急性左心不全,下行大動脈閉塞を呈する大動脈炎症候群の症例に対して,経皮的心肺補助装置を施行し有効であったので報告する.症例は16歳,女性.著明な呼吸困難を訴え当院救急搬入.入院時全身チアノーゼ著明で,両大腿,左上肢の脈は触れず,右上肢での血圧は160/80mmHgであった.挿管,人工呼吸,種々の薬剤にても無尿は持続し,代謝性アチドーシスが進行した.これらに対し,経皮的心肺補助装置を開始したことで,無尿,および代謝性アチドーシスは改善した.翌日施行した大動脈造影では左鎖骨下動脈と下行大動脈での閉塞を認め,直径10mmのグラフトを用いて上行大動脈-左総腸骨動脈のバイパス手術を施行した.この後,腎不全,肝不全,敗血症,DICを合併したが,1カ月で人工呼吸器を離脱した.持続透析濾過を併用したが,2カ月で徐々に尿流出を得,透析も不要となった.しかし,左心機能低下は改善せず,4カ月後に施行した左心室造影では左心室駆出分画は22%と低下,冠動脈造影は異常所見を認めなかった.右心室心内膜心筋生検を施行したが,圧負荷による心筋肥大の所見のみであった.高血圧や大動脈弁閉鎖不全もなく心機能障害の原因は明らかではないが,左心機能障害は持続した.
経皮的心肺補助装置が,下行大動脈閉塞,急性左心不全という病態に対して有用であったので報告する.
抄録全体を表示