心臓
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26 巻, 12 号
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  • 瀬口 正史, 中澤 誠, 門間 和夫, 衣川 佳数
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1213-1219
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    肺高血圧症を伴う多量の左右短絡性心疾患の2例(心室中隔欠損症1例,両大血管右室起始症1例)で啼泣時,哺乳時に一致して発作性に心電図上のI, aVLと左側胸部誘導のST, T波の変化が認められた.1例では心筋由来の血清酵素の上昇が認められたが,心電図変化は一過性で安静とともに改善した.他の1例では硝酸薬のテープを貼付することによって心電図変化も改善した.この原因は,拡張した左心室とそれに対して相対的に心筋重量が不足した状態での啼泣や哺乳などによる骨格筋の酸素消費の増大により,冠灌流の相対的な低下を引き起こしたためと考えられた.本症例のような乳児期での肺高血圧症を伴う多量の左右短絡性心疾患では,心筋の虚血性変化を引き起こさないように早期の外科的修復術が必要である.
  • 高野 諭, 大滝 英二, 古寺 邦夫, 斉藤 雄司, 加藤 秀徳, 相馬 孝博, 春谷 重孝, 坂下 勲
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1220-1224
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    我々は46歳男性で,酸性ムコ多糖症(Scheie症候群)で,それによる重症大動脈弁狭窄兼逆流,僧帽弁狭窄兼逆流症のため,2弁置換術を施行し術後5年間経過良好な症例を経験した.術前2回起座呼吸を伴う心不全出現し,内科的治療下でもNYHA心機能分類III度の状態が続いたので,2弁置換術を施行した.術後経過は良好で無症状となった.術後4年3カ月での心臓カテーテル検査では,肺動脈圧は術前55/36mmHgが38/21mmHgと低下し,左室拡張末期容量係数は56.2から58.2ml/m2であり,左室駆出率は60%から67%とほぼ不変であった.冠動脈造影も正常のままで,術後5年間の経過はたいへん良好である.
    生命予後のよいScheie症候群の重症弁膜症合併例に対しては,主病変が弁に限局していれば,積極的に弁置換術施行すべきと考えられる.
  • 藤原 正文, 堀本 和志, 児玉 奈津子, 竹中 孝
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1225-1230
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の男性.12年前に心筋梗塞の既往があり,今回はうっ血性心不全で入院した.入院時の胸部X線像にて,心胸郭比55%の心拡大,肺うっ血,胸水を認め,さらに側面像にて心陰影外縁の内側に殻状の石灰化像を認めた.心電図では完全右脚ブロックとV2~5に異常Q波があり,心エコー図では左室内腔の著明な拡大と左室前壁の心室瘤を認めた.胸部CTにて心室中隔から心尖部にかけて,心室瘤壁の石灰化が確かめられた.冠動脈造影では左前下行枝は完全閉塞し,左室造影上駆出率33%であり,SellersII度の僧帽弁閉鎖不全を認めた.
    本症例のパルスドプラ法による左室流入血流速のパターンでは,拡張早期急速流入ピーク速度(E)/心房収縮期ピーク速度(A)の増大と,E波のピークからの減速時間の短縮を認めた.この所見は拘束型左室拡張障害を示し,心室瘤壁の広範な石灰化との関連性が示唆され興味深い点と思われた.
  • 福村 好晃, 吉栖 正典, 西村 哲也, 北川 哲也, 加藤 逸夫
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1231-1234
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    蛋白漏出性胃腸症を伴う僧帽弁兼三尖弁閉鎖不全症症例を経験した.本症例では,術前の低蛋白血症の改善に,中心静脈栄養を行いながら経口摂取を中止することが効果的で,総蛋白値4.1g/dlから5.5g/dlに補正後手術を行った.手術は,僧帽弁置換術および三尖弁輪縫縮術を行い,術後蛋白漏出性胃腸症および低蛋白血症の著明な改善を認めた.蛋白漏出性胃腸症の原因として,三尖弁閉鎖不全による静脈圧の上昇が関係していると思われるが,我々の経験したその他の三尖弁閉鎖不全症には蛋白漏出や低蛋白血症の所見は認められず,静脈圧の上昇のみでは説明しえない.原因検索のためさらに検討を要すると思われる.
  • 加藤 律史, 興野 春樹, 井上 寛一, 黒羽 正男, 熊坂 祝久, 貴田岡 成憲
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1235-1240
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    房室結節回帰性頻拍の頻拍中に与えた単発早期刺激に対するリセット反応から,上部共通伝導路(UCP)の存在が疑われた1例を報告する.症例は動悸を主訴とする53歳男性で,頻拍時の心拍数は毎分130拍,QRS時間は0.10秒で,P波は同定できなかった.臨床電気生理学的検査において,房室伝導曲線が不連続であり,かつAH時間のjump upとともに頻拍が誘発されたこと,また頻拍中の最早期心房興奮部位がヒス束電位記録部であったことから房室結節回帰性頻拍と診断した.頻拍中に高位右房,冠静脈洞および右室心尖部の3カ所から単発早期刺激を加えた.刺激直前のヒス束電位記録部位の心房電位(LRA)をA1,刺激直後のLRAをA2と名付け,A2に引き続いて記録されるヒス束電位をHと定義した.3カ所からの刺激時,LRAでのA1A2時間とA2H時間に注目しその刺激部位の相違による変化を検討した.その結果,いずれの部位からの刺激でも,連結期の短縮に従いA2H時間は延長した.高位右房刺激と冠静脈洞刺激では同一のA1A2時間におけるA2H時間はどの連結期においてもほぼ近似していた.一方,右室心尖部刺激におけるA2H時間は上記2カ所に比べ,どの連結期においても20~70ms延長していた.この延長の機序はUCPを想定することにより説明可能と思われた.すなわち,房室結節回旋部の心房側での連結期に注目すると,心室刺激時にはA1A2時間そのものとなるが,心房刺激時にはUCPを往復する分A1A2より長くなり,遅伝導路に対する早期性がより小となる.そのため心房早期刺激に対する遅伝導路の伝導遅延は心室刺激時に比べ,より小となるものと推定された.
  • 大澤 正樹, 田代 敦, 茂木 格, 千葉 直樹, 小野寺 正輝, 平盛 勝彦
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1241-1246
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞発症後の心室性期外収縮に対してaprindine(Apr)を投与し,投与開始5カ月後にtorsades de pointes(Tdp)を生じた1例を経験したので報告する.症例は76歳の女性.平成4年9月27日に急性心筋梗塞を発症し,近医院に入院した.心室性期外収縮と非持続性心室頻拍に対して,平成4年10月16日からApr60mg/日の内服を開始した.平成4年11月5日のApr血中濃度が3.90μg/mlと高値を示していたため,同日よりApr投与量を40mg/日に減量した.平成5年3月2日のApr血中濃度は1.44μg/mlであった.平成5年3月9日失神発作があり,翌日近医を受診した.心電図でQT延長と非持続性心室頻拍を認め,当院を紹介された.当院受診直後Tdpを生じ,心室細動に移行した.電気的除細動後,Apr投与を中止して経過観察をした.QTは正常化し,Tdpは生じなくなった.来院時のApr血中濃度は2.58μg/mlであった.
    Apr投与中止後に行った心臓電気生理学的検査でTdpは誘発されず,Tdp発症にAprが関与したと考えられた.Apr投与量が高齢の日本人としては過量であったという問題はあるが,Apr投与開始から数カ月を経てからの薬物血中濃度上昇とTdpの発症をみた例はまれであり,報告した.
  • 宮原 嘉久, 今村 俊之, 阿部 航, 内藤 達二, 池田 聡司, 浜辺 定徳, 太田 三夫, 波多 史朗, 宮原 嘉之, 原 耕平, 松永 ...
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1247-1251
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は,46歳女性.主訴は動悸および易疲労感.家族歴で父が喘息と肝癌,既往歴には特記事項なし.現病歴は平成4年9月頃より時々動悸を自覚していた.平成5年1月1日より易疲労感を覚え,近医を受診し著明な心拡大のため入院した.末梢血に好酸球増多を認め,心エコー図にて多量の心嚢水を認めたため精査治療目的にて当科入院.心電図では心房細動を示した.MRI(Gd造影)にて縦隔,心臓,肺浸潤した腫瘍を認めたが心嚢水穿刺,気管支鏡下肺生検,心筋生検で正常組織しか取れず開胸肺生検にて悪性リンパ腫と診断した.
  • 栗須 修, 斎藤 博則, 奥山 浩, 桑田 雅雄, 鈴木 和彦, 益子 健男, 水野 朝敏, 坂本 吉正, 斎藤 文美恵, 黒澤 博身
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1252-1255
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は24歳の男性.主訴は発熱および咳.平成4年3月より39度の発熱出現.抗生剤の点滴で解熱.5月30日より再度発熱出現し,某院入院.抗生剤を点滴するも解熱せず,心臓超音波検査で感染性心内膜炎が疑われ当院心臓外科転院.入院時,脈拍102/分(整),血圧144/72mmHg,体温36.4℃,心雑音は聴取せず.WBC10,600,CRP4,細胞性および液性免疫の低下は認めず.胸部X線像では右中肺野に楔状陰影を認め,CT,換気血流シンチで肺梗塞,肺膿瘍および肺炎と診断.経胸壁エコーでは,右心房心室聞を移動する径約2cmの腫瘤を認め,感染性粘液腫を疑い経食道エコーを施行.腫瘤は三尖弁に付着しており疣贅と診断した.
    当院転院後は発熱を認めなかったが7日後に39℃ の発熱が出現し,血液培養より黄色ブドウ球菌が検出された.大量のペニシリン系およびアミノグリコシド系の抗生物質で解熱し7月15日手術.三尖弁は三弁とも破壊されすべて疣贅になっておりCarpentier-Edwards弁にて置換し術後経過は良好である.
    右心系の感染性心内膜炎は,先天性心奇形や麻薬常習者に多く,健常者にはきわめてまれである.巨大疣贅は,粘液腫との鑑別が難しく経食道エコーより診断しえた症例を経験したので報告する.
  • 河田 正仁, 荒木 俊一, 松本 奐良, 八尾 宜明, 近藤 順彦, 生駒 貞嗣
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1256-1260
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    慢性の肺高血圧症(PH)は現在もなお治療困難な病態の1つである.今回,我々は混合性結合組織病(MCTD)にPHを合併した症例を経験したので報告する.症例は31歳の女性.平成5年2月より発熱と労作性呼吸困難,咳嗽,血痰が出現した.6月より労作性呼吸困難が増強し当院を受診し精査のため入院となった.両手指はソーセージ様に腫脹しレイノー現象を認めた.心エコーで著明な右室負荷所見とTRIII度,PA収縮期圧約81mmHgを認めた.肺血流シンチグラム上欠損はなかった.抗RNP抗体陽性でその他の抗体は陰性であった.右心カテーテル検査ではPA80/36mmHg,PCm3mmHg,CI1.74l/min/m2であった.PHを合併したMCTDと診断し,線溶療法とステロイドのパルス療法,Ca拮抗薬投与を行った.その結果,抗RNP抗体,レイノー現象は消失し,PA75/38mmHg,CI2.11l/min/m2とやや改善した.この間,連続波ドップラー法による圧測定により,パルス療法,Ca拮抗薬,亜硝酸薬の急性,慢性効果をみた.現在患者は在宅酸素療法を施行し通院中である.当初,比較的予後良好な疾患と考えられていたMCTDにPHが併発しやすく,PH合併例は各種の治療に抵抗性でしばしば致命的な経過をとることがあることが明らかにされており今後有効な治療法の開発が待たれる.
  • 片岡 一, 宮本 伸二, 重光 修, 森 義顕, 葉玉 哲生
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1261-1266
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近,著者らは,鍼灸針による心内伏針に合併した外傷性心タンポナーデの症例を経験した.
    症例は,69歳,女性で,胸痛と血圧低下にて入院.収縮期血圧90~80mmHgで,10mmHgの奇脈を呈し,心エコーにて中等量の心膜液,右室の拡張早期虚脱が見られた.穿刺にて約200mlの血液成分を排液の後,症状は軽減.X線写真にて,頸部,腰部を中心に多数の鍼灸針留置の所見を認め,一部,肺野,心陰影に及んだ.心内伏針の検出に,経胸-経食道エコー法は不成功に終わったが,造影CTは,右室を穿通して横隔膜へ刺入した針を明瞭に検出しえた.他に,肺動脈内に3本,肝臓,腎臓,膵臓にも迷入した針を数本認めた.1週間後,体外循環を使用することなく心拍動下に抜針した.心内伏針の原因が治療目的に体内に留置された鍼灸針であった,との指摘はまれで,本邦第2例目にあたり,また心タンポナーデを合併したとの報告も極めて少ない.針の進入経路としては経静脈路が考えられ,その存在診断には,造影CTが有用であった.
  • 江角 浩安
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1269-1276
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 渋木 克栄
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1277-1283
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    中枢神経系におけるNOの機能の1つはシナプス可塑性において細胞間情報伝達物質として働くことである.海馬においてはシナプス後要素から前要素へ逆行性に情報を伝達し,長期増強の成立に寄与するのではないかと考えられている.小脳においては登上線維入力と平行線維入力間の干渉作用の一部を担い,長期抑圧の成立を可能にすると思われる.
  • 平田 結喜緒
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1284-1294
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    一酸化窒素(NO)は3種類のNO合成酵素(NOS)アイソフォームによって生成される.心血管系でも神経型cNOS,内皮型cNOSおよびマクロファージ型iNOSが存在し,それぞれ神経支配による循環調節,血管トーヌスの制御ならびに生体防御といった多彩な生理機能を営んでいると考えられる.cNOSは恒常的にNOを生成,放出し,血圧調節や抗血栓性の恒常性を維持するのに対して,iNOSの誘導は感染や免疫異常などの病態下で初めて誘導されるものであり,侵入する外敵に対してNOはcytotoxicあるいはcytostaticに作用する.しかしiNOS誘導が遷延化すると,過剰のNO生成は生体にとって不都合な作用をもたらすことになる.したがって心血管系におけるNOの持つ生理活性はbenficialをdetrimentalな側面を持つことを考慮に入れて,病態との関わりを解析する必要がある.
  • 由井 芳樹
    1994 年 26 巻 12 号 p. 1295-1302
    発行日: 1994/12/15
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近20年間血管細胞生物学が飛躍的進歩を遂げたが中でも血管内皮細胞の分野の進歩には目を見張るものがあった.弛緩因子ではprostacyclin,NOと解明され今第3の因子としてEDHFの解明がはじまろうとしている.
    Prostacyclin,NOにより動脈硬化,血栓症の病態解明は大きく進歩してきたがまだまだ末解明の分野が当然のことながら多く,EDHFの解明によりさらなる進歩が期待できる.
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