清酒麹菌HL-1012(wt)より,カルボキシペプチダーゼOをコードする
ocpOの欠失株(⊿
ocpO)を取得し,その醸造特性について検討した。
(1)⊿
ocpO株を用い調製した米麹のACP活性は親株の約35%に大きく低減していたが,その他の主要活性は親株と同レベルであった。このことからカルボキシペプチダーゼOのACP活性への寄与率は非常に大きいと考えられた。基質を変えてACP活性を測定した結果,⊿
ocpO株は親株にとの間で見かけ上の基質特異性の変化が見られた。
(2)小仕込試験を行った結果,⊿
ocpO株の発酵経過は親株と変わらず,一般分析値においてはアミノ酸度が1割程度低いこと以外,大きな差はなかった。アミノ酸組成分析においては大半のアミノ酸が減少していたが,L-アルギニンは20-25%ほど増加していた。発酵経過に差がなかったことから,ACPの見かけの基質特異性の変化が影響していることが示唆された。⊿
ocpO株の小仕込み酒を味覚センサーで評価した結果,親株に比べ,やや酸味が強くなり,若干旨味が低下する傾向が見られた。これよりカルボキシペプチダーゼOが欠失することで味のバランスが変動すると考えられた。
(3)米麹のACP活性が大きく低下したにも関わらず,製成酒のアミノ酸度はやや減少するにとどまったことから,他のACPアイソザイム等が
ocpOの欠失を補うべく清酒醪中で働いていると考えられた。
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