ない菌体でも亜硝酸消去能を有することが明らかとなった。
  • 金内 誠, 下山田 真, 島岡 芳和, 吉澤 淑
    2012 年107 巻7 号 p. 529-537
    発行日: 2012年
    公開日: 2017/12/12
    ジャーナル フリー
    1.Pichia angusta Y-11393のnitrite oxidaseの酵素学的性質を検討するために精製を試みた。
    2.本酵素は菌体内酵素であり,誘導酵素であった。また,活性は対数増殖期前期(1日目)で最大となった。
    3.50~60%飽和濃度の硫酸アンモニアで塩析し,各種クロマトグラフィーを行い精製した。その結果,本酵素は54.0 kDaの単量体のタンパク質であった。
    4.本酵素の至適pHは5.0で,至適温度は50℃であった。pH安定性は高く,pH 3.0でも,70%以上の活性を残存していた。また,15~50℃において熱に対し安定であった。
    5.鉄イオンやヨードアセトアミド,水銀イオン,N-ethylmaleimide,Ditiothreitolで阻害されることにより活性部位にシステインが存在することが示唆された。
    6.本酵素は,亜硝酸よりも酸素に対してのミカエリス・メンテン定数が小さく,酸素に対して親和性が強かった。
    7.本酵素は酵素化学的性質上,これまでの報告とは異なるnitrite oxidaseあり,亜硝酸を消失する生?製造にとって重要な酵素であることが推察された。
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