背景: 心筋梗塞後にクロピドグレルとプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor; PPI)を併用した場合に, 抗血小板作用を減弱し, 心臓発作の再発リスクが増大することが報告されている. 抗血小板薬と胃酸分泌抑制薬の併用が血小板凝集能に及ぼす影響を検討した.
対象と方法: 対象は冠動脈ステントを留置した虚血性心疾患84症例. クロピドグレル75mg(43例)またはチクロピジン200mg(41例)を内服中に血小板凝集機能検査(光透過光量法)を行い, 最低凝集惹起濃度(platelet aggregately index; PATI)を測定した. 胃酸分泌抑制薬の併用の有無によりPATIを比較検討した.
結果: アデノシン二リン酸(adenosine diphosphate; ADP)を血小板凝集惹起物質としたPATIは, クロピドグレル群3.90±0.32µM, チクロピジン群3.71±0.64µMであり, 有意差は認めなかった. クロピドグレル群の併用薬は, PPI 15例, H
2受容体拮抗薬15例, 非併用13例であった. チクロピジン群の併用薬は, PPI 12例, H
2受容体拮抗薬16例, 非併用10例であった. クロピドグレル群, チクロピジン群ともに, 胃酸分泌抑制薬の併用によるPATIへの影響は認めなかった. 1年以内にステント血栓症を発症した症例は認めなかった.
総括: 冠動脈ステントを留置した症例において, クロピドグレル75mg/日とチクロピジン200mg/日の血小板凝集抑制作用は同等であった. PPIまたはH
2受容体拮抗薬の併用は, チエノピリジン系抗血小板薬の作用を減弱しなかった.
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