心臓
Online ISSN : 2186-3016
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46 巻, 3 号
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OpenHEART
HEART’s Selection(非循環器薬の循環器への影響)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 小野 和臣, 矢島 和裕, 森 賢人, 吉岡 直輝, 山瀬 裕一郎, 重田 寿正, 堀部 秀樹, 日比野 剛, 横井 清
    2014 年 46 巻 3 号 p. 331-336
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     背景 : 既存利尿薬で改善しない心性浮腫に対し適応であるトルバプタンは, 腎臓の集合管において, バソプレシンのV2受容体への結合を選択的に阻害し, 水分のみを排出する水利尿作用を有する.  目的 : 心不全入院患者に対するトルバプタンの短期臨床効果を, 心不全標準的治療と比較検討した.  対象と方法 : 体液過多による心不全のために入院した74例の連続患者で検討した. 対象症例に対し, 既存心不全治療を行い, 効果不十分の症例に関しては主治医の判断のもとトルバプタンを追加した. トルバプタン投与群は45例で, 従来の心不全治療群 (コントロール群) は29例であった. 胸水が消失するまでの日数および心胸比率の減少の程度 (ΔCTR) を両群間で比較検討した.  結果 : トルバプタン投与群はコントロール群と比較して胸水改善日数 (3.15±1.62日vs 5.18±2.37日, p<0.001) が短く, ΔCTR (6.84±3.85% vs 3.81±2.92%, p=0.001) が大きかった. 両群間の背景を補正した多変量回帰分析においてもトルバプタン投与群はコントロール群と比較して, 胸水改善日数およびΔCTR (p=0.009およびp=0.002) で改善を認めた.  結語 : トルバプタンは従来の心不全治療と比較してうっ血性入院患者に対し有効であった. トルバプタンは, 従来の心不全治療抵抗性のボリューム・オーバーロード患者へのアドオンの治療として効果的で許容できる薬剤であると考えられた.
Editorial Comment
[症例]
  • 美甘 周史, 清川 甫, 佐藤 修司, 中神 隆洋, 鈴木 理代, 平野 圭一, 清水 一寛, 高橋 真生, 飯塚 卓夫, 杉山 祐公, 鈴 ...
    2014 年 46 巻 3 号 p. 339-347
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     症例は不整脈の既往のない54歳, 女性. 安静時胸痛を主訴に救急搬送. 心電図で急性心筋梗塞と診断し, 緊急冠動脈造影施行. 検査直前に心室細動をきたし電気的除細動を必要とした. 左前下行枝に高度狭窄を認め, 経皮的冠動脈インターベンション (percutaneous coronary intervention ; PCI) を施行. PCI後の心電図でQT延長を認め, 第2病日夜にモニターでtorsade de pointes (TdP) を認めた. 心電図では著明なQT延長を伴う巨大陰性T波出現. 心筋虚血解除後の再灌流による一過性変化と考えリドカイン持続投与とし, その後入眠しTdPの再発はみられなかったが, 第3病日の起床時よりTdPを繰り返し, electrical stormに陥った. 電解質異常や急性ステント血栓症を示唆する所見はなく, Mg, アミオダロン, β-blocker投与, 血中Kの正常上限保持に努め, electrical stormから脱した. 半年前の健康診断心電図ではnotchを伴うQT延長を認め, QT延長症候群の診断基準を満たしていた. 退院時の運動負荷心電図で, 延長していたQTは短縮し負荷終了後に再び延長したこと, TdPは情動ストレスや聴覚刺激を受けやすい覚醒時に頻発し, 入眠中は生じないことより, 先天性QT延長症候群のQT延長症候群2型 (long QT syndrome type 2 ; LQT2) と臨床的に診断した. 本症例は, これまで不整脈に伴う自覚症状がないことより, 無症候性のものが, 急性心筋梗塞早期再灌流によりQT延長が顕著化し, 難治性TdPを発症したと考えられる. 急性心筋梗塞の虚血解除後のQT延長は1~2%と稀だが1), 本症例のように著明なQT延長に伴う巨大陰性T波がみられる症例では難治性TdPに陥ることを念頭に管理すべきである.
Editorial Comment
[症例]
  • 石崎 勇太, 原田 晴仁, 阪上 暁子, 夕田 直子, 熊埜御堂 淳, 草場 健, 山口 倫, 新山 寛, 加藤 宏司, 池田 久雄
    2014 年 46 巻 3 号 p. 349-355
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     拘束型心筋症は, ①硬い左室の存在があり, ②心室拡大や心室肥大を伴わず, ③左室収縮能は正常または正常に近い収縮が保持されている, ④原因不明の左室拡張障害を基本病態とする心筋疾患である. 本症例は26歳ころから月経周期と関連して胸痛が出現するようになるが妊娠・授乳期に胸痛発作はなかった. 33歳時に冠攣縮誘発試験など受けたが異常は認められなかった. 39歳, 月経前後にST下降および陰性T波を伴う強い胸痛がありニトログリセリン錠の舌下が有効であった. 心エコー図検査では壁厚, 腔径, 左室収縮能は正常であり, 40歳時月経後の冠攣縮誘発試験や微小血管性狭心症の検査は陰性であった. しかしながら, 肺動脈楔入圧, 左室拡張末期圧は高値であり, 右室心筋生検では心筋細胞の肥大, 粗鬆化, 空胞変性, 置換性線維化などを認めた. ガリウムシンチグラムでは炎症性心膜・心筋疾患は否定的であり, ガドリニウム造影心筋磁気共鳴画像では左室心筋層の造影所見を認め心筋傷害が示唆された. 運動負荷試験では胸部違和感が出現し, 最大酸素摂取量の低下を認め潜在性心不全の所見と考えられた. 2次性心筋症を疑う検査所見はなかった. 拘束型心筋症の診断基準4項目を充足しており, 拘束型心筋症と診断した. 本症例においては, 月経周辺期の体液貯留および労作に起因する左室拡張末期圧の上昇が心内膜下虚血を引き起こし, 胸痛や心電図変化が出現したものと推察された.
Editorial Comment
[症例]
Editorial Comment
Editorial Comment
[症例]
  • 瀬名波 栄信, 上江洲 徹, 下地 光好, 赤崎 満
    2014 年 46 巻 3 号 p. 366-369
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     下肢末梢動脈における血管病変は閉塞性病変が多く, 動脈硬化を原因とした瘤形成は稀である. 今回, われわれは動脈硬化性浅大腿動脈瘤を経験した. 症例は66歳男性, 間歇性跛行, 左下肢疼痛を自覚し精査された. 造影CT検査で径30mmの左浅大腿動脈瘤を認めた. 瘤は中枢側で造影効果を認めたが, 瘤内はほぼ血栓化し, 閉塞所見を認めた. 瘤切除および自家静脈による血行再建術を行った. 切除標本では動脈硬化によるものと診断された. 浅大腿動脈は大腿深部に存在するため, 瘤破裂が初発症状となることも少なくない. 浅大腿動脈瘤においてはその解剖学的特徴をふまえた認識が重要である.
Editorial Comment
[症例]
  • 野村 高広, 山川 健, 川嶋 秀幸, 宮川 睦喜, 細越 巨禎, 齋藤 智久, 落合 弥奈, 前野 吉夫, 大槻 修司, 紺野 久美子, ...
    2014 年 46 巻 3 号 p. 372-376
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     症例は66歳, 男性. 2008年1月ごろより食後に悪心や顔面紅潮の前兆を伴う失神が出現したが放置されていた. 2010年12月ごろより食後15分から1時間に腹部膨満感の自覚とともに顔面紅潮, 悪心に引き続く失神を繰り返すようになり, 2011年1月上旬, 精査加療目的で当院入院となった. 失神の原因として起立性低血圧, 心原性, 脳血管性などは否定的であった. 24時間血圧心電図記録中, 食後約30分に顔面紅潮・全身発汗・嘔気とともに徐脈と血圧低下を認め, その後失神にいたったことが確認され, 失神は食後の状況失神であると診断した. 失神発作は常に食事の15分から1時間後に腹部膨満感を伴って発症していること, ミグリトールの開始後に発作が増加していること, ミグリトールの中止により発作が激減したことから, ミグリトールの副作用である腹部膨満が失神発作に関与した可能性が示唆された. αグルコシダーゼ阻害薬が失神の増悪因子として考えられた状況失神は稀でありここに報告する.
Editorial Comment
[症例]
  • 中山 泰介, 木下 肇, 菅野 幹雄, 黒部 裕嗣, 神原 保, 藤本 鋭貴, 北市 隆, 山田 博胤, 佐田 政隆, 藤田 博, 曽我部 ...
    2014 年 46 巻 3 号 p. 378-383
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     経静脈ペースメーカリードの前尖穿通により, 遠隔期に三尖弁の動きが障害され, 重症三尖弁逆流 (tricuspid regurgitation ; TR) をきたして手術した1例を経験したので報告する. 症例は, 83歳, 女性. 10年前に洞不全症候群にて経静脈的ペースメーカ植え込み術が施行された. 1年前より顔面浮腫と労作時呼吸困難が出現した. 経食道3D心エコー検査で, 三尖弁前尖を穿通する経静脈リードが弁尖の可動性を著明に制限しているために重症TRを生じていると診断した. 手術所見では, リードが前尖中央の弁腹を貫通し, 前乳頭筋と一体となって棍棒状に肥厚した線維束となり, 前尖中央に直接癒着し著明に弁機能を障害していた. 穿通したリードと傷んだ弁尖組織を可及的に切除し, 前尖を自己心膜で補填, 拡大し, DeVega法による弁輪縫縮術を施行し, ペースメーカを心筋リードに切り替えた. 術後しばらくは自覚症状の改善を認めたが, 1年後に再度TRの増悪をきたし三尖弁の生体弁置換術を施行した. 本例のように前尖を穿通する症例は極めて稀だが, ペースメーカ植え込み術時あるいは留置後早期に3D心エコーで経静脈リードの走行と三尖弁の形態と機能についてルーチンに精査しておくことが望ましい.
Editorial Comment
[症例]
  • 合田 雅宏, 宮本 正興, 友渕 佳明, 上野 雄二, 森 俊文, 西岡 武彦
    2014 年 46 巻 3 号 p. 386-391
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     症例は70歳代, 女性. 7カ月前より労作性呼吸困難を自覚するようになった. 受診時には, 聴診で胸骨左縁第2肋間に最強点を有する収縮期駆出性雑音, II音の固定性分裂を認めた. 経胸壁2D心エコー図検査で, 2次孔型心房中隔欠損症と肺動脈弁狭窄を認めた. 経胸壁3D心エコー図検査によって肺動脈弁の短軸断面を観察したところ, 二尖弁が肺動脈弁狭窄の原因と考えられた. 心臓カテーテル検査で右房レベルのO2 step upを認め, Qp/Qsは1.98で, 左-右シャント率は46.5%と計測された. 肺動脈弁の収縮期最大圧較差は約40mmHgであった. 以上より, 先天性二尖弁による肺動脈弁狭窄を合併した心房中隔欠損症と診断した. 心房中隔欠損孔の自己心膜パッチ閉鎖術と肺動脈弁交連切開術を施行した. 肺動脈弁が二尖弁であることを術中に確認した. 先天性二尖弁による肺動脈弁狭窄と心房中隔欠損症が合併した高齢症例は稀であり, 肺動脈弁の形態評価を行う際に経胸壁3D心エコー図検査は非常に有用であると考えた.
[症例]
  • 米本 由美子, 松山 高明, 橋村 宏美, 大郷 恵子, 池田 善彦, 佐藤 俊輔, 大原 貴裕, 藤田 知之, 小林 順二郎, 植田 初江
    2014 年 46 巻 3 号 p. 392-397
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     症例は74歳, 女性. 49歳時にリウマチ性弁膜症のため大動脈弁および僧帽弁置換術と左心耳縫縮術が施行された. 以後, ワルファリンを内服し, 61歳時には徐脈性心房細動のため恒久型ペースメーカを留置された. 70歳代からは軽度の心不全症状が出現し外来通院していた. 74歳時に夕食後に悪寒・倦怠感を訴えて救急外来を受診. 診察処置中に急激にショック状態となり死亡した. 病理解剖では多発性の出血性胃潰瘍を認め, これが直接死因と考えられた. 心臓の検索では心嚢内に孤立性の被包化された巨大な血腫を認めた. 血腫は左側房室接合部に付着し, 僧帽弁輪の左心耳縫縮部の周囲のみが左房壁と強固に癒着していた. 組織学的には縫縮されて遺残した左心耳組織に連続して血腫の被膜が形成されており, 左心耳の心筋あるいは心膜下組織からの緩徐な出血が原因と考えられた. 開心術後遠隔期の心不全では多くは心膜癒着による収縮性心膜炎の影響が考慮されるが, 稀に緩徐な出血による血腫などの占拠性病変の関与もあり, 経過観察で心陰影が拡大する症例では注意を要する. 本例は文献的には出血部位が明らかでないchronic expanding hematomaと呼ばれる病態が考えられ, 病理解剖により出血の成因となる所見を得たので報告する.
[症例]
  • 山崎 真敬, 小野口 勝久, 山城 理仁, 花井 信, 田口 真吾, 蜂谷 貴
    2014 年 46 巻 3 号 p. 398-403
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/03/10
    ジャーナル フリー
     われわれは右巨大冠動脈瘤を伴った先天性冠動脈瘻の1例を経験した. 症例は, 77歳, 女性. 発作性上室性頻拍による心不全で前医にて加療中, 胸部CT検査にて心後壁に80mm大の巨大腫瘤を認め当院に搬送された. 冠動脈造影にて右冠動脈末梢 (#4AV) に巨大な冠動脈瘤を認めた. 術前精査では冠動脈瘻の存在は証明できなかった. 冠動脈瘤により両心室が著明に圧排されており, 心不全の原因となった発作性上室性頻拍とも関連が疑われたこと, また瘤径が大きく破裂の可能性があることから手術適応と判断した. 体外循環, 心停止下に冠動脈瘤を切除し, 瘻血管を選択的に結紮した. 術後経過は良好で独歩退院となった. 冠動脈瘤が合併した先天性冠動脈瘻は, 多くの場合無症状で経過し, 時として心筋梗塞や破裂による心タンポナーデを発症することがある. 瘤径が大きい場合は手術を考慮すべきであるが, 冠動脈瘻根治のためには, 瘻孔の血流を遮断することが大切であり, 瘻血管の選択的閉鎖とともに体外循環下に開口部を確実に閉鎖することが必要である.
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