麹菌の生産する抗菌性物質・Yeastcidinの特性を利用し, 窒素源をアスパラギンとした合成培地にYeastcldln粗物質を250mg/
l添加した合成培地を用いた集積培養法にて, 土壤からの清酒酵母の選択分離について検討した。
酒造蔵周辺の土壤4点より, Yeastcldin添加, 無添加合成培地にて各10株ずつの計40株の
Saccharomyces属を分離し, その性質を調べたところ, Yeastcldin添加合成培地にて分離した酵母は全て清酒酵母タイプであったが, Yeastcidin無添加合成培地にて分離した酵母は, 29株が清酒酵母タイプであり, 11株は焼酎酵母タイプであった。
また, ワイン工場周辺の土壤3点について, Yeastcidin添加合成培地とぶどう果汁培地にてそれぞれ集積培養を行ない各10株ずつの計30株の
Saccharomyces属を分離した。Yeastcidin添加合成培地にて分離した酵母は, 全て清酒酵母タイプであったが, ぶどう果汁培地にて分離した酵母は全て清酒酵母以外の他の
Saccharomyces cerevisiaeであった。さらにそれぞれ分離した酵母を清酒もろみにて発酵試験を行なったところ, Yeastcidin添加合成培地より分離した酵母は, ボーメの切れもよく, アルコールの生成も15.7%から16.8%と対照のK-7酵母と同程度かそれ以上であった。
さらに有用清酒酵母の分離を目的に, 花からの清酒酵母タイプの酵母を分離したところ, 20点中14点の花より
Saccharomyces属の酵母を分離し, その内3点の花より泡なしの清酒酵母タイプ酵母を, 10点の花より高泡の清酒酵母タイプの酵母を, 1点の花よりYeastcidinに対する抵抗性を有する清酒酵母以外の他の
Saccharomyces属の酵母を分離した。
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