心臓
Online ISSN : 2186-3016
Print ISSN : 0586-4488
ISSN-L : 0586-4488
54 巻, 10 号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection
これから5年間の臨床・基礎研究の強化に向けて 企画:野村征太郎(東京大学医学部附属病院 循環器内科)
HEART’s Column
HEART@Abroad
HEART’s Up To Date
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 加藤 直人, 甲谷 友幸, 星出 聡, 苅尾 七臣
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 10 号 p. 1128-1133
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

     背景:過去の報告で,心電図・誘導のノッチ型P波が心房細動の発症や心血管イベントに関連することが示されている.近年ではアルゴリズムで心電図の自動解析が可能になっている.本研究の目的はノッチ型のP波の自動解析と目視の相関について検討し,心血管イベントとの関連を調べることである.

     方法:当院の100名の外来患者の心電図をアルゴリズムによる自動解析と目視でノッチ型P波の判定を行った.エンドポイントを致死性,非致死性心血管イベントで定義し,自動解析と目視のP波の有無と比較した.

     結果:ノッチ型P波の自動解析と目視の相関はカッパ値=0.216であった.患者背景では,目視でのノッチ型P波群(N=16)がノッチがない群(N=84)に比べて高血圧症の率(100 vs. 88.1%,p=0.04)と虚血性心疾患の既往の率(43.8 vs. 16.7%,p=0.04)が高かった.

     経過中2件の心血管イベントが発症し,目視でのノッチ型P波群で2例発生し,ノッチがない群の0例に比べて有意に多かったが(p=0.002),自動解析ではノッチ型P波群(N=14)で1例,ノッチがない群(N=86)で1例であり,両群に有意差はなかった.

     結語:自動解析と目視のノッチ型P波には相違があり,目視のノッチ型P波は心血管イベントに関連していた.

Editorial Comment
[臨床研究]
  • 松元 一郎, 黒住 瑞紀, 難波 経立, 高木 雄一郎
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 10 号 p. 1135-1144
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

     目的:動脈硬化性疾患予防において,LDLコレステロール値以外の脂質プロファイル管理の重要性が指摘されている.今回の研究目的は,non-HDLコレステロール(non-HDL-C)値とトリグリセライド(TG)値を同時評価するLDL-windowが二次予防の指標として有用かどうか調査することである.

     方法:対象は,急性冠症候群あるいは安定狭心症に対し,経皮的冠動脈インターベンション(PCI)にて完全血行再建に成功した1949名とした.対象をnon-HDL-C値,TG値で次のように4分割した(modified LDL-window);Group 1:non-HDL-C値130 mg/dL未満かつTG値150 mg/dL未満,Group 2:non-HDL-C値130 mg/dL未満かつTG値150 mg/dL以上,Group 3:non-HDL-C値130 mg/dL以上かつTG値150 mg/dL未満,Group 4:non-HDL-C値130 mg/dL以上かつTG値150 mg/dL以上.この4群において,最大5年間の心血管イベント(MACE)発生率を調査した.MACEの定義は,心臓死,心筋梗塞発症,新規病変や再狭窄病変に対する血行再建術施行とした.また,Cox比例ハザードモデルを用いて各群のハザード比を比較した.

     結果:Kaplan-Meier法では,Group 3,4はGroup 1,2と比較して,有意にMACE発生が高率であり,Group 2はGroup 1と比較して,有意にMACE発生が高率であった.また,Group 1と比較したGroup 2,3,4のハザード比は,それぞれ1.498,2.378,2.471と有意に高値であった.

     考察:PCI施行後の二次予防における脂質管理方法の1つの指標として,modified LDL-windowは有用と考えられた.

Editorial Comment
[臨床研究]
  • 山本 重忠
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 10 号 p. 1146-1153
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

     目的:当院,施設職員の喫煙状況,喫煙意識の確認を行い,さらなる喫煙率低下のサポートを行うためアンケート調査を行った.

     方法:当院,施設に勤務する職員436人を対象に各属性や喫煙状況,喫煙に対する意識調査を無記名自記式アンケートにて調査を行った.

     結果:410人(回収率94%)より回答が得られた.喫煙者は男性22人(21%),女性32人(10%),年齢別では,20歳代が11人(12%),30歳代が14人(12%),40歳代が17人(17%),50歳代が10人(12%),60歳代以上が2人(8%)であった.職種では医師1人(9%),看護職34人(全体13%,男性20%,女性12%),リハビリ職8人(13%),医療従事者(医師,看護職,リハビリ職以外)8人(19%),事務職3人(11%)であった.当院,施設の職員では女性職員(10%),女性看護職(12%),看護師(男性32%,女性12%)の喫煙が全国平均喫煙率より高いことが判明した.受動喫煙に伴う健康被害の理解は喫煙者,非喫煙者ともに非常に高かった.喫煙に対する意識は,非喫煙者では,「医療従事者は喫煙するべきではない」が,喫煙者では「医療従事者は喫煙するべきではないとは思わない」が有意に多かった(p=0.003).

     考察:当院,施設職員の禁煙への行動変容ステージモデルは一般喫煙者集団と同程度であり,喫煙者,非喫煙者ともに喫煙,受動喫煙による健康被害の理解は非常に高く,医療従事者における喫煙意識も「気を付ければ問題なし」が最も多いことから,健康被害に関する教育のみでは行動変容や喫煙意識を変え,さらなる禁煙率の上昇は達成しがたい可能性が考えられる.喫煙率が高いと判明した女性看護職員,看護師に対し重点的に喫煙の健康教育介入を行うこと,健康教育に使用する媒体は,知識を文字や数字で表したものではなく,禁煙の行動変容のきっかけとして有効とされる,ライフイベントに係わる事柄を中心に,心情に働きかけるイラストや写真を多く使用することが有効であると考える.

[症例]
  • ─当院における着用型除細動器の使用実績を踏まえて─
    神林 諒, 本間 恒章, 髙橋 雅之, 武藤 晴達, 藤田 雅章, 大津 圭介, 加藤 瑞季, 塩泡 優大, 竹中 孝, 佐藤 実
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 10 号 p. 1154-1160
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

     43歳,女性.自宅内で卒倒し,救急要請された.初期波形は心室細動であり,一度の直流除細動で洞調律に復帰し,前医へ救急搬送された.緊急冠動脈造影検査で両側冠動脈に有意狭窄を認めず,左室造影検査で心尖部に無収縮を認めた.翌日以降の心電図でV2からV6誘導に巨大陰性T波を認め,たこつぼ型心筋症と診断された.入院後は良好に経過し,後日施行した冠動脈アセチルコリン負荷試験で,右冠動脈アセチルコリン20 μgの負荷で陽性,冠攣縮性狭心症の診断となり,心室細動の原因と推測された.約1カ月後,植込み型除細動器導入のため当院に紹介となった.皮下植込み型除細動器を選択し,術前の運動負荷心電図検査を施行したところ,陰性T波が検出された.除細動器移植の前後でT波の形態が変化した場合,誤作動リスクとなる可能性を考慮した.3カ月間着用型除細動器を使用し,その後の運動負荷心電図検査で陰性T波が改善したことを確認して皮下植込み型除細動器の移植を実施した.以降も良好に経過している.

     本症例におけるたこつぼ型心筋症のような,一過性の心電図変化を呈する皮下植込み型除細動器待機症例に対し着用型除細動器は有用と考えられ,当院における着用型除細動器の使用実績を踏まえて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 長田 栞, 中島 充貴, 戸田 洋伸, 平井 亮佑, 高木 章乃夫, 三木 崇史, 赤木 達, 吉田 賢司, 中村 一文, 赤木 禎治, 森 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 10 号 p. 1164-1169
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

     43歳男性.非代償性アルコール性肝硬変のため他院で通院加療を行われていた.特発性細菌性腹膜炎を契機とした肝腎症候群による急性腎障害を発症し当院転院となった.著明なアシドーシスおよび腎不全を認め集中治療室に入室した.入院後,下壁誘導ST上昇および高度房室ブロックを生じショック状態に至った.気管挿管を行いアルブミン補充および昇圧薬を使用して呼吸循環を維持し,持続的血液濾過透析を施行しながら緊急冠動脈造影検査を施行した.右冠動脈中間部90%狭窄,左冠動脈前下行枝近位部90%狭窄,左冠動脈回旋枝中間部90%狭窄を認めたが,血管拡張薬冠注により狭窄は解除され冠攣縮に伴うST上昇型急性下壁心筋梗塞と診断した.ニコランジル持続静脈投与を開始しST変化や房室ブロックの再発を認めなかった.血行動態安定し,全身状態も改善に向かった.肝腎症候群は末期肝硬変に続発する腎皮質血管の攣縮により生じるとされ,肝・腎以外の臓器にも血流障害が併存する可能性を示唆されている.今回我々は肝腎症候群に冠攣縮による急性心筋梗塞を発症し,集学的治療により救命し得た1例を経験したためここに報告する.

  • 上原 拓樹, 奥山 道記, 神田 芽生, 大江 勇太郎, 吉村 喬樹, 郡司 尚玲, 鈴木 隆司
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 10 号 p. 1170-1176
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

     症例は2症例とも70歳代,男性であり,一過性意識消失で当院救急搬送となり,来院時心電図で完全房室ブロック波形を認めた.緊急で体外式ペースメーカを挿入.いずれの症例も来院時の左室収縮機能は正常で心電図上のST-T変化も認めず,完全房室ブロック以外の所見はなかった.しかし入院後に発熱が出現し,左室収縮機能障害が出現.左室心筋生検を施行し,リンパ球性心筋炎(病理診断)となった.1症例目は第7病日,2症例目は第13病日に自己脈が回復し,恒久的ペースメーカを留置することなく体外式ペースメーカを抜去し,退院することができた.急性心筋炎は多彩な症状をとるものの,一般的には感冒症状や消化器症状などの前駆症状を伴うことが多く,左室収縮機能障害に伴う心不全や胸痛,心嚢水を伴うことが多い.体外式ペースメーカを比較的長期間使用することで恒久的ペースメーカ留置を回避することができた完全房室ブロック先行の急性心筋炎を経験したため,文献的考察を加えてここに報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 松野 幸博, 井上 優汰, 三ッ田 翔平, 梅田 幸生, 森 義雄
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 10 号 p. 1179-1183
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

     症例は78歳,女性.大動脈弁狭窄症および高度の僧帽弁輪石灰化を伴う僧帽弁狭窄症に対する二弁置換の手術適応とされ当科へ紹介となった.高齢で複合手術であることから,手術の低侵襲化を目的に,スーチャレス生体弁を使用する方針とした.僧帽弁輪の高度石灰化病変を可及的に除去した後,機械弁による僧帽弁置換術を施行した.続いてスーチャレス生体弁を用いて大動脈弁置換術を施行した.大動脈遮断解除後に房室間溝左心室側からの出血を認めたため左室破裂を疑った.再度心停止とした後,僧帽弁位機械弁を取り外し出血源を検索すると,僧帽弁後尖弁輪部に穿孔部を認めた.左室破裂と診断し,ウシ心嚢膜パッチで穿孔部を覆うように弁輪部を修復した後,再度僧帽弁位へ機械弁を縫着した.最後に大動脈切開縫合部を再切開し,スーチャレス生体弁の位置ずれ(migration)がないことを確認し終了した.

     スーチャレス生体弁は留置手技が簡略化される一方,留置後の弁周囲逆流,房室ブロック,migrationなどの問題がたびたび報告されている.これを回避するため,本例のような左室破裂の修復にあたっては良好な視野の確保ならびに愛護的な操作に努めることが重要であると考えられた.

     今回スーチャレス生体弁を用いた大動脈弁置換術と同時に施行した僧帽弁置換術中に生じた左室破裂の1例を救命した.

Editorial Comment
[症例]
  • 森川 史野, 山本 博貴, 原田 貴文, 飯間 努, 川田 篤志, 岡田 歩, 仁木 敏之, 山本 浩史
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 10 号 p. 1185-1192
    発行日: 2022/10/15
    公開日: 2023/10/15
    ジャーナル フリー

     症例:20歳,男性.主訴:左前胸部痛.既往歴:特記事項なし.家族歴:祖父 心筋梗塞.現病歴:X年Y-32日(当院搬送日をX年Y日とする),Y-3日にそれぞれ1回目,2回目のSARS-CoV-2ワクチン接種を施行した.Y-2日に発熱があったものの市販の解熱鎮痛薬内服で改善した.Y-1日早朝に胸痛を自覚したが自宅で経過観察,改善が乏しいためY日に救急要請,当院搬送となった.当院搬送時,心電図でⅠ,Ⅱ,aVL,V4-6誘導でST上昇,血液検査でCK 845 U/L,CK-MB 39 U/L,トロポニンT 0.866 ng/mLと心筋逸脱酵素の上昇を認め,急性冠症候群もしくは急性心筋炎を疑い冠動脈造影検査を施行した.主要冠動脈3枝に有意狭窄は認めず,急性心筋炎の診断で入院となった.入院後経過:入院後はアセトアミノフェン内服のみで胸痛の改善が得られ,循環動態,呼吸状態ともに安定していた.Y+1日に心筋生検を施行したが急性期の心筋炎を示唆するリンパ球浸潤は乏しく,Y+6日に施行した造影MRIでも心筋浮腫等の急性期心筋炎を示唆する所見は得られなかった.また,経過中に心筋炎の主要な原因になり得るウイルスペア血清を測定したが,ウイルス感染は否定的であった.入院後経過は良好で炎症反応,心筋逸脱酵素の陰性化,心電図でのST変化の改善を確認しY+10日自宅退院とした.以後は当科外来での経過フォローとし,Y+39日に造影MRIを再検,左室前壁から中隔にかけて軽度の遅延造影像を認めたため,SARS-CoV-2ワクチン接種に伴う心筋炎と診断に至った.

feedback
Top