冠状動脈痩を伴わない成人の冠状動脈瘤は,比較的まれな疾患と考えられていたが,冠状動脈造影法の普及により,生前診断報告が増加しており、その予後の悪さから臨床的重要性が指摘されている.しかし,本邦では,MCLS後遺症としての乳幼児の冠状動脈瘤は多くの生前診断が報告されているが,成人での生前診断報告は,炎症性と考えられる3例を数えるにすぎない.今回,われわれは,心内膜下梗塞をきたし,冠状動脈造影の結果,動脈硬化性と考えられる多発性冠状動脈瘤の1例を経験した.当施設での冠状動脈瘤症例は,350例の成人冠状動脈造影に対して,今回の症例に加え,血管炎によると考えられる1例を経験しているので,その頻度はO.6%となり,諸外国での頻度に比して決して少なくはない.この疾患の予後の悪さより考えて,早期発見は重要であり,そのためには冠状動脈造影の積極的施行が示唆された.
さらに,冠状動脈瘤の病因,予後,治療などに関して文献的考察を加えた.
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