心臓
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13 巻, 6 号
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  • 心筋虚血に基づく陰性U波の実験的再現とその成因
    傅 隆泰, 加藤 紀久, 高橋 宣光
    1981 年 13 巻 6 号 p. 651-660
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    狭心発作に伴って出現する心電図陰性U波の成因を検討するため犬心を用い実験し以下の成績をえた. 1) 陰性U波は冠動脈閉塞後,あるいは閉塞解除後の1時期に虚血辺縁あるいは中心部の心外膜面に出現した. 2) 陰性U波出現前後の心拍数,動脈圧,左室拡張期圧には有意な変化がなかった. 3) 陰性U波出現時のT波の極性は陰,陽,さまざまあり,またQ-aU時間はQ-aT時間の変化に連動しなかった. 4) 期外収縮後の左室収縮期圧の増高および同dp/dtの増強に伴い陰性U波の出現・増大を認めた. 5) 無 K+-Tyrode液の冠動脈内注入は陰性U波の消褪を.また高 K+-Tyrode液の注入はその出現をもたらした.以上の成績に若干の考察を加えた結果,陰性U波は虚血部心筋に起源し,左室の収縮および拡張に伴う虚血部心筋の受動的伸展およびその後の収縮による閾値下脱分極(後電位)の発生が直接の成因であり,また虚血に伴う細胞外K+増加がその成立に重要な役割を果すと推測された.
  • 刺激伝導系の組織学的研究
    北野 幸英, 杉浦 昌也, 大川 真一郎, 平岡 啓佑, 伊藤 雄二, 藤岡 俊宏, 三船 順一郎, 上田 慶二
    1981 年 13 巻 6 号 p. 661-670
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に合併する各種伝導障害は予後を左右する一因子でありその機序の解明は重要である.われわれはこれら伝導障害の形態学的根拠を明らかにすることを目的として以下の研究を行った.対象は当院における連続剖検1000例を基礎とした.急性心筋梗塞82例中伝導障害を呈した24例.Levに従って房室伝導系を連続切片法により検索した.3°房室ブロックについては下壁梗塞例は房室結節部障害2例,房室束貫通部ないし分岐部障害3例.wide QRSの3例はすべて両脚障害を呈し,梗塞が心室中隔の前方まで及んだ結果であり,前壁梗塞に伴う2例は両脚障害であった.右脚ブロックは6例中5例が左脚前枝ブロックを伴い,全例前壁梗塞に合併,1例は後枝ブロックを伴い広汎な前壁中隔梗塞が部分的に下壁に及んだためと考えられた.左脚ブロックの2例は前壁,心内膜下梗塞に合併し以上の脚ブロック7例はすべて房室束分岐部より以下の末梢部の障害によるものであった.
  • 鈴木 章夫, 須磨 久善
    1981 年 13 巻 6 号 p. 671-678
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠拡張剤の歴史は古く,近年では種々の異なった作用機序を有する薬剤が臨床に用いられている.しかしこれら冠拡張剤がA-Cバイパス術後のグラフト血液量(B.G.F.)にいかなる影響を及ぼすかを検討した報告は少ない.今回われわれは上記の点に関してIsosorbide Dinitrate(I.S.D.N.),Dipyridamole, Nifedipineの静脈内投与による効果を検討したので報告する.
    I.S.D.N.投与を試みた4例では全例が動脈圧の低下とB.G.F.の減少を示したが.Dipyridamole投与5例は全例動脈圧の低下に反してB.G.F.の著しい増加を示した.Nifedipine投与を試みた4例では動脈圧は低下傾向を示したがB.G.F.の変動に一定の傾向は認められなかった.
    I.S.D.N.とDipyridamoleは冠状動脈に対する作用部位が異なることが知られており,今回示し得たB.G.F.に及ぼす正反対の効果は両者の冠状動脈末梢血管抵抗に対する影響の相異に起因するところのものであろうと考えられ若干の考察を加えた.
  • 多変量解析による分析
    日浅 芳一, 野坂 秀行, 伊藤 幸義, 高地 恭二, 加藤 達治, 小形 善樹, 服部 隆一, 西村 健司, 延吉 正清, 上松 弘明
    1981 年 13 巻 6 号 p. 679-687
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    冠動脈造影を施行した674例につき,risk factorの冠動脈硬化に及ぼす影響について多変量解析を用いて分析した.全例についての検討では,年齢,総コレステロール,高血圧がriskとして高い値を示した.年代別の検討では,若年者はrisk factorの関与が小であった.中年者では高血圧が,老年者では総コレステロールがriskとして大であった.114例の陳旧性心筋梗塞症例全例の検討では,年齢,性,高血圧がriskとして大であった.このうち中年者は喫煙が,老年者は総コレステロールが強いriskであった.これらrisk factorの有意な狭窄分枝数に及ぼす影響は,冠動脈硬化スコアのそれに比し小であった.
    risk factorの数が増大するに従い,冠動脈硬化の程度は増加した.年代が大になるに従い,多枝疾患の占める割合がやや多くなる傾向にあったが,基本的には1枝疾患の占める頻度が大であった.
  • 福井 須賀男, 佐藤 秀幸, 扇谷 信久, 三宅 佐栄子, 佐藤 邦友, 南野 隆三, 島津 敬
    1981 年 13 巻 6 号 p. 688-693
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心筋梗塞症例の運動負荷時の左室ポンプ機能を把握するために,心筋梗塞症55例を対象に仰臥位自転車エルゴメーターによるsymptom-limited多段階運動負荷試験を行い,運動負荷前後での血行動態諸量(心拍数,血圧,肺動脈楔入圧,動静脈酸素較差)を測定し,得られた血行動態諸量と冠動脈病変,梗塞量との関係を検討した.
    その結果,(1)安静時の血行動態諸量からは運動負荷後の血行動態諸量の値は予測できなかった.(2)運動負荷後の肺動脈楔入圧が高く,1回拍出係数が低値である左室ポンプ機能の悪い群は,左室ポンプ機能の良好な群に比し,運動耐容量は小さかった.(3)運動負荷後の左室ポンプ機能の悪い群では,良好な群に比し,多枝血管病変を有する例が多く,梗塞量も大きかった.
    以上の結果より,心筋梗塞後の左室ポンプ機能を把握するためには運動負荷前後の血行動態諸量の測定が有用であり,運動負荷時の左室ポンプ機能には冠動脈病変,梗塞量が関与することが示唆された.
  • 全 勇, 安藤 正彦, 門間 和夫, 中沢 誠, 高尾 篤良
    1981 年 13 巻 6 号 p. 694-702
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    生後12カ月以内に心不全症状を発症した13例の大動脈弁狭窄症患者の理学所見,検査所見,病理形態について検討を行い,文献的考察を加え報告した.
    大動脈弁の形態は2弁性が8例,dysplastic valveが3例,1弁性が2例であったが,2弁性8例中6例は粘液腫状肥厚を示していた.大動脈弁輪周径は小さい症例が多かったが,左室内腔は拡大している症例が多かった.
    合併奇形としてはEFE,大動脈縮窄,MRなどの他にPDA,ASD(II),TRがあった.
    大動脈弁交連切開術施行例は4例で1例のみが生存している.
  • 心奇形合併の有無と血行動態について
    門間 和夫, 高尾 篤良, 安藤 正彦, 中沢 誠, 相羽 純, 金谷 真弓, 木藤 信之, 柴田 利満, 清水 隆, 竹内 東光, 上原 ...
    1981 年 13 巻 6 号 p. 703-712
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    1966~80年に入院・検索を受けた各種の先天性大動脈縮窄症154例について.合併心奇形・血行動態・手術成績を報告した.重篤な心内奇形を合併しない54例の血行動態は上肢血圧と上行大動脈内圧の著しい上昇と下肢血圧・下行大動脈内圧の脈圧減少を示し,肺動脈収縮期圧は55mmHg以下で,手術成績は良好であった.重篤な心内奇形を合併する100例の合併心奇形はVSD 71例,各種の大血管転位17例,その他で,高度の肺高血圧と心不全を合併し,上行大動脈圧上昇は軽度で,手術成績は生後6カ月末満の乳児でやや不良であった.VSD+COA+PHは生後2-3カ月で肺血管抵抗低下に伴う大量の左-右短絡と心不全を生じるが.その後は急速に肺血管閉塞病変が進行し,早期Eisenmenger化が認められた.
  • 重信 雅春, 杉山 章, 山本 満雄, 青景 和英, 前田 直俊, 野村 修一, 妹尾 嘉昌, 寺本 滋
    1981 年 13 巻 6 号 p. 713-718
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    日本におけるLillehei-Kaster弁の歴史は浅く,その評価は下されていないのが現状である.岡山大学第2外科では,28例の大動脈弁置換術についてLillehei-Kaster弁を使用した.これらをNo.16A使用群とNo.18A使用群の2群に大別し,各群について,臨床症状や心エコー図による術前後の心機能の変化を検討し,さらにLillehei-Kaster弁に関係した術後の合併症の有無について調査することにより,Lillehei-Kaster弁の手術成績について述べてみたい.
    全般的に,18A群では,臨床症状のみならず,心機能而においても良好な改善を示し,血栓症および塞栓症などの合併症もみられず,人工弁自体の機能不全も経験されておらず,比較的短期のfollow-upながら,満足すべき結果をえた.16A群については,臨床症状の改善度は18Aに比して,やや劣っていたが,心機能面ではその改善度には有意の差はみられなかった.
  • 宮本 武, 中村 功, 深川 和英, 鵜木 哲秀, 賀屋 茂, 坂本 裕二, 倉重 洋二郎, 柳原 照生, 伊藤 直美, 秋月 真一郎
    1981 年 13 巻 6 号 p. 719-724
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    心腔内静脈瘤の報告は少なく,本邦での報告例はみあたらない.われわれは51歳の男子で左右両心不全の状態で入院し,治療に抵抗し死亡し,剖検時に右心房に直径2cmの静脈瘤と右肺下葉に拇指頭大の出血性梗塞がみられた.文献的考察を若干加え報告した.
  • 横須 賀努, 福田 圭介, 小島 勲, 岡田 了三, 北村 和夫, 及川 皓伴, 松本 道夫, 橋本 敬祐
    1981 年 13 巻 6 号 p. 725-731
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,男性で,動悸・息切れを主訴として入院した.眼瞼浮腫,頸静脈怒張を認め,肝を3横指触知し心尖部にLevine II度の駆出性収縮期雑音およびIII音を聴取した.胸部X線では心胸郭比64%と著明な心拡大を呈し,心電図は低電位,右脚ブロック,左軸偏位を示し心エコー図および心血管造影検査では左室内腔の拡大および収縮力低下を示す所見を得,うっ血型心筋症と診断し治療を開始したが,第19病日に急死した.剖検所見は心重量530gで,両心室の拡張性肥大を認め,心筋内に著明な鉄の沈着を認めた.肝・膵・腎・胃にも同様の鉄の沈着を認め,肝は軽度の線維化,脂肪変性,膵は著明な萎縮・脂肪侵潤の所見を示し,病理学的にヘモクロマトージスと診断された.われわれはヘモクロマトージスに特徴的な糖尿病,肝硬変,皮フの色素沈着を認めず,進行性のうっ血性心不全で死亡した,若年者におけるヘモクロマトージスの1剖検例を経験したので報告する.
  • 李 源台, 小柳 左門, 光武 新人, 中島 康秀, 中垣 修, 菊池 裕, 中村 元臣, 田中 二郎, 徳永 皓一
    1981 年 13 巻 6 号 p. 732-738
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    急性心筋梗塞に心室中隔穿孔が合併すると心不全が急速に悪化し重篤な転帰をとることが多い.緊急早期手術を主張するグループもあるが一般的には発症4-6週以降の方が安全性が高いと考えられている.最近,われわれは心室中隔穿孔により心原性ショックに陥った患者にドブタミン(dobutamine,DOB),亜硝酸製剤,利尿剤などの集中治療を施して辛うじて生命を維持して瘢痕形成を待ち,心室中隔発生後32日目に穿孔閉鎖術,心室瘤摘除術に成功した症例を経験した.本例は以後も良好な経過をとり,術後2年を経た現在,発症前の職場に復帰し正常な社会生活を送っている.
    ドブタミンと亜硝酸製剤との併用は急性期の重症心不全を改善させ,手術時期を延ばすことに役立ったと考えられた.
  • 斉藤 公明, 郡 義隆, 山辺 裕, 玉田 和彦, 西村 芳高, 浜重 直久, 稲留 哲也
    1981 年 13 巻 6 号 p. 739-744
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    解離性胸部大動脈瘤の胸腔内破裂は予後がきわめて不良であり,これにより急死を免れ,保存的治療のみで長期生存し得た報告は数例にすぎず,かかる症例は非常間にまれと考えられる.今回,左胸腔内出血を生じながら急死を免れ,発症より12年,破裂出血より5年1カ月以上のきわめて長期にわたり,保存的治療のみで社会生活を送っている解離性胸部大動脈瘤の1例を経験したので報告する.症例は68歳の男性で,昭和43年5月,胸背部痛の初回発作があり治療を受けたが,昭和50年10月26日,大動脈瘤破裂により左側全血胸を生じショックに陥った.保存的治療により幸いにも急死を免れ,降圧療法を続けながら社会復帰したが,昭和54年12月,ふたたび胸痛発作を生じ当院入院.X線上,瘤は左胸腔上半部全体を占める巨大陰影に膨大し,大動脈造影ならびに胸部CTにて巨大嚢状解離腔と著明な血栓形成を確認し,解離性胸部下行大動脈瘤と診断.降圧療法にて症状軽快し社会復帰し得た.
  • 鈴木 久美子, 菅原 智子, 下野 恒, 吉田 泉, 鈴木 政彦, 笹 尚
    1981 年 13 巻 6 号 p. 745-750
    発行日: 1981/06/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    胸痛発作を主訴とし,特徴的な心雑音を欠いた冠状動脈肺動脈異常交通症の2例を経験した.うち1例は心内膜下梗塞と推定される胸痛発作を伴っており,比較的珍しい症例と思われるので報告する.1例は47歳女性で,約1時間に及ぶ長距離の長電話の直後,約30分間持続する胸痛発作をもって発症.その後の経時的な心電図変化より心内膜下梗塞が強く示唆され,発症1カ月後に施行した選択的冠状動脈造影により冠状動脈肺動脈異常交通症と診断された.他の1例は42歳女性で,安静時胸痛発作を主訴とし,選択的冠状動脈造影により冠状動脈肺動脈異常交通症と診断された.心内膜下梗塞の発症機序についてはcoronary steal現象が主因と思われ,他に冠状動脈硬化,一時的な血圧上昇による心筋酸素需要の増大などの関与が考えられた.本症は手術成績もよく,有症状例や,運動負荷により虚血性心電図変化をみる症例には積極的に手術治療を考慮すべきと考える.
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