isosorbide dinitrate (ISDN)の新しい剤型である sprayの有用性を, 血行動態に及ぼす効果の面から検討した. 対象は合併症がなく, 血行動態的に安定した急性心筋梗塞症9例である. ISDN spray 2.5mgを頬粘膜に吹きつけるように噴霧投与した後, 心拍数, 血圧, 肺動脈圧の変化を経時的に観察し, nitroglycerin (TNG)0.3mg, ISDN 5mg舌下投与後のそれらと比較した. 投与順序は無作為とし, 1剤の観察終了後2時間の wash out時間を設けた. ISDN spray投与後, TNGおよびISDN舌下後と同等の肺動脈圧, 収縮期血圧の下降と心拍数の増加を認めた. 肺動脈収縮期圧を指標とした効果発現時間は, TNGで, 3.9±1.8分, ISDN sprayで 3.3±1.3分, ISDN舌下で10.3±13.1分であった. 効果持続時間は, それぞれ, 8.7±7.2分, 37.8±30.9分, 42.2±27.1分であった. 以上より, 血行動態に及ぼす効果からみた ISDN sprayは, TNGおよび ISDN舌下と同等の効果を有し, 前者の速効性と後者の持続性を備えた有用な剤型であると考えられた.
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