AP高生産黒麴菌の取得を目的として重イオンビームを用いた変異育種と育種した黒麴菌株を用いた芋焼酎の小仕込み試験を行った。得られた結果を以下に要約する。
1)黒麴菌
A. luchuensis J7-2を親株として重イオンビームによる変異導入およびカゼインプレートを用いたスクリーニングにより,ハロー形成能が高かったAP高生産株APH-1を選抜した。
2)APH-1は親株であるJ7-2と比較して乾燥麴あたりのAP活性が4.5倍,ACP活性が2.3倍と高かったが,BGL活性は1/4と低かった。
3)APH-1を用いて芋焼酎の小仕込み試験を行った結果,醪のアミノ酸度がJ7-2よりも高くなり,焼酎中の高級アルコールや酢酸イソアミルの濃度が低くなった。
4)官能試験の結果,香味に大きな違いはなかったが,香気成分の分析値が異なることや,アルコール収得量が増加することからAPを指標として麴菌の育種を行うことで酒質の多様化や原料利用率の向上が期待される。
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