心臓
Online ISSN : 2186-3016
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ISSN-L : 0586-4488
42 巻, 12 号
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Open HEART
HEART's Selection(循環器疾患に対する再生医療)
HEART's Original
臨床研究
  • — チエノピリジン系抗血小板薬と胃酸分泌抑制薬の併用について
    永田 義毅, 杉田 光洋, 猪俣 純一郎, 花岡 里衣, 谷口 陽子, 紺谷 浩一郎, 丸山 美知郎, 臼田 和生
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 12 号 p. 1587-1594
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    背景: 心筋梗塞後にクロピドグレルとプロトンポンプ阻害薬(proton pump inhibitor; PPI)を併用した場合に, 抗血小板作用を減弱し, 心臓発作の再発リスクが増大することが報告されている. 抗血小板薬と胃酸分泌抑制薬の併用が血小板凝集能に及ぼす影響を検討した.
    対象と方法: 対象は冠動脈ステントを留置した虚血性心疾患84症例. クロピドグレル75mg(43例)またはチクロピジン200mg(41例)を内服中に血小板凝集機能検査(光透過光量法)を行い, 最低凝集惹起濃度(platelet aggregately index; PATI)を測定した. 胃酸分泌抑制薬の併用の有無によりPATIを比較検討した.
    結果: アデノシン二リン酸(adenosine diphosphate; ADP)を血小板凝集惹起物質としたPATIは, クロピドグレル群3.90±0.32µM, チクロピジン群3.71±0.64µMであり, 有意差は認めなかった. クロピドグレル群の併用薬は, PPI 15例, H2受容体拮抗薬15例, 非併用13例であった. チクロピジン群の併用薬は, PPI 12例, H2受容体拮抗薬16例, 非併用10例であった. クロピドグレル群, チクロピジン群ともに, 胃酸分泌抑制薬の併用によるPATIへの影響は認めなかった. 1年以内にステント血栓症を発症した症例は認めなかった.
    総括: 冠動脈ステントを留置した症例において, クロピドグレル75mg/日とチクロピジン200mg/日の血小板凝集抑制作用は同等であった. PPIまたはH2受容体拮抗薬の併用は, チエノピリジン系抗血小板薬の作用を減弱しなかった.
Editorial Comment
症例
  • 新城 裕里, 吉岡 二郎, 加藤 秀之, 戸塚 信之, 宮澤 泉, 臼井 達也, 浦澤 延幸, 荻原 史明, 佐藤 俊夫, 河野 哲也, 後 ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 12 号 p. 1597-1602
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    症例は77歳, 女性. 脳梗塞の既往がある. 2009年3月ころより背部痛が出現し, 近医で施行した腹部CTで膵管内乳頭腫瘍が疑われ, 精査目的で当院消化器内科へ紹介された. 弁膜症を指摘されたことがあり, 心臓超音波検査を施行したところ, 左室内心室中隔側に径13× 12mm, 有茎性で可動性のある腫瘤を認めた. 腫瘍の形態から粘液腫もしくは乳頭状線維弾性腫が考えられた. MRIではT1強調像で等信号, T2強調像で, 高信号で粘液腫が疑われた. 塞栓症をきたす可能性があり腫瘍摘出術の適応と判断し, 左心室腫瘍摘出術を施行した. 僧帽弁腱索より発生するゼリー状の径約10mmの腫瘤を摘出し, 病理所見から乳頭状線維弾性腫と診断した. 粘液種では再発予防のため拡大切除が必要であり, 術前に両者の鑑別が望ましい. そこで, 本症例においてMRIを用いた術前診断が可能であったか検討した. MRI所見の記載がある既報例をレビューした結果, マルチコントラストによる両疾患の鑑別は困難と考えられた.
症例
  • 青木 淳, 末澤 孝徳, 峰 良成 良成, 多胡 護, 土井 正行, 岩部 明弘, 小西 久美, 大西 弘倫, 富永 洋功
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 12 号 p. 1603-1608
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症(hypertrophic cardiomyopathy; HCM)を伴う後尖逸脱による僧帽弁閉鎖不全症(mitral insufficiency)に対して僧帽弁形成術(mitral valve reconstruction)を施行後, 左室流出路狭窄および左室内狭窄が顕在化し溶血をきたした症例を経験した. 症例は65歳, 女性. 2004年10月胸部痛にて近医受診, 精査にて閉塞性肥大型心筋症および僧帽弁後尖逸脱による僧帽弁閉鎖不全症と診断された. Cibenzolineおよびcarbedilolにより症状は改善していた. しかし, 2009年8月ごろから心不全症状が悪化したため, 当院紹介となった. 心臓超音波検査では, IV度の僧帽弁閉鎖不全を認めたが, 左室内および左室流出路狭窄は認めず, 僧帽弁形成術を行った. 遺残逆流なく終了したが, 術後4日目に心雑音および溶血性貧血をきたした. 心臓超音波検査では, 僧帽弁逆流は認めず, 左室流出路狭窄100mmHgを認めた. β遮断薬およびcibenzolineの再開, 輸血にて心雑音は消失し, 左室流出路狭窄も改善した. 僧帽弁閉鎖不全が消失し, 左室容量負荷が改善したため, 左室流出路狭窄が顕在化したと思われる. 溶血性貧血が生じた原因は不明であるが, かかる症例には, 術中に左室流出路の筋切除, また体外循環下に左室容量負荷が減少した時点で, 超音波検査を行い, 可能なら左室内狭窄となり得る中隔の筋切除を行うべきと思われた.
症例
  • 石原 有希子, 田中 茂博, 山田 朋幸, 小阪 明仁, 鴨井 祥郎, 吉良 有二
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 12 号 p. 1609-1615
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    症例は, 気管支喘息(bronchial asthma; BA)の既往と喫煙歴のある76歳男性で, 吸入ステロイドとβ2刺激薬を常用していた. 2008年9月持続する心窩部痛とV2~4およびII, III, aVFの持続性ST低下より急性側壁心筋梗塞の診断にて入院した. 気管支喘息発作を併発し, ヨード造影剤使用による合併症のリスクが高くなることと, 血行動態が安定していたことから, 待機的冠動脈造影(coronary angiography; CAG)を行う方針とし抗凝固薬, 硝酸薬持続投与を開始した. 第2病日には症状は消失し, ステロイドとβ2刺激薬の定時吸入により呼吸状態も安定していた. 第5病日CAGに備え硝酸薬を中止したところ3時間後に胸部苦悶を訴えショックとなった. 喘鳴を伴い, 喘息発作増悪やうっ血性心不全を考えたが, 短時間型β2刺激薬吸入や利尿薬静注に反応せず否定された. II, III, aVFのST上昇を認めたため, 新たな急性冠症候群を疑いCAGを施行した. 左回旋枝(left circumflex artery; LCX) #11: 100%閉塞とLAD・RCAのび漫性攣縮を認め, 多枝冠攣縮が急性心筋梗塞に合併し広範心筋虚血に陥ったと考えた. ISDN冠注により攣縮解除後血行動態はすみやかに安定した. LCXに経皮的冠動脈インターベンション(percutaneous coronary intervention; PCI)を施行し, CK再上昇や再発作はなく経過した. ステロイドによる喘息治療とCa拮抗薬・硝酸薬による冠攣縮予防とを継続し第20病日退院した. 冠攣縮が気管支喘息発作に合併した可能性やβ2刺激薬使用が急性心筋梗塞・多枝冠攣縮発症のリスクあるいは誘因となった可能性が示唆された.
症例
  • 佐藤 正宏, 山本 和男, 上原 彰史, 三島 健人, 滝沢 恒基, 杉本 努, 吉井 新平, 春谷 重孝
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 12 号 p. 1616-1620
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    症例は60歳, 女性. 11年前に大動脈弁逆流+狭心症に対し, 大動脈弁置換術(aortic valve replacement; AVR)+冠動脈バイパス術を受け, その際に高安動脈炎と診断された. 今回, 呼吸困難, 食思不振を主訴に受診. NYHA IV度の心不全で入院した. 心エコー・CTにて大動脈基部の仮性動脈瘤が右房へ穿破し, 重度の三尖弁逆流も認められたため手術を行った.
    大動脈弁位人工弁は縫合部に離開を認め, 弁輪直下に仮性動脈瘤開口部を認めた. 人工弁を摘出し, 2重のウマ心膜パッチで仮性動脈瘤を大きく閉鎖してRe-AVRを行った. 右房内腔の穿破部は別に閉鎖し, 三尖弁輪形成を併施した.
    高安動脈炎症例に対する人工弁置換術後の遠隔期には弁周囲逆流や仮性動脈瘤が発生することがある. このような症例に対する術式として有用と考え報告する.
症例
  • 重清 正人, 原田 顕治, 奥村 宇信, 蔭山 徳人, 斎藤 彰浩, 山本 隆, 藤永 裕之
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 12 号 p. 1621-1626
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代, 女性. 主訴は発熱. 2008年10月下旬に, 当院消化器内科で早期胃癌に対し内視鏡的粘膜下層離術(endoscopic submucosal dissection; ESD)が施行された. 翌日より38℃台の発熱を認め, levofloxacin 300 mg/日が経口投与された. 4日後, 退院となるも解熱なく経過した. 7日後, 心雑音が聴取され, 血液生化学検査で炎症反応の上昇および肝機能異常が認められた. 腹部エコーと腹部造影CTで異常所見を認めなかったため, 精査目的にて当科へ紹介される.
    経胸壁および経食道心エコー検査では大動脈弁無冠尖に径7mm程度のiso~high echoicな疣腫の付着を認め, 軽度から中等度の大動脈弁逆流も認められた. 感染性心内膜炎と診断し同日入院となり, cefotaxime sodium 3g/日およびgentamicin sulfate 120mg/日の経静脈投与を開始した. 2回の血液培養は陰性であった. 徐々に解熱し, 炎症反応および肝機能異常も改善を認めた. 11月中旬より, amoxicillin 750mg/日の経口投与に変更した. 疣腫は残存したがさらに器質化していた. 感染もコントロールもされ, 弁逆流の増加も認められず, 外来にて経過観察となった.
症例
  • — 心エコーによる左心室壁運動の経時的観察
    余川 順一郎, 多田 隼人, 井野 秀一, 藤野 陽, 川尻 剛照, 林 研至, 内山 勝晴, 舛田 英一, 今野 哲男, 坪川 俊成, ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 12 号 p. 1627-1632
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    たこつぼ心筋症は, 閉経後の女性に発症頻度が多いことが知られているが, 今回, 著者らは神経性食欲不振症に合併した若年発症例を経験した. 症例は17歳, 女性. 神経性食欲不振症のため体重24.6kgまで減少し, 当院に入院中であった. 入院中の朝, 低血糖により意識障害およびショック状態となった. 心エコー図検査にて, 当初左心室での全周性壁運動の低下を認めた. また, 心電図では左軸偏位を伴うwide QRS波形を認めたが, 同日夕には広範囲のST上昇を認めた. この際の心エコー図検査では心基部の壁運動亢進, 心尖部・中隔の壁菲薄化と運動の低下を認め, たこつぼ心筋症に合致する所見であった. 人工呼吸管理, 大動脈内バルーンポンプ(intra aortic balloon pump; IABP)挿入, カテコラミン投与により全身状態管理を行ったところ, 次第に心電図所見は改善が得られ, 10日後には左室壁運動の正常化が得られた.
    神経性食欲不振症に, たこつぼ心筋症を合併した報告は散見されるが, いずれも低血糖を契機に発症しており, 本例においても低血糖が契機となった. 一方, たこつぼ心筋症が閉経後の女性に多い理由としてエストロゲン濃度の低下が示唆されている. 本症例は神経性食欲不振症であり, 同様にエストロゲン濃度が低下していたと推察され, たこつぼ心筋症とエストロゲンの関与を考えるうえで興味深い.
Editorial Comment
症例
  • 井上 勝, 松原 隆夫, 安田 敏彦, 三輪 健二, 金谷 法忍
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 12 号 p. 1635-1639
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代, 男性. 主訴は胸部不快感. 上室頻拍, 房室ブロック, 心筋梗塞にて入院. 頻拍停止時に10秒の心停止を伴い失神したため, ペースメーカー植え込みを行った. 右冠動脈が閉塞した3枝病変で冠動脈バイパス術を行った. 術後も絶え間なく頻拍が持続していたため電気生理学的検査(electrophysiologic study; EPS) を行った. PQ時間は358msecでAHブロックであった. 頻拍は心房および心室からの早期刺激にて容易に停止, 誘発が可能であった. 頻拍中の心房最早期興奮部位はヒス束電位記録部位であった. 室房伝導は減衰伝導を呈し, 心房最早期興奮部位は頻拍中と一致した. 頻拍中のヒス束電位記録部位での興奮パターンはH→A→Vで, ヒス束が不応期での心室プログラム刺激が頻拍をリセットしなかった. 通常型(slow-fast) 房室結節リエントリー性頻拍と判断したが, 房室結節2重伝導路の証明は困難で, 誘発時にAH時間の著明な延長に依存していなかった. 完全房室ブロックを起こさない安全な焼灼部位の判断が困難であったが, ペースメーカーが植え込まれており室房伝導の心房最早期興奮部位をカルトシステム使用下に焼灼した. 焼灼開始6秒で室房伝導は消失し, 以後, 頻拍の誘発は不能となった. 術後1年で頻拍の再発はなく房室伝導は保たれていた. AHブロックを合併した通常型房室結節リエントリー性頻拍に対して, 房室伝導を温存し速伝導路の焼灼に成功した1例を経験した.
症例
  • 水島 航, 浅川 直也, 和田 英樹, 檀浦 裕, 岩切 直樹, 相馬 孝光, 牧野 隆雄, 福田 洋之, 加藤 法喜, 宮崎 知保子, 道 ...
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 12 号 p. 1640-1648
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 女性. 僧帽弁後尖逸脱症に対して近医に通院中であったが, 突然左上下肢の脱力が出現. 画像検査にて多発性脳病変を認めたが, 発熱および炎症反応の上昇も認めた. 呼吸不全, 敗血症性ショックを合併したため, 精査・加療目的で緊急入院. 胸部CTにて大量の心嚢液と胸水を認め, 心嚢および胸腔持続ドレナージを施行した. 心エコー検査では重症僧帽弁閉鎖不全症を認めたが, 明らかな疣腫は認められなかった. 血液・心嚢液・胸水の培養からMSSAが検出され, Duke診断基準(大項目1, 小項目3)より化膿性心外膜炎と膿胸を合併した感染性心内膜炎と診断した. 抗菌薬[セファゾリン(cefazorin; CEZ)]によって炎症反応は改善傾向となったが, 完全には陰転化せず発熱も持続した. 脳MRIにて多発性脳膿瘍が認められ, 抗菌薬をCEZからスルバクタムナトリウム/アンピシリンナトリウム(SBT/ABPC)へと変更した. 抗菌薬の変更後に炎症反応は陰転化し, 脳膿瘍も著明に縮小した. 脳膿瘍の縮小に伴い脳神経症状も改善し, 外科的治療後に独歩退院となった. 多発性脳膿瘍と化膿性心外膜炎および膿胸を合併した感染性心内膜炎の稀な1例を経験したので報告した.
症例
  • 守谷 知香, 中村 亮, 岡部 眞典, 山本 雄祐
    原稿種別: HEART's Original
    2010 年 42 巻 12 号 p. 1649-1654
    発行日: 2010年
    公開日: 2012/06/15
    ジャーナル フリー
    症例1: 56歳, 男性. 健診で肝臓に多発性腫瘤を指摘された. 精査にて両側肺門リンパ節腫張(bilateral hilar lymphadenopathy; BHL)と血清アンジオテンシン変換酵素(angiotensin converting enzyme; ACE)活性高値を認め, サルコイドーシスと診断. 心エコーでは壁運動異常[駆出分画(ejection fraction; EF)=54%], 心内膜心筋生検で類上皮細胞肉芽腫を認めた. Gadolinium造影磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging; MRI)では左室および右室の心外膜側や心筋全層にわたるまだら状の強い遅延造影を認めた.
    症例2: 59歳, 男性. 労作時息切れにて近医受診し, 心電図で高度房室ブロックを認め当院紹介. 心エコーで心室中隔基部に限局した著明な壁菲薄化と左室駆出率低下(EF=44%)を認めた. 心内膜心筋生検では異常所見は認めなかった. MRIでは心室中隔基部の右室側を中心に左室前壁と側壁および右室自由壁にまだら状の強い遅延造影を認めた.
    2症例とも心電図, 心エコー所見およびMRI所見から心サルコイドーシスと診断しステロイド内服を開始した. 症例1ではステロイドにてMRIの遅延造影像も軽快するのが確認できた. MRIは心サルコイドーシスの診断およびステロイド開始後の経過観察にも有用と考えられた.
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