心臓
Online ISSN : 2186-3016
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54 巻, 9 号
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OpenHEART
HEART’s Selection
循環器領域におけるデジタルヘルスの展望 企画:田村 雄一(国際医療福祉大学/株式会社カルディオインテリジェンス)
HEART’s Column
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HEART’s Original
[総説]
  • 外山 淳治, 渡邉 英一, 李 鍾國, 辻 幸臣, 鈴木 頼快, 大川 育秀, 鈴木 孝彦
    原稿種別: 総説
    2022 年 54 巻 9 号 p. 1014-1021
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     巨大陰性T波(<-1 mV)は脳血管障害,たこつぼ症候群や虚血再灌流傷害などの多様な病因により発生し,臨床的にはトロポニン上昇(軽微)とわずかなST上昇を伴う心筋気絶による無収縮が心尖部バルーニングとして表現される.脳血管障害とたこつぼ症候群では脳圧亢進や情動ストレスにより自律神経,とくに交感神経系の過緊張を介して心尖部心筋に分布する交感神経末梢からのnoradrenalineの過剰分泌とその再吸収阻害によるカテコラミン心筋障害が推定され,虚血再灌流傷害と同様に心尖部が心筋気絶となる.気絶心筋では細胞内Ca2+上昇による蛋白分解酵素calpainが活性化してIkr(hERG)チャネル機能不全を惹起し,再分極が極端に遅延するためQT延長と巨大陰性T波が発生する.しかし気絶心筋には周囲の健常心筋からギャップ結合を介して正常な心室興奮伝搬が進行できる程度に細胞内環境が保たれているので,心筋気絶は生存のための自己防衛反応であり巨大陰性T波もその反応の一環と推定される.

[臨床研究]
  • 頭司 良介, 川崎 俊也, 田中 克, 八木 良樹
    原稿種別: 研究論文
    2022 年 54 巻 9 号 p. 1022-1031
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     背景:近年,院外心停止(out-of-hospital cardiac arrest;OHCA)に対する体外循環補助(venoarterial extracorporeal membrane oxygenation;VA-ECMO)を用いた心肺蘇生(extracorporeal cardiopulmonary resuscitation;ECPR)が治療手段として普及しているが,最適な導入場所については検討課題の一つである.本研究ではECPRを施行した心原性OHCAを調査し,カテーテル治療室への直接搬送の利点と課題を検討した.

     対象と方法:2008年1月から2021年12月までに当施設でECPRを施行した心原性OHCAを後ろ向きに検討し,救急車からカテーテル治療室に直接搬送した群(catheterization room群;CR群)と救急初療室に搬送した群(emergency room群;ER群)に分け比較した.

     結果:CR群が22例,ER群が37例で背景は同等であった.CR群でECMO導入時の合併症が少なく(CR群:5% vs ER群:27%,p=0.004),位置異常は発生しなかった.ECMO管理中に発生した合併症は同等で,輸血関連の項目も統計学的に差はなかった.転帰はCR群で生存転院または退院,転帰良好ともに少なかったが統計学的には差がなかった(CR群:27% vs ER群:41%,p=0.402,CR群:18% vs ER群:32%,p=0.365).時間経過の比較では,CR群は病院到着からECMO開始の時間が早く(CR群:15分 vs ER群:21分,p=0.001),全例が救急隊覚知から60分以内にVA-ECMOが開始された.転帰良好に対する多変量解析では覚知からECMO開始までの時間と相関関係にあった(オッズ比:0.900,95%信頼区間:0.809-0.976).

     結論:心原性OHCAに対するECPRにおいてカテーテル治療室への直接搬送は,ECMO導入時の安全性および確実性の向上と時間短縮の面で有用であった.さらに良質なECPRを目指すためにECMO導入中の胸骨圧迫の質を評価する必要がある.

Editorial Comment
[症例]
  • 湯田 健太郎, 緑川 博文, 太田 和寛, 滝浪 学, 植野 恭平, 菅野 恵, 大杉 純, 藤生 浩一
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 9 号 p. 1034-1039
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     症例は66歳女性.1年前から労作時息切れを認め,症状の増悪があることから近医受診し心房細動を指摘,カテーテルアブレーション目的に前医紹介となった.前医の造影CTで右肺動脈腫瘤性病変を指摘され,当院呼吸器外科紹介となった.人工心肺下に右肺動脈切除を伴う右肺全摘を施行されたが,術後9カ月の造影CTで肺動脈主幹部に腫瘍の再発を認めた.再度の外科手術はリスクが高いと判断し,肺動脈血管内治療を施行する方針とした.右大腿静脈穿刺で肺動脈にアプローチし,ステントグラフト(VIABAHN® VBX)を2個留置した.術後CTでステントグラフト中枢側が十分に腫瘍をカバーできておらず,術後11日目に同部位にベアステント(SMART Control®)を留置し,肺動脈腫瘍を全周性にカバーした.術後放射線治療を開始し,3カ月後の造影CTで肺動脈内狭窄は認めておらず,現在当院呼吸器外科外来通院中である.

  • 久保田 義朗, 角谷 誠, 寺尾 侑也, 中西 智之, 福田 旭伸, 伊藤 達郎, 嘉悦 泰博, 澤田 隆弘, 白井 丈晶, 白木 里織, ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 9 号 p. 1040-1046
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     症例は50歳代男性.1年前より安静・労作に関係なく胸部圧迫感を認め,頻度が増してきたために当科紹介となった.運動負荷201Tl心筋シンチグラムを施行し,負荷中に胸痛および心電図変化を認め,左前下行枝領域に虚血性変化も認めた.冠動脈造影を行うも有意狭窄はなく,左室造影も正常だった.運動誘発性冠攣縮性狭心症を疑いベニジピン錠の内服を開始した.その後症状は出現せず,約40日後に再度運動負荷201Tl心筋シンチグラムを施行したところ,負荷中に胸痛および心電図変化はなく,内服開始前に認めた左前下行枝領域の虚血は認めなかった.今回我々は運動負荷201Tl心筋シンチで運動誘発性冠攣縮性狭心症と診断し,内服治療効果を証明しえた貴重な1例を経験したためここに報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 永田 麻美, 足利 多貴子, 薮 志帆, 川﨑 達也
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 9 号 p. 1048-1053
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     多職種から構成される心不全チームは予後改善に重要な役割を担う.しかし退院後の環境は多様で,入院中の指導内容の継続が困難である場合が少なくない.今回,心不全を早期に再発した症例に対して院内外の多職種連携を行い,再入院中に退院後の生活を見据えた個別化医療介入が再発防止に奏功した1例を経験した.住宅型有料老人ホームに入所中の91歳の女性が,呼吸困難感を主訴に当院の救急外来に搬入された.3日前まで高血圧性心疾患による慢性左心不全のため当院の循環器内科に入院していた.初回入院中には心不全チームが介入して安定した状態で退院したが,退院後は血圧管理や減塩食継続が容易ではなかったことが判明した.そこで再入院時には,退院後の血圧上昇を想定した塩分負荷食や内服調整など患者の生活スタイルに合わせて継続可能な管理を実施した.その後は,血圧上昇をきたしやすい冬季を含む半年が経過したが,再々入院や救急受診はなく住宅型有料老人ホームで安定した生活を送ることができている.

Editorial Comment
[症例]
  • 下山 由希子, 松添 弘樹, 佐藤 俊輔, 竹重 遼, 小西 弘樹, 松本 晃典, 西尾 亮, 小澤 牧人, 松本 大典, 高石 博史, 莇 ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 9 号 p. 1057-1064
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     症例は71歳男性.特記すべき通院歴,既往歴なし.約1カ月前に他院で肺炎の診断で入院加療を行い,軽快し退院するも,徐々に増悪する全身倦怠感と発熱を主訴に当院救急外来を受診した.胸部単純CTで両側肺野に多発する小浸潤影を認め肺炎の再燃疑いで入院した.血液培養よりメチシリン感受性黄色ブドウ球菌が検出され,心エコー図検査で漏斗部型心室中隔欠損症に加えて,右室流出路に疣贅を疑う像と感染に続発したと思われるValsalva洞の穿孔,肺動脈弁穿孔が疑われた.また左室拡大と軽度から中等度の僧帽弁逆流も認めた.胸部X線画像で肺うっ血を認め右心カテーテル検査で肺体血流比が3.45であるも,肺血管抵抗の著明な上昇はなく体血圧は維持され左心不全症状は軽度であったことから,利尿薬の内服と抗生剤の点滴加療を先行した.第54病日にValsalva洞穿孔部と心室中隔欠損のパッチ閉鎖術および肺動脈弁尖穿孔部の縫合閉鎖術を施行し,術後経過は良好であったため第68病日に自宅退院した.敗血症性肺塞栓症が疑われる場合は,右心系の感染性心内膜炎および背景となる心疾患を疑い,入念に心エコー図検査を行うべきと考える.

Editorial Comment
[症例]
  • 大谷 啓太, 小倉 理代, 栗本 真吾, 瀬野 明穂, 元木 康一郎, 當別當 洋平, 宮島 等, 弓場 健一郎, 高橋 健文, 細川 忍, ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 9 号 p. 1066-1071
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     症例は42歳,女性.来院3日前に38℃台の発熱,倦怠感を自覚した.解熱後も倦怠感は持続し,嘔吐,下痢症状が出現したため前医を受診,経過観察入院した.同日夕方血圧低下,徐脈を認めたため当院へ紹介搬送された.CK値が1268 U/Lと上昇しており,心電図で完全房室ブロックを認めたこと,経胸壁心エコーで心筋全体の浮腫とびまん性左室壁運動低下を認めたことから急性心筋炎が疑われた.カテコラミン投与下でも血圧維持が困難であり,補助循環として緊急的にImpella CPと一時ペーシングを留置した.心筋生検,冠動脈造影を施行し冠動脈には狭窄病変を認めなかった.ICUで集学的治療を継続しカテコラミン投与下で収縮期血圧100mmHg程度を維持,翌日正常洞調律に復帰した.CK値は依然高値のまま推移したため第2病日よりステロイドパルス療法,免疫グロブリン療法を開始した.徐々に心機能改善し,第5病日にImpella離脱,カテコラミン離脱後も収縮期血圧が保たれるようになった.また,経胸壁心エコー検査では当初30%程度であった左室駆出率が,正常まで改善し,心筋浮腫も消失した.順調に経過し第25病日に独歩退院が可能であった.

     近年,Impellaの導入により良好な予後が得られた症例報告が増加している.今回,Impellaによる補助循環が有効であった劇症型心筋炎の症例を経験したため報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 中矢 雄一郎, 東 晴彦, 井上 勝次, 石村 泰裕, 川上 大志, 永井 啓行, 西村 和久, 池田 俊太郎, 北澤 理子, 波呂 卓, ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 54 巻 9 号 p. 1074-1081
    発行日: 2022/09/15
    公開日: 2023/09/28
    ジャーナル フリー

     症例は65歳の男性.食欲不振と両下腿浮腫を主訴に前医を受診した.精査加療目的で当院消化器内科を受診し,腹部超音波検査で心嚢液の貯留を指摘されたため,循環器内科を紹介受診した.心臓超音波検査で全周性に多量の心嚢液貯留を認めたため,心嚢穿刺を施行した.細胞診パパニコロウ染色標本で少数の異型細胞を認めたものの診断に至らず,心嚢液セルブロック標本を作製した.免疫染色ではCD20およびCD79a陽性,HHV8陰性であり,原発性滲出液リンパ腫様リンパ腫と診断し,化学療法を開始した.治療後は心嚢液の再貯留を認めず経過良好である.今回,原因不明の心嚢液貯留に対して心嚢液細胞診塗抹標本では診断を確定することができなかったが,セルブロックを作製することで原発性滲出液リンパ腫様リンパ腫と診断し得た貴重な1例を経験したので報告する.

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