リンゴ酸高生産性清酒酵母の育種を目的として, K-1001一倍体株のCYH耐性より得られたリンゴ酸高生産性酵母と, K-7との戻し交配によってコハク酸生産性の少ないリンゴ酸高生産性酵母の育種を行った。
1. 育種株Dp-25-77は総酸度の多いリンゴ酸高生産性株で, 全有機酸量に占めるリンゴ酸の割合は70%てあった。また, K-7と同程度の総酸度を示す造成株Dp-30-26およびDp-25-42の全有機酸生産量に占めるリンゴ酸の割含は50-65%であった。いずれもコハク酸生産の少ない株であった。
2. 育種株の小仕込試験の結果, 発酵経過はK-7より若干遅れる傾向にあったが, 官能的に芳香の高いさわやかな酸味に特徴のある清酒が得られた。
3. Bacto Yeast Carb On Baseの窒素源にグリシン, スレオロンおよびプロリンをそれぞれ用いた平板培地ての生育性およびTTC染色性より, 各育種酵母間の識別や各種協会酵母との識別が容易にできた。
本報告は平成5年度日本醸造学会で発表した。
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