最近,著者らは,鍼灸針による心内伏針に合併した外傷性心タンポナーデの症例を経験した.
症例は,69歳,女性で,胸痛と血圧低下にて入院.収縮期血圧90~80mmHgで,10mmHgの奇脈を呈し,心エコーにて中等量の心膜液,右室の拡張早期虚脱が見られた.穿刺にて約200mlの血液成分を排液の後,症状は軽減.X線写真にて,頸部,腰部を中心に多数の鍼灸針留置の所見を認め,一部,肺野,心陰影に及んだ.心内伏針の検出に,経胸-経食道エコー法は不成功に終わったが,造影CTは,右室を穿通して横隔膜へ刺入した針を明瞭に検出しえた.他に,肺動脈内に3本,肝臓,腎臓,膵臓にも迷入した針を数本認めた.1週間後,体外循環を使用することなく心拍動下に抜針した.心内伏針の原因が治療目的に体内に留置された鍼灸針であった,との指摘はまれで,本邦第2例目にあたり,また心タンポナーデを合併したとの報告も極めて少ない.針の進入経路としては経静脈路が考えられ,その存在診断には,造影CTが有用であった.
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