心臓
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54 巻, 4 号
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心臓リハビリテーション ~最近のエビデンスと実践~ 企画:神谷健太郎(北里大学 医療衛生学部)
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[臨床研究]
  • 柳清 洋佑, 山田 陽, 塚越 隼爾, 佐々木 啓太, 増田 貴彦, 西岡 成知, 伊庭 裕, 丸山 隆史, 栗本 義彦
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 4 号 p. 459-465
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

     背景:大動脈弁膜症に対する外科的人工弁置換術(AVR)は確立した手技である.しかし人工弁の宿命として,構造的人工弁劣化(SVD)や感染(PVE)のため再治療が必要となる場合がある.今回,当院における大動脈弁再置換術(rAVR)の治療成績について検討した.

     対象と方法:2009年1月から2019年12月までに当院にてAVRを施行された577症例のうちrAVRを施行された30例(男性19例/女性11例,平均年齢68.6±11.4歳)を対象とした.再手術の適応,術式,合併症および死亡率等について検討した.

     結果:再手術の適応はPVE 14例,SVD 8例,大動脈関連5例,パンヌス2例,重症弁周囲逆流1例.初回手術から再手術まで平均7.3年(0.08-30.8年).EuroSCOREⅡは平均25.8%(2.7-77.4%)と高値であった.30例中21例(70%)に付随手技が施行された.内訳は大動脈人工血管置換術14例,他弁手術10例,冠動脈バイパス術7例.主な周術期合併症は心筋梗塞4例,ペースメーカー留置4例,出血再開胸4例.在院死亡は7例(21%)で,死因は低心拍出量症候群3例,敗血症3例,心筋梗塞1例.死亡7例のうち5例はPVE症例で,3例は緊急手術であった.死亡7例のEuroSCOREⅡは非常に高値であった(平均45.9%).一方でPVE以外の死亡例は16例中2例(12.5%)で,いずれもStanford A型大動脈解離に対する基部置換術症例であった.

     結語:PVEに対する再弁置換術の成績は良好とはいえないが,死亡例は高リスク症例だった.一方,非PVEの死亡例は少なく,許容できる結果が得られた.

Editorial Comment
[臨床研究]
  • 遠藤 哲, 足立 正光, 太田原 顕, 川谷 俊輔, 網﨑 良佑, 中村 研介, 笠原 尚, 水田 栄之助, 尾崎 就一
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 4 号 p. 467-474
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

     背景:バルーン大動脈弁形成術(balloon aortic valvuloplasty;BAV)が有症候性の心機能障害を伴う重症大動脈弁狭窄症(severe aortic stenosis;SAS)の予後に及ぼす効果には相反する報告があるが,本邦での大規模な報告はない.

     目的:心機能障害を有する有症候性のSASに対するBAV後の長期予後を検討すること.

     対象および方法:対象は2016年3月から2019年12月の間にSASによる症状で入院し,BAVを行った心機能障害(左室駆出率<55%)を有する症例で,対照に正常心機能症例を用いた.SASの診断は経胸壁心エコーにより行った.主要評価項目は心臓死と心不全再入院,副次評価項目は非心臓死とした.

     結果:症例は9例で年齢88.6±6.8歳,観察期間21±12カ月,左室駆出率43±9%であった.重篤な合併症はなかった.SASの指標は6カ月後には前値との差は消失したが,1年後の左室駆出率と左室収縮末期径,左室拡張末期径,三尖弁逆流圧較差は有意に改善し,僧帽弁逆流の軽減を認めた.BNP値は経過中の増悪はなかった.心臓死と再入院は各1例で主要評価項目の回避率は1年100%,2年68.6%,副次評価項目の回避率は1年,2年ともに88.9%で,両項目とも正常心機能群との差はなかった.

     結論:BAVは心機能障害を有するSAS患者の心臓死や再入院を抑制する可能性がある.

Editorial Comment
[症例]
  • 小野 大樹, 安藤 祐, 山田 雄大, 田邉 弦, 鈴木 圭太, 山浦 誠, 井戸 貴久, 髙橋 茂清, 青山 琢磨
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 4 号 p. 477-484
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

     背景:小児の呼吸不全に対する使用から始まったECMOは,現在では重症心不全など循環不全に対するVA-ECMOの使用へ発展をした.今回,当院で循環不全に対してVA-ECMOを導入した症例の臨床的検討を行ったので報告する.

     方法:2015年から2019年までの5年間にVA-ECMOを導入した50症例に対し,後方視的に検討した.

     結果:性別は男性38例,女性12例で,平均年齢は70.9±15.6歳であった.原疾患は急性心筋梗塞が35例と最多で,急性心筋炎3例,特発性心室細動3例であった.一方,初期波形は心室細動が17例,無脈性電気活動ないし心静止が30例,心停止前の導入が3例であった.初期波形の比較では心室細動が無脈性電気活動ないし心静止に比べて,生存退院率は高かった(p<0.05).50例中24例がECMO離脱に成功し,15例が生存退院,うち12例が社会復帰した.合併症は出血が多く,穿刺部出血が最多で,その他,消化管出血,血胸などがみられた.ECMO離脱群(24例)と離脱不可能群(26例)を比較すると,離脱群で年齢が若く(p<0.05),ECMO導入直後のHbが高く(p<0.05),ECMO導入時に確保できる最大流量が多かった(p<0.05).

     結論:当院でのVA-ECMO治療成績を報告した.ECMO離脱の可否に影響を与える因子として,患者年齢に加えて,ECMO導入直後のHb,ECMO導入時に確保できる最大補助流量が挙げられ,出血コントロールの重要性が示唆された.

Editorial Comment
[症例]
  • 瀧川 雄貴, 椎野 憲二, 福岡 伴樹, 水野 亮, 服部 円香, 中嶋 千尋, 長坂 遼, 中島 三喜, 永原 康臣
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 4 号 p. 487-492
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

     68歳男性の直腸癌に対する予定開腹術の症例.術前評価においては心血管系の異常は指摘されていなかった.麻酔導入時に血圧低下を認めたため,エフェドリン4mgを投与し対応した.手術開始約30分後に再度血圧低下を認めたため,エフェドリン計16mgおよびフェニレフリン計0.3mgを投与したところ,20分後にモニター心電図でST上昇および完全房室ブロック所見を認め,その数秒後に心室細動に移行した.すぐに心肺蘇生を開始し,2サイクルで洞調律に復帰した.その後冠動脈カテーテル検査を施行し右冠動脈中間部に高度狭窄を認めたため,硝酸イソソルビド2mgおよびニコランジル2mgを冠注したところ狭窄は消失し心電図波形変化の改善を認めた.本症例は昇圧剤の使用が致死性不整脈を伴う冠動脈攣縮を誘発したと考えられたため,文献的考察を含め報告する.

  • 吉川 英治, 林 一郎, 加島 一郎
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 4 号 p. 493-498
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

     症例は51歳の男性.3年前に急性A型大動脈解離,大動脈弁閉鎖不全,僧帽弁閉鎖不全,Marfan症候群の診断で上行大動脈人工血管置換術,機械弁による大動脈弁・僧帽弁置換術を他院で施行した.3カ月前に捕捉された持続性心房細動に対して経皮的カテーテル心筋焼灼術を予定したが,経食道心エコー(TEE)で左心耳内血栓を認めた.ワルファリンによる抗凝固を強化するも血栓が退縮しないため,手術目的で紹介となった.僧帽弁位人工弁機能不全(SVD)の疑いもあったため,手術は再胸骨切開・心停止下での左心耳血栓摘除・切除術に加え,人工弁への介入も予定した.手術に向けてヘパリンブリッジを行うも,う歯を認めたため,その治療を優先する方針として手術を延期した.ワルファリンを再開するもPT-INR値2.5以上を得るのに時間を要し,結果的には術前まで約3週間のヘパリンとワルファリン投与となった.麻酔導入後のTEEで左心耳を観察したところ,血栓の消失が判明した.SVDへの介入は絶対適応ではなかったため,患者の希望を考慮して左小開胸下アプローチで左心耳閉鎖デバイス(AtriClip)による左心耳閉鎖術を施行した.術中のTEEで左心耳の閉鎖を確認し,術後12日目に退院した.

  • 新妻 健, 緑川 博文, 植野 恭平, 影山 理恵, 武富 龍一, 菅野 惠
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 4 号 p. 499-503
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

     下行大動脈にentryを有する逆行性A型大動脈解離(RTAAD)は,胸骨正中切開によるcentral repairではentryを切除することができず,胸腹部人工血管置換術といった侵襲的な治療を必要とする場合もあり,下肢虚血などの血流障害を有する場合は虚血再灌流するまでに時間を要する可能性がある.症例は37歳男性.突然の胸背部痛で救急外来を受診した.造影CT画像検査で上行大動脈から両総腸骨動脈(CIA)まで大動脈解離を認め,entryはTh.8レベルの下行大動脈に,re-entryは右CIAに存在し,RTAADと診断した.上行大動脈の偽腔は完全に血栓化していたが,下行大動脈以下の真腔の狭小化による下肢虚血を認め,緊急手術によるエントリー閉鎖が必要であると判断した.手術は,PETTICOAT technique(TX-D 46-164 mm)併用胸部ステントグラフト内挿術(TEVAR C-TAG 26-150 mm)を施行し,エントリー閉鎖と下肢血流の改善を確認した.本治療は従来の外科手術に比べ,より低侵襲かつ迅速な治療を可能にしたと考える.今後は,endoleakやre-entryの血流による残存解離腔拡大などを画像評価し,遠隔期の合併症や再介入の必要性を経過観察し評価していくことが重要と考えられた.

  • 岩﨑 司, 陣野 太陽, 加藤 泰之, 荒巻 和彦, 山根 正久, 小柳 俊哉
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 4 号 p. 504-511
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

     心室中隔穿孔は心筋梗塞後に発症する致死率の高い合併症であり,早期に手術を行う症例ほど予後が不良であるといわれている.今回,心筋梗塞後の心室中隔穿孔に対してIMPELLA CPを用いて内科治療を行い,待機的に手術を行うことで良好な経過をたどった症例を経験した.73歳女性が亜急性心筋梗塞と心室中隔穿孔の診断で入院となった.重度の心不全を呈していたため,IMPELLAを留置し待機的に手術を行う方針となった.IMPELLA留置に先行して冠動脈造影を行い,左前下行枝#7の99%狭窄病変を確認した.IMPELLA留置後心不全の改善を認めたため,第4病日にIMPELLAを留置した状態で手術し,第6病日にIMPELLAを離脱した.Swan-Ganzカテーテルを用いてIMPELLA留置前後の肺動脈圧やシャント血流を計測し,その変化を比較することでIMPELLAの効果を客観的に証明することができた.また,心室中隔穿孔にIMPELLAを留置した際の血行動態の評価指標として,肺体血流比(Qp/Qs)やシャント量を用いることは適切ではなく,特有のピットフォールがあることに注意しなければならない.

  • 賀来 文治, 桂山 恵理, 東 雅也, 茶谷 洋, 北川 直孝, 勝田 省嗣, 市川 智巳, 前田 宜延
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 4 号 p. 512-523
    発行日: 2022/04/15
    公開日: 2023/04/28
    ジャーナル フリー

     症例71歳男性.58歳時に好酸球性肺炎に罹患し,末梢血好酸球数23100/mm3と著明な上昇を認めた.この際に左室駆出率36%(Teich法)と低下を認めたため,心筋生検を含めて精査が実施されたが左室収縮能低下の原因は不明であった.その後も気管支喘息が寛解増悪を繰り返し,さらに好酸球増多症も持続したためプレドニゾロンの内服治療が継続された.69歳頃からプレドニゾロン内服継続下においても好酸球増多症のコントロールが不良となった.70歳時に胆管癌を発症して,膵頭十二指腸切除術と術後の放射線治療が実施された.71歳時に38℃台の発熱と全身倦怠感を主訴に救急外来を受診された.この際,末梢血好酸球数3100/mm3であった.心臓超音波検査では心室壁の肥厚は認めなかったが,左室の拡大と左室収縮能の高度低下(左室駆出率23%)を認めた.強心薬を開始したが,収縮期血圧70-80mmHg台のショック状態から離脱できなかったためIABPを挿入するとともに,心筋生検を実施した.心筋生検では,心筋細胞間および間質内に好酸球の浸潤と脱顆粒が認められた.さらに心内膜内にも集簇性となった好酸球浸潤が認められた.ステロイドパルス療法実施後に血行動態は安定化して,第10病日にIABPから離脱,約1カ月の経過でカテコラミンからも離脱することができた.しかしその後,プレドニゾロンを15 mg/dayまで減量したところ再び末梢血好酸球数が975/mm3と上昇傾向を示した.このため,IL-5阻害薬(ベンラリズマブ)の投与を開始した.プレドニゾロンとベンラリズマブの併用療法にて末梢血好酸球数は0/mm3の状態を維持できるようになった.今回,傍腫瘍症候群として顕在化した好酸球性心筋炎の1例を経験した.本症例で経験した臨床経過は好酸球増多症を有する患者を診療する上で参考になると考えられたため,ここに報告させていただいた.

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