モルトウイスキー製造においてウイスキー酵母と同時に使用されるビール酵母の働きに関して, 醪の番気成分の点から検討し, 以下の知見を得た。
1. ビール酵母を混合して用いると, ウイスキー酵母単独の場合に比べて脂肪酸エチルエステル (Ethyl caproate, Ethylcaprylate, Ethyl caprate, Ethyllaurate) が増加した。麦汁中のリノール酸含量が増加するとウィスキー酵母単独ではエステル生成量は減少するが, ビール酵母との混合系ではエステル生成量の減少はみられなかった。これは酵母菌株の麦汁中のリノール酸の取り込み能の差に関連しているものと考えられた。
2. ウイスキー酵母単独で初発酵母数を多くすると発酵終了醪中の乳酸菌数は減少するが, ビール酵母を混合使用すると乳酸菌数は増加し醪に特徴的な甘い香りが生じた。ビール酵母は醪温度の影響によりウイスキー酵母に比べ速やかに死滅し, 乳酸菌の増殖を促進することが認められた。
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