心臓
Online ISSN : 2186-3016
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55 巻, 1 号
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OpenHEART
HEART’s Selection
変わりゆく高齢者の循環器診療 企画:上原雅恵(東京大学医学部附属病院 循環器内科)
HEART’s Column
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HEART’s Original
[臨床研究]
  • 安冨 真道, 小澤 徹, 井上 信孝
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 55 巻 1 号 p. 43-47
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

     背景たこつぼ症候群は,発症誘因として身体的・精神的ストレスを認めることが多く,循環器領域におけるストレス性疾患の代表例である.しかしながら,臨床的には,発症に明確なストレス誘因を認めない症例が散見され,その臨床的特徴は明らかにされていない.

     目的発症に明確なストレス誘因を認めないたこつぼ症候群の臨床的特徴を調査する.

     方法:対象は2010年1月から2022年7月の間に当院において,たこつぼ症候群の診断基準を満たす,または臨床的に強く疑われる症例計62例〔男性8例/女性54例,平均年齢81(72-87)歳〕について,患者背景・誘因・臨床像を後ろ向きに検討した.

     結果:検討症例62例のうち,51例は発症に精神的または身体的なストレスを認め(stress群),11例は発症に明確なストレスを認めなかった(without stress:WOS群).stress群とWOS群の間で,年齢,性別,高血圧・糖尿病・脂質異常症・基礎心疾患の有病率,喫煙率に有意差を認めなかったが,WOS群は独居者が有意に多かった.

     総括:発症に明確なストレスを認めないたこつぼ症候群の発症は,独居者が同居者と比較して有意に多かった.

[症例]
  • 香山 京美, 山田 貴久, 渡部 徹也, 森田 孝, 川﨑 真佐登, 菊池 篤志, 近藤 匠己, 河合 努, 西本 裕二, 瀬尾 昌裕, 中 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

     症例は80歳女性.2年前に心不全を伴う大動脈弁狭窄症(aortic stenosis;AS)ならびにP3の逸脱による僧帽弁閉鎖不全症(mitral regurgitation;MR)と診断され外科手術を検討されていたが,手術不耐と判断され保存的加療の方針となっていた.その後も心不全増悪入院を繰り返し,内服加療での管理が困難となり当院紹介となった.術前評価では,両弁置換術は周術期リスクが高く困難である一方で,経カテーテル的大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve implantation;TAVI)と経皮的僧帽弁接合不全修復術(transcatheter mitral valve repair;TMVr)の二期的治療が可能であると判断した.第14病日にTAVIを施行した.人工弁留置後,急性左室内腔虚脱を起こしたため十分量の輸液負荷を要し,術後の心不全管理に難渋した.第30病日にTMVrを施行した.クリップを2つ留置し,MRは1度まで改善した.術後経過は良好で第42病日に紹介元へ転院となり,リハビリテーションを経て自宅退院となった.近年,構造的心疾患に対するカテーテル治療が普及しているが,連合弁膜症に対しての報告は少ない.本症例に関して文献的考察を交えて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 日高 秀昭, 堀部 達也, 中田 浩介, 沼口 亮介, 高木 淳, 西川 幸作, 吉永 隆, 岡本 健, 森山 周二, 福井 寿啓
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 1 号 p. 58-62
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

     68歳男性の大動脈縮窄症に対し,下行大動脈人工血管置換術を施行した症例を経験した.高血圧症の治療歴があり,胸部大動脈瘤の精査を契機に大動脈縮窄症を指摘され当科に紹介された.自覚症状はなく,高血圧症に対して投薬されているほかは特記すべき既往歴はなかった.大動脈縮窄症以外の心血管系先天異常として左上大静脈遺残を認めた.左開胸,部分体外循環下に縮窄部と大動脈瘤を切除し,下行大動脈人工血管置換術を施行した.術後経過は安定しており,合併症なく退院した.術後は降圧薬を減量できている.60歳台の大動脈縮窄症は稀であり,治療経過を報告する.

  • 江口 実佑, 梅谷 健, 柿崎 有美子, 飯野 昌樹, 中島 雅人
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 1 号 p. 63-70
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

     心臓悪性リンパ腫は稀な疾患であり,その診断過程は症例ごとに異なるが,早期の組織診断による適切な化学療法が予後を決める.準緊急外科治療を行った心臓原発悪性リンパ腫症例,低侵襲検査で早期組織診断を行った心臓が主病変の悪性リンパ腫症例の2例を経験した.

     症例1は65歳男性.呼吸困難を認め前医入院した.心臓超音波検査にて右房内を占拠する巨大腫瘤性病変を認め当院へ転院となった.CT検査にて腫瘍は上大静脈から右房を占拠し,右室にまで進展していた.上大静脈症候群を合併しており,準緊急外科治療を行い,右房内腫瘤摘出術を施行した.術中組織より,びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の診断となった.術後経過は良好で,早期の化学療法を開始し,外来通院中で経過良好である.

     症例2は80歳女性.下腿浮腫と徐脈のため紹介受診.完全房室ブロックを認めた.心嚢内で上行大動脈と肺動脈の間に進展する腫瘤を認め,連続的に心房中隔に広がっていた.縦隔や腹部大動脈傍リンパ節の腫大も認めた.確定診断のため傍気管リンパ節より超音波気管支鏡ガイド下針生検(EBUS-TBNA)と迅速細胞診(ROSE)を施行し,class・,悪性リンパ腫の所見を得た.最終病理診断はDLBCLで,化学療法1コース終了時に心内腫瘤は縮小を認め,房室伝導も1度房室ブロック伝導に改善した.

     治療が奏効した稀な心臓悪性リンパ腫を経験したため報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 賀来 文治, 福尾 篤子, 稲端 翔太, 東 雅也, 勝田 省嗣
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 1 号 p. 73-82
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

     心筋ブリッジは時に心筋虚血の原因になったり,冠動脈攣縮を合併したりするため,一部の症例では心血管イベントの原因となり得る.今回我々は,当院で経験した冠動脈攣縮を合併した心筋ブリッジを有する不安定型狭心症の4症例を報告する.

     症例1は72歳男性.不安定型狭心症の疑いで冠動脈造影検査が実施され,前下行枝の中間部に心筋ブリッジと心外膜冠動脈の高度な圧縮現象を認めた.冠攣縮誘発検査では,心筋ブリッジに伴う冠動脈の圧縮現象が生じている部位のみに高度な冠動脈攣縮が誘発された.

     症例2は84歳男性.除雪作業中に胸痛を訴えた後に,玄関先で倒れたために救急搬送された.不安定型狭心症の疑いで緊急冠動脈造影検査が実施され,前下行枝の中間部に心筋ブリッジと心外膜冠動脈の中等度な圧縮現象を認めた.冠攣縮誘発検査では,心筋ブリッジに伴う冠動脈の圧縮現象が生じている部位のみに高度な冠動脈攣縮が誘発された.

     症例3は67歳女性.深夜に生じた激しい胸痛で受診.心電図にて胸部誘導で陰性T波を認め,急性冠症候群の疑いで冠動脈造影検査が実施された.前下行枝の近位部に心筋ブリッジと心外膜冠動脈の軽度な圧縮現象を認めた.冠攣縮誘発検査では,心筋ブリッジに伴う冠動脈の圧縮現象が生じている部位のみに高度な冠動脈攣縮が誘発された.

     症例4は35歳男性.交通事故で救急搬送されたが,搬送時の心電図にて下壁誘導と胸部誘導にて水平型~下行型のST低下を認めたため,急性冠症候群の疑いで緊急冠動脈造影検査が実施された.前下行枝の中間部に心筋ブリッジと心外膜冠動脈の高度な圧縮現象を認めた.冠攣縮誘発検査では,心筋ブリッジに伴う冠動脈の圧縮現象が生じている部位の一部に高度な冠動脈攣縮が誘発された.

     心筋ブリッジは機械的なメカニズムによる心筋虚血の原因になり得るが,それ以外に心筋ブリッジには冠動脈攣縮の合併が多いことも明らかになっている.心筋虚血の存在が疑われる症例における冠動脈造影検査で心筋ブリッジを認めた場合は,冠動脈攣縮の合併も念頭に置き,引き続き冠攣縮誘発検査を実施することが重要である.

Editorial Comment
[症例]
  • 熊澤 瑞希, 藤井 昭, 大谷 敬之, 橋本 那菜美, 新藤 諒真, 八木 郁子, 藤岡 将士, 城戸 信輔, 日浅 豪, 岡山 英樹, 鈴 ...
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 1 号 p. 87-92
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

     症例は急性肺水腫を繰り返す82歳の女性.67歳の時,大動脈弁と僧帽弁の連合弁膜症に対し機械弁置換術を施行されている.81歳,僧帽弁位機械弁の弁周囲逆流(PVL)による溶血性貧血が出現した.貧血の進行に伴い易疲労感ならびに軽労作での息切れの増悪を認めた.外科的再開胸手術の同意を得られず,82歳,X年2月,他院にてAmplatzerTM vascular plug(AVP)Ⅱを用いた経皮的PVL閉鎖術を受けた.以後PVLは消失し貧血の改善とともに症状は寛解した.閉鎖術半年後のX年8月,肺水腫を主とする新規の急性心不全が出現した.利尿薬の調整にて外来診療で経過を診ていたが9月以降,軽労作による呼吸困難が繰り返し出現するようになった.X年10月,救急受診時の経胸壁心エコー検査にて左房─左室平均圧較差12 mmHgの高値を認めた.X線弁透視検査,経食道心エコー検査ならびにCT検査にてAVPⅡと干渉する僧帽弁位傾斜型ディスク弁の開放制限を確認した.今回PVL閉鎖術半年後に発症したvascular plug干渉による僧帽弁位人工弁機能不全を原因とする高齢者心不全を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 松田 愛理, 高橋 有紗, 髙畑 翔太, 川田 泰正
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

     症例は80代女性.1年前に発作性心房細動に対し冷凍凝固アブレーションを施行した.2カ月後に徐脈頻脈症候群が顕在化し,心房細動停止時に前失神を伴う9秒の洞停止がみられた.発作頻度が少なく,ご本人も経静脈的従来型ペースメーカを植込むことへの抵抗感もあり,リードレスペースメーカ(VVI)を留置した.1年後に間欠的完全房室ブロックが出現し,徐々に頻度が増加するにつれ労作時倦怠感も増悪した.VVIペーシングが増加することによる同期不全が原因と思われ,DDDペースメーカ手術を再度勧めたが同意が得られなかった.そこでDDD一時ペーシングを施行すると,歩行距離,歩行速度,自覚症状が前後で改善し,本人の同意が得られ恒久的DDDペースメーカ植込み術を施行した.ペースメーカによりかえって症状が悪化することをペースメーカ症候群というが,他覚的に評価をし得た1例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 山崎 友也, 大内 真吾, 大山 翔吾, 難波 美妃, 柴田 陽, 播間 崇記
    原稿種別: 症例報告
    2023 年 55 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2023/01/15
    公開日: 2024/01/28
    ジャーナル フリー

     症例は82歳,女性.胸部X線検査で左第一弓の突出を指摘された.造影CT検査では遠位弓部大動脈に最大短径55 mmで紡錘状の大動脈瘤を認めた.高齢であり,胸部大動脈ステントグラフト内挿術(thoracic endovascular aortic repair;TEVAR)の方針とした.術中,突然の血圧低下,ST上昇を認めたが血圧は改善し,大動脈造影を行ったが明らかな異常所見は認めなかったためTEVARを継続した.しかし高度屈曲のためデバイスが弓部を通過せず,途中で断念した.手術終了直前にTEEで上行大動脈に急性大動脈解離を疑わせるフラップを認めた.偽腔の血流はなかった.大動脈弁の逆流や心嚢液の貯留は認めなかった.造影CTで上行大動脈~弓部大動脈に解離を認め,逆行性A型大動脈解離(retrograde type A aortic dissection;RTAD)と診断し同日,緊急で全弓部大動脈置換術とfrozen elephant trunk法を施行した.開心術後の合併症はなく,術後26日目に独歩で退院した.今回我々は術中,造影検査では診断できなかったRTADをTEEで早期に診断できた.RTAD評価の補助手段としてTEEが有用と思われた.

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