心臓
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39 巻, Supplement4 号
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  • 絈野 健一, 夛田 浩, 内藤 滋人, 佐藤 千鶴, 後藤 貢士, 田中 真一, 平松 茂樹, 横川 美樹, 橋本 徹, 梶波 康二, 大島 ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 3-9
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性. 50歳時に右室梗塞を伴う広範囲心筋梗塞(右冠動脈近位部完全閉塞)を発症. 経皮的冠動脈形成術(PCI), および経皮的心肺補助装置(PCPS)にて救命された. 同年, 心室細動を発症し, 同年植込み型徐細動器 (ICD:VVI型)を植え込んだ. 58歳時より胸水貯留を伴う心不全 (NYHA分類III度)のため, 2~3回/月の入退院を繰り返した. 平成18年8月, 心不全加療目的に入院. 心電図上, 右室ペーシングにより QRS幅は190msと延長, また, 超音波検査にて, 右房, 右室は著明に拡大し, 左室駆出率 (LVEF)8%と左室収縮も著明に低下, また組織ドプラ法にて, 有意な心室内伝導遅延を認めた. VVIペーシングから, DDDペーシングへの Upgrade術, および心臓再同期療法を施行. 手術時, 右房は著明に拡大し, 全体に無低電位で右房内にペーシング, センシングに適する部位は認めなかった. しかしながら, 冠静脈洞近位部に心房電位の感知, およびペーシング閾値が共に良好な部位を認め, 心房リードを留置した. CRT後, QRS幅は160ms, LVEFは24%に改善, また胸部X線上, 心臓胸郭比の縮少 (71→65%), 血清BNP値の低下 (1,340→729pg/mL)を認め, 心不全症状もNYHA I度に改善した. 退院後, 10カ月間の経過観察中, 心不全による入院,および心室頻拍・心室細動は認めない.
  • 長田 圭三, 高木 明彦, 中野 恵美, 渡邉 義之, 龍 祥之助, 岸 良示, 中沢 潔, 三宅 良彦
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 10
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性.2002年から拡張型心筋症の慢性心不全と徐脈頻脈症候群のためペースメーカーを植え込み通院している. 2006年8 月ころより持続性心室頻拍があり,心不全のコントロールも不良となった.9月, CRT-Dの方針とし,心臓電気生理検査, CRT-D植え込み術を行った.左鎖骨下静脈は閉塞していた.また右房はstandstillであったため,右側より VVI typeのCRT-D植え込みを行った.右室電極は右室心尖部(RV)に,左室電極は後側壁枝(LV)に留置した.LVの単極ペーシング閾値は0.75V×0.5msecで,最大刺激でもtwitchingを認めなかった.しかし,ICDに接続して両室ペーシングを行うと 1.5V×1.0msec でtwitchingが起きた.後側壁枝の選択,近位,遠位の選択を試み,また右室コイル位置も可能な限り移動させたが, 1.5V-3.0V×1.0msecでtwitchingが生じた. 前側壁枝留置時で最大刺激でもtwitchingは起きなかった.QRS幅は141msecと最も短縮していた (RV単独206msec, 後側壁枝および RV 183msec). CRTでは横隔膜神経刺激が問題となることが多い. 本例は双極ペーシングでのみ起きた. また通常左室ペーシングには側壁枝あるいは後側壁枝が至適とされ, 本例では2枝の近位,遠位を試みたが, twitchingを防げなかった. 結果的には前側壁枝で最短QRS幅のペーシングが可能であった.
  • 杉安 愛子, 野上 昭彦, 小和瀬 晋弥, 荻ノ沢 泰司, 窪田 彰一, 山崎 哲郎, 中嶋 直久, 青木 元, 玉木 利幸, 柚本 和彦, ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 11-16
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:65歳,男性.2003年7月,心不全で入院.急性心筋炎が疑われ,左室駆出率は35%,中等度僧帽弁閉鎖不全(MR)を認めた.入院時はQRS幅80msecの頻脈性心房細動(AF)であった.第2病日に心拍数46/分の補充調律(QRS幅120msec)を伴う完全房室ブロック(CAVB)が出現,両心室ペースメーカー(VVI型)を植え込んだ.心不全,MR軽快後にAFとCAVBには変化なく,抗不整脈薬非投与で経過観察していた.2004年8月に洞調律への復帰,洞調律下でもCAVBであり心室ペーシング下に洞調律が維持された.2006年5月,心房電極を追加しDDD型に変更した.その後もAFは全く認められない.心臓再同期療法(CRT)は心不全を改善するが,AFの予防効果に関しては結論が出ていない.本症例はCRT施行後1年で持続性AFが洞調律に復帰した症例で,その機序を考える上で貴重と考えられ報告する.
  • 大野 正和, 鈴木 誠, 水上 暁, 岩塚 良太, 熊坂 礼音, 一原 直昭, 宮地 浩太郎, 長堀 亘, 荒川 鉄雄, アルゴハリ マグデ ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 17-21
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.Adams-Stokes発作を認め,洞機能不全症候群の診断で,入院.心エコー上冠静脈洞の拡大を認め,胸部CT上,左上大静脈遺残(PLSVC)が疑われ,また心雑音精査のために,静脈造影と心臓カテーテル検査を施行し,右側上大静脈欠損とPLSVC,両側の冠動脈瘻と診断した.左鎖骨下静脈から,左上大静脈-冠静脈洞を経由して,右心室心尖部と右心房中隔側にスクリューインリードを挿入し,DDDペースメーカーを植え込んだ.PLSVCは比較的多い静脈奇形であり,そのペースメーカー植え込みに関しては術中に偶然判明した場合でも,右側から経上大静脈的にアプローチ可能なことが多い.しかし,右上大静脈欠損の場合,その植え込みに難渋することもある.今回,われわれは,心エコーにおける冠静脈洞の拡大から,術前に右上大静脈欠損型PLSVCの合併を診断し,円滑な植え込みが可能であった洞不全症候群の1例を経験したので報告する.
  • 山本 哲平, 宮内 靖史, 小林 義典, 丸山 光紀, 谷ロ 宏史, 舘岡 克彦, 上野 亮, 岡崎 怜子, 村田 広茂, 新田 隆, 新 ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 22-29
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,男性.2005年末より労作時呼吸困難を自覚,2006年2月脳梗塞にて近医入院し,同時に高度徐脈(心拍数30bpm台)を認めたため当院転院.12誘導心電図ではP波を同定し得ず,心エコードブラ法で左房収縮は検出されなかった(EFは62%と正常).心内電位上,冠静脈洞で50bpmの自発興奮が記録されたが心房内でブロックのため心室は37bpmの接合部調律であった.CARTOシステムを用いたマッピングにおいて右房は中隔の一部を除き広範なscarを示し部分的心房静止と診断.至適ペーシング部位は右房になく,かろうじて左房後壁からのペーシングが可能だった.ペースメーカー植え込み時には開胸下に左房後壁に心房リードを留置し心房-心室順次ペーシングを行った.術後の経胸壁心臓ドプラ法では心房波を認めるようになった.切除した右心耳の組織検査では正常心筋組織は認められず広範な線維化を認めた.CARTOシステムを用いたマッピングの所見を参考に生理的ペースメーカー植え込みが可能であった部分的心房静止の1例を経験したので報告する.
  • 若月 大輔, 東 祐圭, 本田 雄気, 太田 圭, 河内 恵介, 清水 信行, 下島 桐, 浅野 冬樹, 江波戸 美緒, 堤 健, 嶽山 陽 ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 30
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:65歳,男性.主訴: 呼吸困難.現病歴:1998年日中意識消失しているところを同僚が発見し救急搬送された.救急車内のモニター上Vfを認めたためDC施行し洞調律へ回復した.当院搬送時,心電図上急性下壁心筋梗塞の所見であった.翌日意識回復し心臓カテーテル検査を施行した.重症3枝の冠動脈疾患であったためCABGを施行した.術1カ月後EPS施行したところRVへの刺激で血行動態の破綻するVTおよびVfが容易に誘発され,アミオダロン内服とICD植え込みを行った.その後外来で経過安定していたが,2005年12月呼吸困難,食欲不振,下痢等の症状が出現し心タンポナーデの所見を認め緊急入院した.心膜液上は感染症,悪性疾患の所見なく血液検査上F-T3 12.3pg/mL, F-T4 10.82ng/dL , TSH 0.03以下と著明な甲状腺機能亢進症を認めた.アミオダロンによる破壊性甲状腺炎と診断しステロイドを投与し著効した.本例はアミオダロンによる破壊性甲状腺炎をきたした稀な症例であり報告する.
  • 勝野 哲也, 佐々木 毅, 古川 俊行, 岡田 寛之, 川端 美穂子, 樋口 晃司, 横山 泰廣, 蜂谷 仁, 畑 明宏, 平尾 見三, 磯 ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 31-36
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.失神歴なし.心臓突然死の家族歴なし.2004年7月発熱と下腿浮腫のため当院受診.当時心エコーで三尖弁閉鎖不全が確認された.利尿薬で加療されたが,2005年5月より再び体重増加・下腿浮腫が出現し循環器内科受診.心電図のε波や心エコーでの著明な右室拡大の所見などから,高度右心不全を伴う不整脈源性右室心筋症(ARVC)と診断した.心臓電気生理学的検査では持続性心室性頻脈は誘発されなかった.2005年10月発熱・呼吸困難を主訴に受診.膿胸・重症肺炎・頻脈性心房細動に伴う肺水腫・呼吸不全を来し同日死亡した.病理解剖では,肉眼的に右室拡張と壁の著明な非薄化が見られARVCとして矛盾しないが,組織学的には右室優位に心筋・心外膜に巣状の炎症細胞浸潤が認められ,心筋炎・心外膜炎の存在が示唆された.本症例は心室性不整脈を合併していないが臨床的にARVCが疑われ,剖検所見も併せて報告する.
  • 長島 義宜, 野呂 眞人, 久次米 真吾, 森山 明義, 沼田 綾香, 熊谷 賢太, 中江 武志, 酒井 毅, 手塚 尚紀, 坂田 隆夫, ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 37-44
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は39歳の男性.夜間,自宅で安静中に突然意識を消失し,心肺停止状態となった.家人による心肺蘇生で意識は回復し,当院へ入院した,来院時の心電図は心房細動で,明らかなST偏位は認められず,翌日には洞調律となった.非観血的検査で器質的心疾患はなく,入院中の心電図でV1,V2誘導の変化が認められ, pilsicained負荷でcoved型ST上昇が認められた.心臓電気生理学的検査は,3発心室早期刺激まで施行したが心室頻拍は誘発されず, neostigmine投与下の2発心室早期刺激で再現性をもって心室細動が誘発された. また, isoproterenol投与で心室性不整脈は誘発されなかった. Brugada症候群と診断し,植込み型除細動器(ICD)を植え込んだ,その3週間後,朝にICDが作動し, ICDに記録された心内心電図でT波の増高が認められ, これを心室波と誤認識した誤作動と診断した. 比較的若年者の失神の原因にはBrugada症候群を疑う必要があり, ICDの設定で ST・Tの変化を伴う可能性のある症例には注意を要する必要があると考えられた.
  • 仁木 沙織, 山分 規義, 林 達哉, 田中 泰章, 前田 真吾, 藤井 洋之, 足利 貴志, 西崎 光弘, 櫻田 春水, 平岡 昌和
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 45-50
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 深水 誠二, 櫻田 春水, 迫田 邦裕, 弓場 隆生, 小宮山 浩大, 久次米 真吾, 谷井 博亘, 辰本 明子, 田辺 康宏, 山口 博明 ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 51-57
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    房室結節リエントリー性頻拍(AVNRT)および単形性心室頻拍(VT)の両者が植込み型除細動器(ICD)頻回作動の原因であったBrugada症候群に対してカテーテルアブレーションを施行し,心室細動(VF)の誘発性をも抑制しえた稀有な症例を経験したため報告する.症例は39歳,男性.36歳時に歩行中に失神し他院入院.Saddle-back型のBrugada型心電図を認め, pilsicainide(PIL)負荷でcoved型への変化を認めた.運動負荷検査で単形性VTを認めたが,プログラム刺激(PES)では無投薬でVFが誘発されICD植え込みが行われた. 2006年7月,講演中に連続5回のICD作動があり紹介入院.VTに対する適切作動と上室性頻拍(SVT)を疑う心内電位が記録された.ICDからのPESでは無投薬・PIL投与後ともにVFを認めるのみであったが, isoproterenol(ISP)負荷ではSVTが誘発され,左脚ブロック型・正常軸のVTに移行した.後日心臓電気生理学的検査(EPS)を行い,SVTは通常型AVNRTと診断し slow pathwayablationに成功した.単形性VTは左室からの頻回刺激で再現性をもって誘発され機序はリエントリーが疑われた.右室流出路での単形性VTのアブレーションに成功し,以後はAVNRTおよびVTのみならずVFも誘発不能となった.
  • 小船 雅義, 渡辺 一郎, 高山 忠輝, 赤羽 正史, 芦野 園子, 奥村 恭男, 川内 千徳, 山田 健史, 小船 達也, 大久保 公恵, ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 58-63
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.数年前より動悸が出現するようになった.心電図上,完全右脚ブロックおよび左脚前肢ブロックを認めた.運動負荷心電図施行中に右脚ブロック(RBBB),下方軸型の心室頻拍(VT)が誘発された.また,心エコー図上,全周性の壁運動低下および中隔基部の壁菲薄化を認められ,臨床的には心サルコイドーシスと考えられた.冠動脈造影上,有意狭窄は認めなかった.心臓電気生理学的検査(EPS)時,2種類のVTが誘発された.VT1は, clinical VTであり,僧帽弁輪の左室前中隔部において,良好なpace mapが得られ,同部位にてアブレーション(ABL)に成功した. VT2はRBBB,左軸偏位でnarrow QRSを呈していた.左室後枝領域にて, QRSより40ms先行する最早期興奮部位を認め,同部位にて良好なpace mapが得られたが,2枝プロックを認めているため,同部位へのABLは施行しなかった.アミオダロン内服にて経過観察とした.その後も動悸症状を認めていたため, プレドニゾロン(10mg)の内服を追加したところ,症状の改善が認められた.
  • 伊藤 啓之, 河村 光晴, 小貫 龍也, 三好 史人, 角田 史敬, 松山 高明, 箕浦 慶乃, 浅野 拓, 丹野 郁, 有賀 徹, 小林 ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 64-71
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:45歳,男性.主訴:意識消失.現病歴:2006年7月14日午前3時,立位で仕事時に突然,意識消失.救急隊到着時に心室細動であり電気的除細動2回で洞調律に復帰.当院救命救急科入院し低体温療法施行した. 左脚ブロック,下方軸の心室性期外収縮(PVC)が頻発していたため,当科転科し,ホルター心電図で右室流出路起源の PVC 3万発, R-R interval 240msecの3連発, また, 上室性頻拍も認めたため電気生理検査施行. Electro-anatornicalmappingで PVC起源は右室流出路中隔前方であり同部位に対してアブレーション施行しPVC消失した. さらに冠静脈洞入口部を最早期とするATP感受性心房頻拍を認め, アブレーションを施行し頻拍誘発不能となった. 特発性心室細動に右室流出路起源心室頻拍とATP感受性心房頻拍を合併した症例を経験した.
  • 柚須 悟, 池田 隆徳, 中村 健太郎, 三輪 陽介, 宮越 睦, 榊 桂, 阿部 敦子, 石黒 晴久, 塚田 雄大, 米良 尚晃, 坂田 ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 72-79
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例:15歳の男性.症状は立ちくらみ.健康診断で心室期外収縮(PVC)が指摘され,運動時にホルター心電図で非持続性心室頻拍(NSVT)が認められたため,精査目的で入院となった.安静時心電図に異常はなく,画像診断でも形態異常は検出されなかった.心臓電気生理学的検査:緊張のためか検査室入室後から多形性NSVTが出現していた.電気刺激で持続性VTは誘発されなかったが,少量のisoproterenolの点滴静注でNSVTの持続時間が延長傾向となり,propranololで抑制されたため,カテコラミン誘発性多形性VT(CPVT)と診断された.CPVTのトリガーとなるPVCの起源が常に右室流出路であったことからアブレーションを行った.方法としては,通電用電極カテーテル1本のみを挿入する心エコー(3次元組織ドプラトラッキング)ガイド下での短時間/低侵襲のPVCアブレーションを行った.その結果,CPVTは完全に抑制された.
  • 神崎 恭子, 山根 禎一, 稲田 慶一, 柴山 健理, 松尾 征一郎, 宮永 哲, 宮崎 秀和, 伊達 太郎, 杉本 健一, 望月 正武
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 80-84
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,女性.数秒間の意識消失発作のため受診.外来でのホルター心電図装着中に心肺停止で発見され,家人が心肺蘇生を施行.救急搬送先で心室細動(VF)に対して,電気的除細動を行い,洞調律に復帰した.ホルター心電図の解析では,単源性の心室性期外収縮(PVC)からVFへの移行が認められた.入院後も比較的coupling intervalの長いPVC(左脚ブロック型,移行帯V4-V5,下方軸)から非持続性心室頻拍(VT)が頻発しており,準緊急的にアブレーションを施行.VFのトリガーと同型のPVCが持続的に認められ,右室流出路側壁に起源を同定し,高周波通電に成功した.術後PVCはほぼ消失し,VT/VFの再発は認めなかったが,VFからの蘇生例であるために,予防的に植込み型除細動器(ICD)の植え込みを施行した.搬送時の意識レベルはJCS III-3であり植物状態が危惧されたが,最終的には脳ダメージなく退院した.その後4カ月間の観察期間内でVT/VFの再発は認められていない.
  • 平松 茂樹, 夛田 浩, 後藤 貢士, 絈野 健一, 田中 真一, 横川 美樹, 橋本 徹, 内藤 滋人, 大島 茂, 谷口 興一
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 85-91
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.61歳時に左中大脳動脈塞栓症を発症し,右片麻痺・失語症を呈したが,急性期のtPA(組織性プラスミノーゲン活性化因子)製剤投与にて神経学的所見は消失した.心房細動(AF)は少なくとも1年半前から持続しており,左室駆出率は60%,左房径は48mmであった.AFに対して左房線状焼灼術施行するもAFが持続したため,電気的除細動を行ったところ洞停止となり,一時ペーシングを開始した.洞不全が持続したため,恒久的ペースメーカー植え込み術を施行.心房リードは心房細動抑制目的に心房中隔に留置したが,術直前に再びAFとなっていたため直流通電(360J)を行ったがAFは停止しなかった.その後,アミオダロンの内服を開始したところ5日後にAFが自然停止した.以後,心房中隔ペーシング(70ppm),およびアミオダロン(100mg/日)内服にて11カ月間経過観察中だが,AFは認めない.心胸郭比は52%から42%に,左房径は38mmに,左室駆出率は74%に,またNYHA分類もI度に改善した.
  • 久佐 茂樹, 山内 康照, 鈴木 篤, 嘉納 寛人, 川崎 まり子, 杉山 知代, 大山 明子, 橋本 敬史, 高村 千智, 宮本 貴庸, ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 92-99
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.薬剤抵抗性の発作性心房細動に対して肺静脈隔離術を行った.カテーテル刺激で容易に心房細動となり,心腔内除細動を行ったが除細動できず,体表除細動360Jにてやっと洞調律に復帰した.しかしまもなく左上肺静脈より群発興奮が出現し心房細動となる所見を認めた.除細動抵抗性であったために,心房細動中に左上下肺静脈周囲の広範囲電気的隔離を開始した.ある程度左肺静脈周囲を焼灼すると左下肺静脈内は頻拍周期が延長しorganized potentialとなったが,左上肺静脈内はdisorganizedの状態であった.そこで20Jの心腔内除細動を行ったところ一瞬,心房内は除細動されているように見えたがLSPV内は周期110ms程度の頻拍が持続しておりすぐに心房細動へ移行した.肺静脈隔離が不完全でありこの肺静脈頻拍が心腔内除細動で停止せず持続するため心房細動が停止しないものと考えられた.そこで心房細動中に,更に左上肺静脈と左房の間の伝導ギャップを探し焼灼を加えたところ,左上肺静脈の電気的隔離が完成した瞬間に洞調律に戻った.洞調律中も周期110msの左上肺散脈頻拍は持続しており,心腔内除細動を行ったがこの頻拍は停止しなかった.心房細動が除細動で停止しなかった原因が,除細動抵抗性の左上肺静脈頻拍であったことが証明できた稀な1例を経験したので報告する.
  • 阿部 邦彦, 伊達 太郎, 宮崎 秀和, 神崎 恭子, 稲田 慶一, 松尾 征一郎, 柴山 健理, 宮永 哲, 山根 禎一, 杉本 健一, ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 100-106
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【諸言】通常型心房粗動(AFL)の陰性鋸歯状波は,緩やかに下降する部位と速やかに下降する部分からなるが,その成因については十分に検討されていない.われわれは,アブレーション中に粗動波形に変化を生じる症例を用いて陰性鋸歯状波における左房電位と右心房電位の役割を検討した.【方法】対象はAFLに対し解剖学的峡部の中隔側でアブレーションを施行した 15 例. 電極 1 mm ,電極2mmの10極カテーテル(MAP)を三尖弁輪に対し直交するようにして冠状静脈洞入口部直上に留置し,冠状静脈洞(CS)内に留置した10極カテーテルとの間で,粗動波形変化と両心房電位との関係を記録した.【結果】6例で粗動波形の平坦化(-23.8to-8.3度)と粗動波振幅の減少(0.36 to 0.28mV)を認めた.通電前はCS入口部の電位はMAPの電位より18.3±5.2ms先行していたが,波形変化時には粗動回路の下流にあるMAP電位より遅れ,その差は43.3±5.2msとなった.【総括】陰性鋸歯状波における右房電位の関与は小さく,主に左房電位が陰性鋸歯状波形を決定する.
  • 鈴木 慎介, 清水 昭彦, 上山 剛, 吉賀 康裕, 沢 映良, 杉 直樹, 大野 誠, 大宮 俊英, 松崎 益徳
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 107-110
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    ジソピラミドによって心房粗動化し当院へ紹介された75歳,女性.右房造影にて三尖弁輪-下大静脈にsub-eustachian pouch(SEP)を認めた.電気生理学検査において,無投薬では心房細動が誘発されるため, pilsicainide を投与中に検査を行った. 周期320msの心房粗動が誘発され,三尖弁輪6時の解剖学的峡部でpost pacing interval(PPI)は三尖弁輪側では粗動周期に一致するものの下大静脈側では120ms延長した.Electro anatomical mapping(EAM)により低電位領域が,下大静脈からSEPにかけて存在し, isthmusを三尖弁輪側と下大静脈側に2分し,下大静脈側は盲端となっていることが判明した.三尖弁輪側が心房粗動の必須回路と判断し,三尖弁輪-SEP間を線状焼灼したところ両方向性ブロックの作成に成功した.心房粗動中のES領域の特殊な伝導をEAMにより確認したので報告した.
  • 坂井 義貴, 今井 忍, 青山 浩, 小森谷 将一, 池田 敦, 八木 秀樹, 鈴木 輝彦, 永島 正明, 榎本 光信, 鈴木 一隆, 外川 ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 111-116
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    右房起源のmacro-reentrant心房頻拍(AT)の多くは三尖弁輸を旋回する心房粗動(AFL)であるが,開心術後例では右房自由壁のincision lineを旋回するmacro-reentrant ATが報告されている.しかしながら,非開心術後例ではAFL以外の右房起源のmacro-reentrant ATは比較的まれである.症例1:肥大型心筋症の58歳,男性.約4年間持続する周期250msecの三尖弁輪を反時計方向旋回する通常型AFLに対して三尖弁輪-下大静脈間で線状焼灼後,周期は275msecへと延長し興奮伝播様式は変化したが頻拍は持続した.electro-anatomical mapping上,右房側壁に約2.5×2cmのscarを認め,scar周囲を時計方向旋回するmacro-reentrant ATと通常型AFLが共存するdouble-loop ATと診断した.三尖弁輪-scar間での線状焼灼により頻拍は停止した.症例2:基礎心疾患のない60歳,女性.罹患年数は不明だが,以前より複数のATを指摘されていた.プログラム刺激で複数の持続型,非持続型のATが誘発された.electro-anatomical mapping上,右房後壁中隔側に4.1×1.2cmのscarが存在した.持続型であった頻拍は,周期230msecでscar-下大静脈をcommon channelとするdouble-loop ATと診断した.scar-下大静脈間の線状焼灼で頻拍は停止した.結語:頻拍長期持続例では非開心術例でも右房筋の部分的な瘢痕化が生じ,その周囲を旋回するmacro-reentrant ATとAFLか共仔する可能性があると考えられた.
  • 加藤 克, 井川 修, 足立 正光, 矢野 暁生, 三明 淳一朗, 井上 義明, 小倉 一能, 田中 宏明, 飯塚 和彦, 久留 一郎
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 117-123
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.主訴は動悸.62歳時僧帽弁閉鎖不全,心房細動に対し僧帽弁形成術,Maze手術を施行した.2005年1月より動悸を自覚し,近医受診.心電図上,心房粗動と診断され同年5月当科紹介,入院となった.12誘導心電図上,心拍数100/分の非通常型心房粗動であった.心臓電気生理学的検査上,2:1房室伝導を呈する心房興奮周期270msの心房頻拍で, electoroanatomical mappingにて,左房macro-reentrant tachycardiaと診断した.心内電位上,心房興奮伝播様式は僧帽弁輪5時方向から冠状静脈洞(CS)内に興奮伝播し, post pacingintervalによる頻拍回路同定では僧帽弁輪6時方向は回路外で,CS近位部が回路内であった.本例はCS近位部が左房macro-reentry tachycardiaの回路の一部を構成するまれな症例と考えられた.
  • 佐藤 寿俊, 神田 順二, 小寺 聡, 櫛田 俊一, 橋本 亨, 鈴木 勝, 樋口 和彦
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 124-128
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,男性.17歳で心肥大を指摘,心エコーで大動脈弁閉鎖不全を伴うバルサルバ洞瘤を指摘されたため2000年3月大動脈弁置換術およびバルサルバ洞パッチ閉鎖術が行われた.しかし2001年8月無冠洞瘤部が破裂し,破裂部直接縫合閉鎖を行っている.2004年12月眩暈と動悸を伴う240/分の心房頻拍で入院.緊急カルディオバージョンで退院したがハイリスクなため2005年1月入院,心臓電気生理検査(EPS)を施行した.誘発された心房細動を経て三尖弁-下大静脈峡部を回路とするマクロリエントリー性心房頻拍(AT)が誘発されたため,ここに線状焼灼を行いブロックラインを作成した.再度EPSを行うと,今度は臨床的に確認されていたATが誘発され,起源は手術痕とは関連のない分界稜下縁であった.Fractionated potentialがAT中に先行する最早期A波の記録される部位で焼灼を行ったところATは速やかに停止,以後ATは誘発不能になった.退院後再発なく経過している.
  • 野田 誠, 鈴木 文男, 山本 康人, 吉川 俊治, 田代 宏徳, 薄井 宙男, 市川 健一郎, 瀬崎 和典, 原 幹, 磯部 光章
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 129-135
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    実験的macro-reentry性頻拍の停止機序の一つとして「旋回路の一部に出現したantidromic echowaveとorthodromic mother-waveとの衝突によるecho-wave terminatiom」が報告されているが,臨床例での報告はほとんどない.今回われわれは心房粗動(AFL)の症例において本現象と推定される停止様式を観察したので報告する.症例は75歳男性,冠動脈バイパス術後に持続性のAFLが出現したため心臓電気生理検査(EPS)を施行.EPS時,時計回転(周期235msec)と反時計回転(ccw)のAFLが誘発され,ともに心房頻回刺激による停止が可能であった.ccw AFL(周期230msec)に対し冠静脈洞近位部から周期190msecのペーシングを行ったところ,ペーシング中止後に3拍のAFLの旋回が見られた後,4拍目にて頻拍が停止した.停止様式を分析するとseptal isthmusにおいてWenckebach型伝導遅延が起こり,伝導遅延が臨界値に達した後antidromicecho-wave(daughter-wave)を生じたと推察された.生じたecho-waveは時計方向に伝導し,反時計方向のorthodromic mother-waveと衝突することによりAFLが停止した可能性が考えられた.
  • 大庭 景介, 畔上 幸司, 瑞慶覧 貴子, 小西 正則, 脇本 博文, 上原 裕規, 倉林 学, 志村 吏左, 沖重 薫, 平尾 見三, 磯 ...
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 136
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,心房内回帰頻拍で,そのリエントリー回路が三尖弁輪近傍に局在し,アブレーションに成功した2例を経験したので報告する.症例1:23歳, 女性. アルコール中毒症で加療中.突然の動悸発作で失神.当院救急センター搬送され 180bpmの頻拍が記録された. ATP10mgで停止.電気生理検査にてプログラム刺激で再現性をもって頻拍は誘発かつ容易に停止.CARTOを用いたマッピングでは頻拍起源は三尖弁輪近傍の冠静脈洞口付近と判明.棘波電位が記録される同部への高周波通電で頻拍は停止し,以後誘発不能となる.症例2:83歳,女性.Churg-Strauss症候群に対して入院加療中でプレドニン20mg投与されていた.突然の頻拍発作あり,サンリズム50mg投与され停止.電気生理検査にて,心房プログラム刺激にて,頻拍は容易に誘発と停止可能.EnSiteによるマッピングを試みたが,P波とT波の時相が重畳するため正確なマッピングはできなかったがCARTO使用にて頻拍起源は三尖弁輪近傍,後下側壁部位と判明.同部への高周波通電にて頻拍は停止し,誘発不能となった.
  • 田渕 晴名, 八木 哲夫, 滑川 明男, 石田 明彦, 山科 順裕, 住吉 剛忠
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 137
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    最近経験した前中隔に副伝導路を有した3例を報告する.症例1は潜在性副伝導路でincessant typeのlongR-P'頻拍で急性心不全を呈していた.カテーテルアブレーション(CA)は僧帽弁輪12時方向で成功した.症例2のΔ波はV1誘導初期成分が±でQRSはrSパターンを呈した.CAは右側から試みたが不成功で左側僧帽弁輪1 2 時方向で成功した. 症例3 のΔ波は, V 1 誘導の初期成分が+でQRSはrSパターンを呈した.右側の検索で良好な部位を認めず最終的には左側His束近傍大動脈弁直下前中隔でCAに成功した.頻拍は3症例とも長いVA時間を示す特徴が認められた.
  • 須藤 泰代, 高野 幸一, 伊藤 致, 新保 悟朗, 阿部 力, 武村 直樹, 堀中 繁夫, 松岡 博昭
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 138-145
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は17歳,女性.主訴は動悸,意識消失発作.既往歴,家族歴に特記事項なし.中学校検診でWPW症候群を指摘されていたが症状なく経過観察となっていた.17歳時,動悸に続く意識消失発作を認めカテーテルアブレーション目的に当科入院となった.心臓電気生理学検査では左側壁に副伝導路を認め,副伝導路有効不応期は順/逆行性240/240msecで,プログラム刺激によりantidromic AVRTが誘発された,アブレーションでは3回の無効通電後にデルタ波と同様の極性を示す右脚ブロック+右軸偏位型,心拍数100/分程度の持続するwide QRS頻拍が出現した.頻拍は開始時のwarm-up現象を認め心室ペーシングで停止した.頻拍中のマッピングによる最早期興奮部位は左側壁僧帽弁輪下心室側で,体表面QRSに先行する副伝導路電位を認めた.副伝導路の自動能によるwide QRS頻拍と考え,これを標的に同部位で頻拍中に通電を行った.通電開始とともに頻拍周期は短縮し4秒で頻拍は停止し通電継続により副伝導路の焼灼に成功した.
  • 房室結節リエントリーと心房内リエントリーの鑑別
    大道 近也, 柿澤 祥子, 石下 晃子, 山田 綾子, 石井 康宏, 長嶋 浩貴, 上松瀬 勝男, 遠藤 真弘, 鈴木 文男
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 146-151
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性.動悸発作のため入院となった.発作時の心電図は心拍数136/分のnarrow QRS頻拍であった.心房電気刺激にて非持続性のlong RP頻拍が誘発され,リエントリー機序が考えられた.頻拍中のP波は"陽性"(軽度の陰性初期成分があるため実際には陰性・陽性の二相性)であったが,最早期興奮部位はヒス束記録部位であった.頻拍はAH blockにもかかわらず持続し,房室リエントリー機序は否定された.頻拍誘発時に心房内伝導遅延を認めないため心房内リエントリーは否定され, fastslow型房室結節リエントリー性頻拍が診断された. Isoproterenol投与前後にて室房伝導を認めなかった. 頻拍は isopmterenol投与後に持続性となり(周期330ms), ATPによる停止後インセサント型頻拍となった. 頻拍1拍目のP波は後続のP波形と同一であった. 心房最早期興奮部位はヒス束記録部位に極めて近接していたため, 同部位では通電は行わなかった. 解剖学的アプローチに変更し,後中隔でアブレーションを試みたが頻拍は停止しなかった. 遅伝導路の心房進出部位はヒス束近傍で,前中隔タイプと考えられた.
  • 橘 英明, 小松 隆, 佐藤 嘉洋, 小沢 真人, 大島 杏子, 中村 元行
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 152-159
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,男性.主訴は動悸発作.2005年11月ころから数分間持続する動悸発作が出現し,翌年2月には頻度が2-3回/週と増加するために当院紹介となった.臨床心臓電気生理学的検査では無投薬下の高位右房早期刺激法で左前斜位の三尖弁輪6時方向に最早期興奮部位を有し,jumping-up現象を伴わない心房エコー波を認め,右室早期刺激法で観察された室房伝導とは異なる逆行性心房興奮様式を認めた.イソプロテレノール(ISP)負荷中に三尖弁輪6時方向を最早期興奮部位とする頻拍周期295msecのnarrow QRS頻拍(PSVT-I)が自然に出現し,アデノシン三燐酸(ATP)2mgならびに5mgの急速静注にて停止可能であった.同部のmappingにより体表面心電図P波の立ち上がりに約29msec先行する部位で高周波通電を施行したところ,開始から約3秒後に冠静脈状近位部に再早期興奮部位を有する頻拍周期が 330msec の narrow QRS 頻拍( PSVT-II )へ突然変化した.PSVT-IIはISP負荷による高位右房早期刺激法にてjumping-up現象を伴わずに誘発が可能であったが,ATP2mgならびに5mgの急速静注にて停止せず,頻拍周期よりやや早い右室頻回刺激により逆伝導時間は延長し,心房内興奮様式もPSVT-IIのそれと一致していた.PSVT-IIはslowpathway potentialを指標に高周波通電を施行したところ,開始から約3.8秒後に房室接合部調律が出現し,以後ISP負荷による電気的プログラム刺激でも頻拍は誘発されなくなった.以上の所見から,三尖弁輪6時方向を起源とするATPに特異的感受性の室房伝導を介したリエントリー性頻拍と非通常型房室結節リエントリー性頻拍を合併したdoublelong RP'tachycardiaの稀な1例を経験したので報告する.
  • 嘉嶋 勇一郎, 佐々木 康之, 笠井 利夫, 高橋 済
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 160-165
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.53歳時より繰り返す動悸発作にてたびたび他院の救急外来を受診していた.12誘導心電図にて発作性上室性頻拍症(PSVT)と診断され,救急外来受診のたびにATP製剤,verapamil,cibenzolineを点滴され頻拍発作は停止していた.2006年6月12日アブレーション施行目的に当院紹介となった.2006年6月9日他院より帰宅の際に,β-blocker(propranolol)90mg/day,verapamil(120mg/day)内服を処方され帰宅した.2006年6月14日心臓電気生理学的検査を行ったが,心内心電図からはclockwiseの心房粗動と考えられるものが誘発されたものの,6月14日の時点ではAVNRTは誘発されなかった.β-blocker(propranolol:90mg/day),Ca channel blocker(verapamil:120mg/day)による影響が考えられたため,内服を中止したうえで再度誘発を行ったところ,AVNRTが誘発された.クリニカルと同様のAVNRTが誘発されたため,遅伝導路(SP)へのアブレーション通電を行うと,直後に房室接合部頻拍の出現が一過性に見られた.その後は定期的に外来通院中であるが,頻拍発作を自覚することはなくなった.β-blocker/Ca channel blockerの内服が,速伝導路(FP)の逆行性の不応期を著明に延長させ,順行性には過剰伝導を生じさせたため,AVNRTを起こしにくくしていたと考えられた.本症例では,β-blocker/Ca channel blockerは,SPよりFPへより強く作用していたと推測される
  • 萩原 陽子, 副島 京子, 谷本 耕司郎, 福本 耕太郎, 佐藤 俊明, 三好 俊一郎, 高月 誠司, 小川 聡
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 166-172
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    房室結節にはleftward posterior nodal extension(LPNE)の存在が知られ,atypical AVNRTではそれを介する症例が報告されている.今回,LPNEの存在により診断に難渋した症例を報告する.症例は56歳,男性.発作時心電図は心拍数145bpmのlong RP'tachycardia.洞調律時,デルタ波を認めず,HV時間は52ms.右室刺激時の心房最早期興奮部位は僧帽弁輪後壁で,室房伝導は減衰伝導特性を示した.プログラム刺激により同頻拍が誘発され,頻拍中の心房興奮順序は右室刺激時と同一,His束不応期に加えた心室早期刺激により,心房早期捕捉を認めた. Isopyoterenol負荷にて洞調律より容易に誘発されpermanent formを呈し,減衰伝導特性を有する僧帽弁輪後壁に付着する潜在性副伝導路を介した順行性房室回帰性頻拍, permanentform of junctional reciprocating tachycardia(PJRT)と診断した.冠静脈洞造影施行後,心室刺激中に冠静脈洞内の心房最早期興奮部位でアブレーションを施行した.通電後,僧帽弁輪後側壁を最早期とする室房伝導が残存したが,(1)傍ヒス束ペーシングでヒス束非捕捉時に刺激- 心房時間の延長を認め, (2)isoproterenol負荷時の接合部調律と右室刺激時の心房興奮順序が同一であることより,この室房伝導は僧帽弁輪後側壁に存在するL P N E と診断した.僧帽弁輪後側壁にLPNEが,僧帽弁輪後壁に潜在性副伝導路が存在し,副伝導路の消失に伴い,室房伝導がeccentric activationに変化したため,診断,治療に難渋した.
  • 栗田 隆志, 里見 和浩, 北村 聡子, 岡村 英夫, 野田 崇, 須山 和弘, 清水 渉, 相原 直彦, 鎌倉 史郎, 庭屋 和夫
    2007 年39 巻Supplement4 号 p. 173-182
    発行日: 2007/11/30
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
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