シグマ社フィターゼ剤を添加した酵素剤仕込みにおいて発酵抑制が生じる原因について調べた。
1. α-アミラーゼ, グルコアミラーゼの酵素反応, 発酵及び酵母の増殖に対するシグマ社フィターゼ剤の影響をそれぞれ検討したところ, シグマ社フィターゼ剤は酵母の増殖阻害を示した。
2. 各種クロマトグラフィーを用いてシグマ社フィターゼ剤中の酵母増殖阻害物質の精製を行い, SDSポリアクリルアミド電気泳動的に単一なバンドを示す精製タンパク質を得た
3. プロテインシーケンサーを用いて精製タンパク質のN末端アミノ酸配列を調べ, データベースでホモロジー検索を行ったところ
Alsp.nigerのグルコースオキシダーゼと高いホモロジーが見出された。
4. 精製したグルコースオキシダーゼ及び
Asp. niger由来のグルコースオキシダーゼによる酵母の増殖に対する影響を調べたところ明らかに増殖阻害が認められた。
5. 培養液中の過酸化水素濃度を調べたところ培養初期から過酸化水素が増加した後, 徐々に減少し, 濃度が低下した段階で酵母の増殖が始まることが観察された。この結果から, 酵母の増殖阻害の原因はグルコースオキシダーゼの酵素反応により生成される過酸化水素の影響と推定された。
6.精製したグルコースオキシダーゼ及び
Asp. niger由来のグルコースオキシダーゼを用いた小仕込試験の結果, 明かに発酵抑制が観察された。
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