心臓
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49 巻, 3 号
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OpenHEART
HEART’s Selection(重症下肢虚血をめぐる最近のトピックス)
HEART’s Original
[臨床研究]
  • ─Fast-track recovery programによる介入検討─
    岩井 宏治, 林 秀樹, 平岩 康之, 飛田 良, 木下 妙子, 小熊 哲也, 川崎 拓, 浅井 徹
    2017 年 49 巻 3 号 p. 240-247
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

     目的:COPD合併の有無による心大血管術後のFast-track recovery programの介入効果を検証することである.

     方法:対象は狭心症,弁膜症,胸部瘤患者であり,COPD合併の有無で2群に分割した(COPD群33例,非COPD群53例).術後在院日数,無気肺発生率,無気肺解除に至るまでの日数,運動耐容能をMann-Whitney U検定およびχ2検定にて比較した.

     結果:術後在院日数,無気肺発生率,無気肺解除に至るまでの日数に有意差は認めなかったが,運動耐容能はCOPD群で有意に減少していた.

     結論:Fast-track recovery programによる術後早期介入は,COPDを合併した心大血管術後患者において,非COPD群と変わらない術後経過をもたらし,有効である可能性が示唆された.

[症例]
  • 西田 耕太, 落合 幸江, 三浦 要平, 川合 暢, 田川 実, 中村 裕一, 加藤 政美
    2017 年 49 巻 3 号 p. 248-252
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

     症例は30歳,女性.2014年6月(妊娠10週6日),左下肢腫脹・疼痛が出現し歩行困難となった.症状出現から10日後(妊娠12週2日),当院産婦人科定期受診の際にDダイマーの軽度上昇を認め,下肢静脈エコー検査を実施した.左大腿静脈に血栓を認め,深部静脈血栓症の診断で当科に入院となった.経胸壁心臓超音波検査にて右心負荷所見を認めず,臨床的に問題となる肺血栓塞栓症の合併は否定的であった.未分画ヘパリン持続注射を開始し,深部静脈血栓症の症状消失後ヘパリンカルシウム皮下注の自己注射に切り替え継続した.出産予定の2週間前には血栓はほぼ消失し,分娩時もIVC filterを留置することなく無事経腟分娩にて出産した.初乳授乳後断乳の上,ワルファリンに変更し,血栓の再発を認めずに経過している.深部静脈血栓症を合併した妊婦に対して,ヘパリン自己注射は有効であると考えられた.

[症例]
  • 大岩 修太郎, 茂庭 仁人, 能登 貴弘, 瀬野 結, 永野 伸卓, 神津 英至, 村中 敦子, 矢野 俊之, 丹野 雅也, 三浦 哲嗣
    2017 年 49 巻 3 号 p. 253-259
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

     症例は70歳台,男性.2012年近医で好酸球増多を認めたが精査は行われなかった.2015年7月に複視を契機に多発性脳梗塞と診断され,心原性脳塞栓症の疑いで当科紹介入院となった.血液検査にてCRP高値(6.76 mg/dL)に加え好酸球数(6,615/μL)と,好酸球脱顆粒の指標である好酸球性カチオン性蛋白(41.7 μg/L)の著明な上昇を認めた.右室心内膜下心筋生検にて有意な所見は認めなかったが,PET-CTにて左室心尖部心内膜に異常集積を認めたため,Loeffler心内膜心筋炎による左室内血栓からの多発性脳梗塞と考え,プレドニゾロンおよび抗凝固療法を開始した.その後速やかにCRPと好酸球数は正常化し,塞栓症の再発は認めず,慢性期のPET-CTでは左室心尖部心内膜下の異常集積は消失していた.本症例では炎症病変が左室心尖部であったため右室中隔から採取した心筋生検に異常を認めなかったものと考えられた.動脈塞栓症に好酸球増加症を合併した場合,Loeffler心内膜心筋炎を念頭に早期にPET-CTを含めた精査,治療介入を行うことが重要である.

Editorial Comment
[症例]
  • 伊東 勘介, 田中 博之, 永田 健一郎, 久木 基至, 野中 隆広, 二宮 幹雄, 大塚 俊哉, 手島 保
    2017 年 49 巻 3 号 p. 261-267
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

     症例は70歳代,男性.既往に発作性心房細動,関節リウマチ,間質性肺炎があり,スクリーニングで施行された経胸壁心臓超音波検査で前壁の壁運動異常を認め,虚血性心疾患が疑われ当科へ紹介された.冠動脈造影で左冠動脈前下行枝近位部と右冠動脈近位部から肺動脈へ冠動脈瘻を認め,前下行枝からの冠動脈瘻に冠動脈瘤(12×10 mm)を合併していた.アデノシン負荷心筋SPECTでは前壁心尖部から下壁に梗塞所見と虚血を疑う所見を認めた.冠動脈瘻からの盗血現象による心筋虚血を認めたことや,動脈瘤破裂のリスクを考慮し,外科的に冠動脈瘻閉鎖術を施行した.先天性冠動脈瘻は稀に盗血現象による心筋虚血をきたすことが報告されている.今回われわれは,冠動脈瘻に冠動脈瘤を合併し,盗血現象による心筋虚血障害を呈し,外科的治療で良好な経過を得た1例を経験したので報告する.

[症例]
  • 森脇 啓至, 土肥 薫, 世古 哲哉, 笠井 篤信, 岡本 隆二, 藤井 英太郎, 山田 典一, 伊藤 正明
    2017 年 49 巻 3 号 p. 268-273
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

     症例は45歳の男性.これまで心雑音を指摘されたことはない.1週間前から労作時呼吸困難が持続し,近医で心雑音が聴取されたことを契機にバルサルバ洞動脈瘤破裂と診断された.経食道心臓超音波検査では,右バルサルバ洞から突出する長径約10 mmの瘤状の構造物および先端から右室へ向かうシャント血流が認められた.冠動脈造影検査では,左回旋枝が単独で右バルサルバ洞から起始していた.手術所見では,バルサルバ洞動脈瘤の壁は菲薄化し,穿孔部を含む薄い瘤状壁には炎症所見や瘢痕化は認めなかった.動脈瘤,左回旋枝および右冠動脈は右バルサルバ洞から個別に起始し,連続性はなかった.バルサルバ洞動脈瘤は先天性心疾患の0.1〜3.5%に合併する稀な疾患で,さらに冠動脈起始異常の合併は非常に稀である.バルサルバ洞動脈瘤と起始異常との発生学的関連性や病態への影響については,解明されていないが,本症例では,起始異常がみられた回旋枝に血流障害はなかったため,パッチ閉鎖のみが施行された.術後経過は良好であった.冠動脈起始異常を伴ったバルサルバ洞動脈瘤の非常に稀な症例を経験したので報告する.

Editorial Comment
[症例]
  • 白川 裕基, 弓削 大, 石井 俊輔, 柿﨑 良太, 木村 嶺, 東谷 浩一, 岡田 拓也, 川口 竹男, 阿古 潤哉
    2017 年 49 巻 3 号 p. 276-281
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

     症例は23歳,男性.2015年6月に突然の後頭部痛と動悸を主訴に救急搬送された.12誘導心電図でⅡ,Ⅲ,aVF,V4〜V6誘導でST上昇,および血液検査で心筋逸脱酵素の上昇を認めた.心臓超音波検査で後下壁と前壁に壁運動低下を認め,壁厚は前者で14 mm,後者で8 mmと不均一な壁厚を示していた.原因疾患の診断目的に施行した緊急心臓カテーテル検査では冠動脈に器質的狭窄はなかったが,冠攣縮傾向であったためアセチルコリン負荷試験を行った.前下行枝の中間部から末梢にのみ陽性所見を認め,冠攣縮の合併を疑った.また,左室心内膜心筋生検では心筋炎に特異的な所見は認めなかったが,心臓磁気共鳴画像(cardiovascular magnetic resonance;CMR)のT2強調画像で後側壁の心外膜側に高信号域,同部位に遅延造影像を認め,後側壁を中心とした急性心筋炎と診断した.本症例で認めた左室壁運動低下には2つの機序が推察され,後側壁は心筋炎,前壁の中間部から心尖部にかけては冠攣縮の影響と考えられた.冠攣縮に対してカルシウム拮抗薬の内服を開始したところ,左室前壁領域の壁運動は数日で改善し,左室後壁領域は約2カ月後にCMRにおけるT2強調画像,遅延造影像の改善とともに左室駆出率は41%から60%まで改善した.その後心電図上のST-T変化も消失し,約7カ月後に後壁の壁肥厚は改善した.急性心筋炎と冠攣縮の合併についての報告は多数あるが,急性期の心室壁厚に着眼して論じた報告はない.急性心筋炎の診断時に壁肥厚を伴わない壁運動低下を認める症例では,冠攣縮の関与を考慮し,冠攣縮治療薬の併用を検討する必要があると考えられた.

Editorial Comment
[症例]
  • ─5年間の経過観察─
    下岡 良典, 牧口 展子, 成田 浩二, 福澤 純, 鶴巻 文生, 菅原 寛之, 長谷部 直幸
    2017 年 49 巻 3 号 p. 284-291
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

     無症候の60歳代男性.健診で高血圧と心雑音を指摘され,2010年10月に当院を初診した.聴診で拡張期雑音を聴取し,経胸壁心エコー検査で中程度の大動脈弁逆流症と大動脈四尖弁を認め,精査目的で当科へ入院となった.入院時の左室駆出率は62%であった.経食道心エコー検査,心臓CT検査から2つのlarger cuspと2つのsmaller cuspから構成される大動脈四尖弁を認めた.自覚症状がなく,左室拡張末期径も60 mm以下であったことから経過観察の方針とし,高血圧に対する内服治療を開始し退院となった.初診から5年間の経過観察期間内で明らかな臨床症状は出現しなかった.降圧管理と利尿薬の内服により,経胸壁心エコー検査では大動脈弁逆流症の進行もみられず,左室拡張末期径,左室駆出率の増悪はみられなかった.また大動脈径や弁基部の拡大も認めなかった.大動脈四尖弁は稀な疾患であり,臨床経過についてはほとんど報告がない.これまでの報告から四尖弁に起因する大動脈弁逆流症は比較的早期に外科的修復を要することが多いとされる.われわれの経験した症例から無症候性の大動脈弁逆流症と診断された症例においては,早期に内科的管理を行うことで外科的修復を回避ないし延期することの可能性が示唆され,修復時期の延期は修復方法の選択肢を広げ得る可能性も期待できる.

[症例]
  • 三宅 望, 土田 圭一, 三島 健人, 高橋 和義, 尾崎 和幸, 保坂 幸男, 眞田 明子, 藤原 裕季, 柏 麻美, 中村 則人, 廣木 ...
    2017 年 49 巻 3 号 p. 292-297
    発行日: 2017/03/15
    公開日: 2018/03/15
    ジャーナル フリー

     症例は69歳男性.150 m程の歩行後に呼吸苦と前胸部絞扼感を自覚し救急搬送された.来院時ショックと低酸素血症を認め,両肺でcoarse cracklesを聴取した.心電図で完全左脚ブロックとaVR誘導のST上昇を認めた.心エコーで求心性左室肥大とびまん性左室壁運動低下,大動脈弁の輝度亢進と開放制限を認め,大動脈弁狭窄症(AS)が疑われた.緊急冠動脈造影では冠動脈に閉塞および狭窄病変はなく,重症ASによる急性心筋梗塞,心原性ショックと診断し,大動脈内バルーンパンピングを挿入した.第2病日に呼吸状態が悪化し人工呼吸器管理とした.経食道心エコーで二尖弁が疑われた.Peak CK 16,000(CK-MB 1,397) IU/Lと心筋障害は高度であり,準緊急での大動脈弁置換術(AVR)は高リスクと考えられ,内科的治療による心不全改善後にAVRを考慮する方針であったが,第5病日に頻脈性の発作性心房細動/粗動により血行動態が破綻し,頻回の電気的除細動にても改善せず,弁狭窄緩和による循環動態改善目的に同日緊急経皮的バルーン大動脈弁形成術(PTAV)を行うこととした.順行性アプローチでInoueバルーンを用い20 mmと21 mmで2回の裂開を行った.PTAV後は不整脈の再発なく,心拍出量の上昇を認めるなど血行動態が改善し,第9病日に待機的に生体弁によるAVRを行った.以降経過順調で第28病日に自宅退院された.

セミナー(心臓財団虚血性心疾患セミナー)
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