心臓
Online ISSN : 2186-3016
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47 巻, 10 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
OpenHEART
HEART’s Selection(非侵襲的冠動脈・心筋灌流評価法CT・MRIによる近未来診療  ―非侵襲的検査は、侵襲的検査の補助診断の立ち位置を超える)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • 石曽根 武徳, 伊藤 智範, 木村 琢巳, 石川 有, 阪本 亮平, 中島 悟史, 田代 敦, 房崎 哲也, 猪飼 秋夫, 岡林 均, 中村 ...
    2015 年 47 巻 10 号 p. 1180-1186
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー

     当センターでのバルサルバ洞動脈瘤破裂症例について, 術前症状, 術前合併心疾患, 瘤と破裂部位, 院内転帰について検討した. 対象は, バルサルバ洞動脈瘤破裂と診断された男性3例, 女性3例の計6例, 手術時年齢は27~61歳 (中央値43.5歳) である. 術前症状は, 動悸が最も多く4例に認められ, 破裂時にはうっ血性心不全合併が3例に認められた. 術前合併心疾患としては, 大動脈弁閉鎖不全症 (AR) および心室中隔欠損 (VSD) の両方を認めるものが1例, 大動脈弁閉鎖不全症 (AR) のみが1例, 心房中隔欠損 (ASD) 手術歴のあるものが1例であった. バルサルバ洞動脈瘤の発生部位は右冠尖 (RCS) が3例 (50%), 無冠尖 (NCS) が3例 (50%) であり, 左冠尖 (LCS) からの動脈瘤の発生はみられなかった. また, 破裂部位は, 右房 (RA) 3例 (50%), 右室 (RV) 3例 (50%) であった. 瘤と破裂部位の関係でみてみると, RCS→RVが3例, NCS→RAが3例であった. 全例が外科的手術を施行され, 死亡例はなく, 院内転帰は良好であった. バルサルバ洞動脈瘤破裂は稀な疾患であるが, 連続性心雑音を聴取した際には鑑別診断に必ず入れる必要がある. バルサルバ洞動脈瘤破裂について当センターでの成績と自験例を含め, 若干の文献的考察を加えて報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 丹羽 智, 藤野 晋, 河合 泰一, 藤岡 研佐, 馬渕 智仁, 野路 善博, 山口 正人, 青山 隆彦
    2015 年 47 巻 10 号 p. 1189-1195
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー

     症例は60歳女性. 貧血の精査目的に施行された骨髄穿刺で多発性骨髄腫の診断を得て後日結果説明予定であったが, 動悸と呼吸困難を主訴に当院へ救急搬送された. 来院時の心電図でaVRのST上昇および前胸部誘導のST低下・陰性T波を認め, 急性冠症候群と診断し同日緊急冠動脈造影検査を施行した. しかし, 冠動脈に器質性狭窄は認めず, 左室造影でびまん性壁運動低下を認めたため, 高血圧性左室肥大または多発性骨髄腫に伴う貧血進行による急性心不全と診断し, 心不全の標準的治療を開始した. 集中治療室での初期治療への反応は良好であり, 第3病日に一般病棟に転棟したが, 同日心室細動による院内心肺停止をきたした. 標準的蘇生術に反応し神経学的後遺症を残すことなく回復し, 後日植込み型除細動器移植術を施行した. 直腸生検でALアミロイドの沈着を認め, 症候性多発性骨髄腫および心アミロイドーシスによる急性心不全・心室細動と診断した. ボルテゾミブ・デキサメタゾン併用療法で血液学的効果とともに心不全の改善も認めた. 冠動脈が正常であるが, ST低下やQT延長など多様な心電図変化を呈し, その心電図変化の原因を特定できない心不全症例では, 頻度は少ないものの心アミロイドーシスを鑑別に挙げることが必要である.

Editorial Comment
[症例]
  • 辺 奈理, 志水 清和, 浅井 徹, 谷口 俊雄
    2015 年 47 巻 10 号 p. 1197-1202
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー

     無症候性冠攣縮に伴う心室細動を併発した症例を経験した. 症例は73歳男性で蘇生後の心電図ではBrugada症候群や早期再分極症候群, またQTc延長症候群を疑わせる心電図所見を認めず, 冠動脈造影では有意狭窄を認めなかった. 入院時には心エコー上左室収縮率は30%と低下しており, 低心機能に伴う心室細動併発を考慮したが, 経過とともに心機能は回復した. 心室細動をきたした原因検索に難渋したが, 入院経過中にモニター心電図でST上昇を認め, 12誘導心電図を施行したところ, Ⅱ, Ⅲ, aVFでST上昇を認め, 冠攣縮の自然発作を認めた. 患者本人は胸痛・胸部圧迫感・胸部違和感等の自覚症状を全く認めなかった. 心肺蘇生患者において無症候性冠動脈攣縮の自然発作を確認した症例は少なく貴重である. また, 治療として, 植込み型除細動器の適応については明確な基準はなく, 議論の余地はあるが, 本症例においては二次予防を目的に植込み型除細動器移植を行った.

Editorial Comment
[症例]
  • 小岩 弘明, 阿部 智絵, 竹内 剛, 池田 大輔
    2015 年 47 巻 10 号 p. 1205-1211
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー

     1例目は73歳男性. 健診で腎機能障害を指摘され当科を初診. 腎形態の評価目的で施行した腹部CTで直径6.5cmの腹部大動脈瘤 (abdominal aortic aneurysm ; AAA) を認めた. 動脈硬化危険因子はBrinkman指数450の過去喫煙のみであった. 診察室と家庭日中での血圧はいずれも高くなかったので, 危険因子検索のため夜間高血圧と睡眠呼吸障害 (Sleep disordered breathing ; SDB) の有無を検証した. 夜間の血圧はdipper typeであったが, 簡易睡眠呼吸モニタリングにて無呼吸低呼吸指数 (apnea hypopnea index ; AHI) が38.5/時と高値で, 重症SDBと診断した.

     2例目は63歳男性. 動脈硬化危険因子はBrinkman指数375の過去喫煙のみであった. 胆石摘出前の腹部CTで直径5.5cmのAAAを腎動脈分岐部以下に認めた. 1例目同様, 診察室と家庭日中の血圧は高くなく, 夜間高血圧も認めなかった. 簡易睡眠呼吸モニタリングでは, AHI 25.0/時の中等症SDBを認めた.

     2症例ともAAAに対し外科的治療を行った後, 睡眠呼吸専門外来に紹介となった. 高血圧のないSDBにAAAが合併した2例を提示し, 両者の因果関係を考察した.

Editorial Comment
[症例]
  • 良永 真隆, 林 睦晴, 横井 博厚, 藤原 稚也, 吉川 大治, 向出 大介, 杉下 義倫, 鎌田 智仁, 伊藤 丈浩, 多賀谷 真央, ...
    2015 年 47 巻 10 号 p. 1213-1218
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー

     ビタミンB1欠乏症, 特に衝心脚気は現代では非常に稀な病態であるが, 1990年代から食生活の変化に伴い若年者に加え, 高齢者の症例も散見されるようになった.

     症例は意識障害にて救急搬送された中年男性で, 胸水・腹水含め, 全身性の著明な浮腫を伴っていた. 心臓超音波検査では重度のび漫性左室収縮低下を認めたが, 生活歴・食事歴よりビタミン欠乏を疑い, ビタミン補充治療を施行するも改善に乏しかった. ビタミン利用障害の可能性も考慮し, 大量補充療法を施行したところ, 速やかな意識状態の正常化を認め, 浮腫も改善した. 最終的には心機能も正常範囲に回復し, 社会生活への復帰が可能となった. 改善後, ビタミンB1負荷検査にて, ビタミンB1の利用障害が認められた.

     本症例のような偏食を伺わせる生活歴を持った原因不明の循環不全においては, 高拍出性心不全の病態でなくても, 脚気心の可能性を念頭に置く必要がある. 通常のビタミン補充療法で改善を認めない場合でも, ビタミンB1の利用障害が存在している可能性を考慮し, 典型的なWernicke脳症の症状を呈さなくても, 心不全に意識障害を併発している場合には, 早期から高用量のビタミンB1投与も検討する必要があると考えられた.

  • 中島 大輔, 小菅 玄晴, 木村 悠, 吉田 純, 工藤 敏和, 鈴木 健一朗, 山田 崇之, 中田 耕太郎, 久保田 健之, 宮永 哲, ...
    2015 年 47 巻 10 号 p. 1219-1224
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー

     へパリンは血栓症の治療・予防薬として, 広く臨床で用いられている. しかし, 時にへパリンを原因とした血栓症 (へパリン起因性血小板減少症, heparin induced thrombocytopenia ; HIT) を惹起する. 症例は69歳男性. 自然気胸に対して胸腔鏡手術を施行, 軽快退院後自宅で呼吸困難感を自覚し, 当院受診. D-ダイマー高値であり, 造影CTにて肺塞栓と深部静脈血栓を認めたため入院した. 同診断のもと未分画へパリンの点滴静注を開始したところ, 投与5日で血小板が36×104/μLから28×104/μLと軽度減少した. しかし, 以後も血小板の減少は緩徐かつ軽度であった. その一方で, D-ダイマー高値は遷延した. 第11病日からへパリン点滴静注は中止し, HIT抗体を提出した. 当初は肺動脈血栓も縮小傾向であり, 4 T'S score上もHITを強く疑うものではなかったが, 第15病日再度呼吸困難感を認め, 造影CT上血栓の増大を認めた. 第11病日の時点でヘパリンの点滴静注は中止していたが, ヘパリン加生理食塩水による点滴ルートのフラッシュ (へパリンロック) は漫然と継続されていた. ヘパリンの完全中止以後D-ダイマー・血小板数ともに改善が認められ, 呼吸状態も改善した. その後造影CTでも血栓は縮小した. 本例のように血小板減少が緩徐な例も存在し, HITの存在を考慮した際にはヘパリンの中止・抗体の検索が重要である. また, へパリンを中止する際には, へパリンロックなど少量のへパリンにも注意すべきである.

  • 岡 直美, 尾上 紀子, 佐藤 大樹, 藤田 央, 山口 展寛, 石塚 豪, 篠崎 毅
    2015 年 47 巻 10 号 p. 1225-1231
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー

     症例は87歳, 女性. 慢性心不全に対してジギタリスが投与されていた. 嘔気・心窩部痛のため食事摂取が困難となり当院に搬送された. 来院時, 収縮期血圧60mmHg台のショック状態であり, ジギタリス中毒と脱水を疑い, 補液と昇圧薬を投与したが血圧は上昇しなかった. CTにて巨大肝嚢胞による下大静脈と左室の圧排, および, 左室流出路の狭小化を認めた. 心臓超音波検査で非対称性心室中隔肥大を認め, 連続波ドプラ法によって81mmHgの左室流出路圧較差を認めた. 左室流出路狭窄がショックの増悪因子であると考え, 緊急肝嚢胞ドレナージを行った. 穿刺30分後には左室流出路圧較差は16mmHgまで低下し, 循環動態は安定した. その後, 肝嚢胞の再拡大防止目的に嚢胞内にミノサイクリンを注入した. 退院時の左室流出路圧較差は6mmHgであった.

     本症例では脱水のみならず, 巨大肝嚢胞による心臓の左側変位と下大静脈の圧排が左室流出路狭窄を増悪させ, ショックの増悪に関連したと考えられた. 非対称性心室中隔肥大を合併し循環動態に与える肝嚢胞に対しては積極的な治療が必要である.

  • 尾原 義和, 津田 由紀, 福岡 陽子, 細木 信吾, 山本 克人, 田中 哲文, 大上 賢祐, 籏 厚, 三宅 陽一郎, 岡部 学
    2015 年 47 巻 10 号 p. 1232-1238
    発行日: 2015年
    公開日: 2016/10/13
    ジャーナル フリー

     症例は86歳, 女性. 2014年10月に呼吸困難と動悸を主訴に救急搬送された. 経胸壁心臓超音波検査で重症大動脈弁狭窄症と診断した. 症候性重症大動脈弁狭窄症に対して当院ハートチームで検討した結果, 経カテーテル的大動脈弁置換術の方針となった. 2015年2月に経カテーテル的大動脈弁置換術を施行, SAPIEN XT 23mmを留置した. 術後経過良好であったが, 第6病日に突然痙攣発作を起こした. 心電図モニターで頻回に房室ブロックを認め, 約10秒程度の心停止を繰り返した. 同日緊急永久ペースメーカー留置術を施行し, 症状は改善した. 今回, 経カテーテル的大動脈弁置換術後に遅発性に房室ブロックをきたし, 永久ペースメーカー留置術を施行した症例を経験したので報告する.

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