食物アレルギー診療ガイドライン2021が発刊され早くも2年が経過し,“食物抗原の摂取”と“湿疹への抗炎症治療”による食物アレルギー発症予防について重要な研究が次々と報告されている.鶏卵やピーナッツの早期摂取開始は複数のランダム化比較試験やシステマティックレビュー・メタ解析で有効性が示され,実臨床においても一定の効果が報告されるようになってきた.その一方で,乳児の食物アレルギーによるアナフィラキシーが増加しているという報告もあり,より安全で実用的な抗原摂取方法の考案が求められる.また,早期に抗原の摂取を開始しても,摂取を中止した場合にはむしろ発症リスクとなる可能性が指摘されている.近年,乳児期早期から湿疹への抗炎症治療を積極的に行うことで,その後の鶏卵アレルギー発症予防効果を実証した介入研究が報告された.食物抗原の早期摂取と定期的な摂取の継続,さらに積極的な湿疹の治療を並行することで,安全かつ効果的に食物アレルギーの発症を予防できると考える.
【背景】2022年「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」が閣議決定され,スタートアップ等の推進・環境整備が始まった中,アレルギー領域の国内外のスタートアップ投資状況の調査は喫緊の課題と言える.
【方法】2010-2021年までの日米欧のアレルギー関連スタートアップ156社を対象に,データベースやVCウェブサイトから投資情報等を集計した.
【結果】投資額は7.2億USDで,米国:欧州:日本の比率は20:6:1であった.米国は2016-2018年をピークに鈍化する一方,日欧は増加傾向だった.米国はアトピー性皮膚炎・食物アレルギーに対するバイオ医薬品,欧州は喘息アプリ,日本はヘルスケアアプリ・疾患横断型等への投資が多く見られた.
【考察・結語】アレルギー領域の国内投資環境整備は今後の発展が望まれるものの,米国や欧州が先行している.日本のスタートアップ増加や資金調達の限界を考慮すると,米国等からの資金調達の可能性が検討される.アレルギー研究開発におけるスタートアップの戦略的活性化に寄与する結果と期待される.
【背景・目的】薬剤師のアナフィラキシー(以下,An)とエピペンに関する知識と指導経験が不足していることを我々は先に報告した.Anの際に患者は迅速かつ確実にエピペンを使用する必要があり,それらを教育・指導する薬局薬剤師の実態についての全国規模での報告はない.
【方法】エピペンの処方箋を扱った経験のある薬局に勤務する薬剤師を対象にアンケート調査を実施した.患者への説明・指導に関する回答結果と薬剤師の背景因子との関連性を調査した.
【結果】視覚情報やデモンストレーションを用いた指導を行った薬剤師の割合は十分とは言えず,その割合は2回目以降の指導でより低下していた.患者の理解の客観的な確認も不足していた.患者にきめ細かな指導を行っている薬剤師の背景因子として,自己研鑽や薬剤説明会への参加が重要であることが示された.
【考察】An患者の長期管理にはエピペン手技の確実な修得が重要であり,薬剤師の指導は重要な役割を果たしている.薬剤師向けの自己研鑽や教育機会の充実によって,薬局で適切に患者指導できるようサポートする体制の構築が期待される.
症例は7歳女児.乳児期よりアトピー性皮膚炎の既往あり.祖父がエゴマを栽培しており,家族は日常的にエゴマ料理を摂食していたが,本児は好まず全く摂取していなかった.小学校の学校給食で初めてエゴマを摂食し,嘔吐,顔面腫脹,口腔内違和感が出現した.当院にてオープン法で経口負荷試験を行ったところ陽性となり,エゴマ粉末によるSkin Prick Testも陽性であった.さらにアレルゲン解析のため,エゴマのタンパク質を抽出してイムノブロッティングにて患者血清と反応させたところ,26kDa付近に陽性バンドが検出され,エゴマアレルゲンと推定された.本症例は家庭環境から経皮感作によってエゴマアレルギーを発症した可能性も考えられた.日本でのエゴマアレルゲン解析は初めてであり,貴重な症例と考える.