心臓
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12 巻, 1 号
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  • その受益と代価について
    田村 康二, 小沢 武文, 室岡 寛
    1980 年 12 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    運動負荷心電図法は負荷量を増量させるとともに検査の感度が上昇してより有用になると期待されている.したがって今なおわが国で盛んなマスター運動負荷試験法からトレッドミルあるいはエルゴメーターを使用した多段階最大運動負荷法らへと移ってゆく方向にある.そこで問題になるのは負荷量の増加の意義,その負荷量の大きさの決定,負荷に際しての終点の決定などである.これらの問題点は一方では負荷の増加に伴って生じてくるマイナスとなる因子,特に危険性,との関連で決定されてくるわけである.そこで負荷量の問題をその受益と代価の面から検討し亜最大運動負荷法が実用的であろうと現在のところでは考えていることを述べた.
  • カテコラミン惹起性ST 下降について
    飯沼 宏之, 高橋 宣光, 加藤 和三
    1980 年 12 巻 1 号 p. 10-17
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    交感神経刺激時のS T 偏位の機序をイヌ心で検討した.刺激開始とともに血圧,冠血流量,左室圧dp/dt,心筋酸素分圧(MPO2)はいずれも増加し,刺激終了後旧に復したが, MPO2は刺激前より低値となることもあった.心電図S T は神経支配域で刺激開始直後一過性に下降し,一旦旧に復した後,刺激終了数10秒後から持続的にかつ著明に下降した.MPO2の低下は後期ST下降の出現より遅れて現われしかも軽度だったこと,また心筋乳酸摂取率は刺激前後で不変だったことより,上述のST下降に対し心筋虚血は関与していないと考えた.心筋電解質代謝面では神経刺激によりST下降の時期に一致して心筋細胞Kとり込み増加が生じた.さらに吸引エレクトログラム(Suction Eg)とECG変化の比較により,初期ST下降はSuction Egのプラトー電位増高に, 後期ST下降は静止期電位増大によることが分った.またこれら神経支配域のST下降は,非支配域のSTを鏡像現象的に上昇させることを明らかにした.
  • 豊増 弘幸, 押領司 篤茂, 小須賀 健一, 大石 喜六, 古賀 道弘, 陣内 重三, 吉岡 春紀, 古賀 義則
    1980 年 12 巻 1 号 p. 18-26
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    僧帽弁閉鎖不全を主とした弁膜疾患に対し自己弁を保存的に再建する弁形成術として.自家心膜を用いるleaflet advancement(弁葉拡大術)を33例に行い好結果を得ている.術後最長7年を経過するが,その遠隔成績について心エコー図を中心に検討した.
    拡大弁葉の術後の変化および血行動態は,術後6カ月ごろまで多少変化するが,以後の追跡では安定した成績を示し,同様のエコーパターンをとる例が大多数であるため,本法が長期にわたって有効な術式であると考えられる.また,MRに対する他の術式と比較してもMVRに劣らない点を考慮すると,本法は弁形成術の一方法として有用な術式であり,特に人工弁使用に問題を有する症例や成長過程にある若年者や小児に対して是非推奨されるべきである.
  • とくに,いわゆる右心室二腔症と漏斗部狭窄との比較検討
    河合 祥雄, 加納 達二, 阿部 博幸, 西條 敬, 岡田 了三, 北村 和夫
    1980 年 12 巻 1 号 p. 27-37
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    弁下性右心室流出路狭窄の諸型につき臨床症状・検査所見の対比を行い,右心室二腔症の概念を検討した.
    対象は6歳-52歳までの22例で,複雑心奇形に伴う症例は除外し,対照に弁性狭窄18例を用いた.VSD合併13,ASD.PFO合併各1であり,右心室造影正面像で心尖より肺動脈弁輪までを三等分し上部,中部,下部の各狭窄群に分類した.上部狭窄群は10例,右心室圧は平均130mmHgで,ECG上右軸偏位傾向が強く,中部狭窄群は11例で右心室圧は平均77mmHgであり,下部狭窄は6歳男1例のみであった.各群間のLVH心電図所見はVSD合併有無と関連し,RVH所見は右心室圧と相関していた.従来右心室二腔症の心電図所見とされたものは非弁性狭窄全体について当てはまるが特徴的とは考えられない.また解剖学的および伝統的に中部・下部狭窄を右心室二腔症と分ける意味あいは少く,流出路狭窄を狭窄位置で分類した方が,現時点では混乱を軽減するとえられる.
  • 特に大動脈後壁心房波(AAW) について
    松本 芳彬, 外牧 洋之, 堀尾 豊
    1980 年 12 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心房収縮に伴う大動脈後壁エコーの後方運動を大動脈後壁心房波(AAW)と定義し,91症例について,非観血的方法でその臨床的意義の検討を行い,次の結果を得た.%AAWの平均値は正常(N)27例31.5%であるのに対して心房収縮の心室充満に対する関与の増大が予想される高血圧性心臓病(HHD)および冠動脈疾患(CAD)48例,肥厚性心筋症(HCM)5例,大動脈弁膜症(AVD)4例では50.0%,51.9%,51.4%と増加し心尖拍動図のA/E-O比の増大(N:5.1%,HHD,CAD:14.2%,HCM:13.9%,AVD:11.2%)および%VAWの増大(N:5.8%,HHD.CAD:10.1%,HCM:10.9%,AVD:7.8%)に対応した.一方,僧帽弁狭窄症(MS)7例の%AAW平均値は21.3%で正常例より有意に低く,これに対応してA/E-O比(3.8%)および%VAW(4.4%)も低値を示した,%AAWは心房収縮による心室充満率を反映する指標となりうると考える.
  • 松浦 雄一郎, 田村 陸奥夫, 山科 秀機, 肥後 正徳, 藤井 隆典, 上田 和明, 関口 善孝, 滝沢 伊津夫
    1980 年 12 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    過去5年間に県立広島病院胸部外科において,34例の徐脈性不整脈の患老に48回のベースメーカー本体の交換,および再交換がなされた.そこで,これらペースメーカー本体の交換を行った症例において交換理由, 交換時の主要症状/主訴,装着使用期間などに関し,ベースメーカーのエネルギー源別に比較検討を行ってみた.電池消耗ないし選択的交換という理由で34コが交換され,電子回路の故障で8コが交換された.その数値のほとんどが,水銀電池におけるものであり,電池消耗が主因であるというのは当然の結果であろうが,充電型,リチウム電池と,電池別には交換理由としてはいささかの差異がみられた.数年後には多少の様相の違いが,でてくるであろうが, 現在のところ充電型, リチウム電池型ペースメーカーでは,主な交換理由は1年以内の電子回路の故障であり,1年を経過してからのものは無事故に経過しているようである.
  • 門間 和夫, 高尾 篤良, 長谷 直樹, 今井 康晴, 和田 寿郎
    1980 年 12 巻 1 号 p. 50-59
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    完全大血管転換症Mustard手術成功例21例の2年以上の遠隔期成績を追跡調査した.52%(11例)は遠隔期にも無症状で健康小児と同じ日常生活をおくり,身長・体重も手術前の発育不良状態より脱して正常化していた.残り10例のうち5例は遠隔期合併症で死亡し,5例は遠隔期合併症のため制限された生活をしている.各合併症の症例数は,完全または高度ブロック2(うち死亡1),肺高血圧と心不全2(死亡1),肺静脈閉塞1(死亡),上大静脈閉塞1(死亡),三尖弁閉鎖不全1(死亡),残遺短絡と肺動脈絞扼術後肺動脈狭窄残存1,脳神経障害1である.各種の上室性不整脈が高率に認められた.
  • 門間 和夫, 高尾 篤良, 長谷 直樹, 今井 康晴, 和田 寿郎
    1980 年 12 巻 1 号 p. 60-68
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    完全大血管転換症Mustard手術の生存例21例中5例が遠隔期に手術と関係したそれぞれ異なる合併症で死亡した.症例1はTGA III型で手術後完全房室プロック,両側性短絡心不全があり,手術後9年で急死した.症例2はTGA I型で手術後1年間は無症状であったが,手術の1年5カ月後肺静脈閉塞による肺うっ血と心不全で死亡した.症例3はTGA I型で手術後上大静脈閉塞が次第に進行し,手術後5カ月で再手術を行ったが死亡した.症例4はTGA II型で手術後も肺高血圧が持続し,手術後5カ月で心不全で死亡した.症例5はTGA I型で手術後1年間は無症状であったが,手術後1年5カ月で三尖弁閉鎖不全と心不全で死亡した,それぞれの合併症に対する診断と治療・予防法を考察した.
  • VSD到達経路とPS解除について
    森川 哲夫, 大沢 幹夫, 山本 紀章, 石井 潔, 入沢 彰仁
    1980 年 12 巻 1 号 p. 69-75
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    VSD,PSを伴う修正大血管転位症3例に対して根治手術を行った.VSDを閉鎖するための到達経路として,動脈側心室切開(解剖学的右心室),静脈側心室切開(解剖学的左心室),右房切開とそれぞれ異なった方法を用いた.動脈側心室切開は術後のL.O.S.,房室弁の逆流などの問題を残した.これに対して,右房切開は刺激伝導系の障害に対しては問題があったが,術後経過,視野の点では有利であった.
    PSの解除にあたっては,弁輪および弁下部に重度の狭窄のある症例に対しては,Rastelli手術が手技的に,また術後の血行動態的にも優れていた.
  • 岩崎 勤, 大川 真一郎, 松下 哲, 藤岡 俊宏, 鎌田 千鶴子, 上田 慶二, 杉浦 昌也, 蔵本 築, 村上 元孝, 森山 伸一, 大 ...
    1980 年 12 巻 1 号 p. 76-82
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Discrete Subaortic Stenosis (DSS)は若年者に多く高齢者にはまれである.今回77歳まで生存したDSSの1剖検例を報告する.
    77歳,女.昭和50年右大腿骨頸部骨折を起こし入院した.呼吸困難があり,脈は78/分,不整.血圧は114/70mmHgで,心尖部から胸骨左縁に4/6度の収縮期雑音,胸骨左縁に4/6度の拡張期雑音を聴取した.胸部X線で心拡大があり,心エコー図では心室中隔の肥厚があり,僧帽弁の収縮期前方運動と大動脈弁直下の左室流出路狭小化を認めた.IHSSを疑ったが心不全悪化して死亡した.剖検にて心重量490gの著明な求心性肥大があり中隔の非対称性肥厚はなく組織学的にも心筋線維の配列異常を認めなかった.一方大動脈弁は三尖とも肥厚し,大動脈弁直下11mmの所に長さ2.6cmに及ぶ著明な心内膜の線維性肥厚を認め,左室流出路の狭小化の原因と考えられた.
  • Junctional escaped beat によリ誘発された上室性頻拍
    照屋 日出夫, 真田 竹生, 小原 一夫, 久能 晃, 小松 親義, 佐藤 泰雄, 吉村 正蔵, 松井 道彦, 新井 達太
    1980 年 12 巻 1 号 p. 83-89
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    われわれは,sick sinus syndrome(以下SSS)があり,Kent束を旋回する上室性頻拍発作(以下PSVT)を認め,徐脈に対するjunctional escaped beatによって誘発されるPSVTを生じたintermittent WPW症候群の症例を経験した.
    SSSに合併する頻拍発作は,発作性心粗細動が多いとされているが,本例のごとくaccessory pathwayを介する頻拍発作もその一因となるものと考えられる.
  • 三崎 拓郎, 寺中 正昭, 小林 弘明, 児玉 吉明, 村中 幸夫, 渡辺 洋宇, 岩 喬
    1980 年 12 巻 1 号 p. 90-94
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    徐脈- 頻脈症候群の2 症例と心室性頻拍の1 症例の計3症例に対し通常の応需型ベースメーカーと高周波誘導ペースメーカーを同時に植え込み,いずれも良好な経過をとっているので報告する.症例1.A型WPW症候群を伴う徐脈- 頻脈症候群, 症例2 . 心房粗動を伴う徐脈-頻脈症候群の2 症例に対しては, 頻拍の中断のために高周波誘導心房ペースメーカーを,その後の徐脈を制御するために応需型ペースメーカーを植え込んだ.また症例3の心室性頻拍に対しては,頻拍の中断のために高周波誘導心室ペースメーカーを,overdriveによる頻拍の抑制のために90回/分にセットした可変型ペースメーカーを植え込んだ.このダブルペースメーカー植え込みに若干の考察を加える.
  • 伊藤 明一, 篠田 晋, 長島 道夫, 鈴木 彦之, 小田島 秀夫, 本良 いよ子
    1980 年 12 巻 1 号 p. 95-101
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    失神発作を有する63歳の女性が電気生理学的に検索された、非発作時の心電図ではP-R 0.18秒で,左軸偏位を認めた.His束心電図ではP-A 25,A-H 110,H-V 45msecと正常であった.post-pacing maximum pauseは2520msecと延長を示したが,その他の心房刺激に対する反応は正常であった.procaine amide 300mg投与後,105-145/分の頻度での心房刺激で第2度房室(H-V)ブックが出現した.さらに高頻度心房刺激停ロ止後に,心周期の延長とともにH-V間の房室ブロックが連発した.徐拍依存性房室ブロックの発現機序として,近年第4相脱分極の関与が重要視されている.procaine amideがPurkinje線維の第4相脱分極を抑制するというこれまでの報告に従えば,本例の徐拍依存性房室(H-V)ブロックの発現機序を第4相脱分極にのみ求めることはできない. 徐拍依存性の伝導障害に関してなお不明な点が多いが,本例はその機序を考える上で興味深いと思われる.
  • 北野 幸英, 大州 真一郎, 伊藤 雄二, 藤岡 俊宏, 上田 慶二, 杉浦 昌也, 村上 元孝, 小林 誠一, 大津 正一, 高野 勲
    1980 年 12 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 1980/01/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は57歳女性.リウマチ性連合弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症十三尖弁閉鎖不全症)を疑い治療を行ったが,重症心不全,急性腎不全にて死亡した.剖検にて心重量690g,死体血量1900ml,特に右心系に強い拡張性肥大を呈し,本来の冠状静脈洞開口部に一致して1.5×1.8cm大の心房中隔欠損症が見出された.そのため冠状静脈は左房に開口をみた.僧帽弁,三尖弁は弁輸の拡大と,弁尖の軽度の肥厚を呈し,組織学的にもリウマチ性病変はなく,atrialis(心房側弾性線維層)の増生が目立ち相対的閉鎖不全症を思わせる所見を示した.
    冠状静脈洞型心房中隔欠損症の報告はきわめてまれで,われわれが調べ得た範囲では7例であり,種々の心奇形を伴っている.本症例は57歳まで生存し得た,きわめてまれな症例と考えられるので,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 1980 年 12 巻 1 号 p. 110-
    発行日: 1980年
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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