心臓
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27 巻, Supplement7 号
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  • 第3報:日本人の正常値に関する検討
    太田 隆之, 岩 亨, 中里 祐二, 市原 成記, 加藤 勲, 芳賀 勝, 水谷 登, 水谷 浩也, 小林 正
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 3-8
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    健常日本人(男性97名,女性34名)の加算平均心電図(SAE)の計測値をベクトルマグニチュード(VM),XYZ誘導別,および解析周波数別に(1)性,体表面積(BSA)との関係,(2)日本人における正常値について検討した.
    今回我々が使用した正常者の群より求めた正常範囲はFQRS(<119.5ms(25Hz),<115.0ms(40Hz)),LAS(<39.0ms(25Hz),<43.1ms(40Hz)),RMS40(>28.1μV(25Hz),>20.0(40Hz))と従来の報告に近似していた.FQRSはVM,YXZ誘導すべてにおいて男性が高値を示したが(p<0.001),RMS40,LASではVM,XYZとも一定の傾向を示さなかった.FQRSは身長,体重,BSAと強い相関を示すためFQRSの男女差は体格の差によるものと考えられ,BSAによる補正が必要と考えた.FQRSをBSAで補正したcorrected FQRS(cFQRS)を求め,この95%信頼区間より求めたcFQRSの正常範囲は補正する前より限定でき,BSA別に正常範囲を設定することが可能であった.このためスクリーニングに用いる際,より鋭敏に異常者をとらえることができると考えられた.
  • 山岡 貢二, 津田 尚也, 瀧聞 浄宏, 岩本 真理, 安井 清, 真下 和宏, 柴田 利満, 新村 一郎
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 9-14
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    当科循環器外来を受診した3歳から20歳までの小児および若年成人217名を対象に加算平均心電図を行い,小児期の特徴および時系列解析の指標の正常範囲について検討した.機種はCorazonix 社のPredictor を使用し,原則として最終ノイズレベルが0.30μV未満になるまで加算した.
    小児期の特徴として加算回数が低年齢になるほど有意に増加した.また自動計測ではノイズの混入のためにX,Y,Z各誘導の終了点がばらつき,VectorMagnitude 法でも終了点が正確でないと思われる症例が約半数あった.このためGomes の心室遅延電位の診断基準のうち2項目以上満たす症例が33例(15.2%)あった.手動補正により心室遅延電位陽性例はなくなった.時系列解析の指標のうちf-QRS とLAS 40 は年齢と正相関を,RMS 40 は負相関を認めた.95%信頼区間の上限を直線回帰して正常範囲とするとf-QRS=77.0+1.95× 年齢,LAS40=23.1+0.77× 年齢となった.
    小児の加算平均心電図の問題点として加算回数を減らすなどノイズの混入の機会を減らしデータの信頼性を高める必要があると思われた.
  • 大野 安彦, 中里 祐二, 中里 馨, 松本 佳久, 住吉 正孝, 小倉 俊介, 中田 八洲郎, 出ロ 洋
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 15-18
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    加算平均心電図における周波数解析法による心室遅延電位検出の診断精度を評価するため,健常男性50例(N群)ならびに非虚血性心室頻拍症例20例(VT群)を対象に,2種類の面積比算出法(AR-1:20-50Hz/10-50Hz,AR-2:20-50Hz/0-20Hz)を用い検討を行った.診断基準値は,従来より用いられている値(C1)ならびに健常群より求めた95%信頼区間値(C2)を用いた.C1を用いると,AR-1でN群0%,VT群5%の陽性率であり,AR-2では両群ともに100%の陽性率であった.C2を用いるとAR-1でN群4% ,VT群40%の陽性率であり,AR-2でN群6%,VT群35%の陽性率であった.すなわちC1の診断精度は極端に不良であり,かつ算出法の違いにより診断結果に大きな差を認めた.C2の心室頻拍予知に関する感度ならびに特異度は,AR-1で40%ならびに96%,AR-2では35%および94%であり,2つの算出法での差を認めなかった.以上のように,周波数解析法を用いた心室頻拍症例検出の診断精度は,面積比算出法の差によらず,適正な診断基準値の設定により,成績の向上が可能と思われた.
  • Holter 心電図法とisoproterenol負荷との対比
    中川 幹子, 小田 真理, 石田 修二, 米持 英俊, 藤野 孝雄, 犀川 哲典, 伊東 盛夫
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 19-24
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:加算平均心電図(SAE)に対する自律神経の影響を検討した.対象および方法:対象は健常成人男性10例である.(1)Holter心電図法を用いて,1時間毎のSAEと心拍数および心拍変動との相関関係を評価した.心拍変動の指標として,FFT解析により低周波数成分(0.04-0.15Hz,LF),高周波数成分(0.15-0.40Hz,HF),および両者の比(LF/HF)を求めた.(2)Isoproterenol負荷前後でのSAEの変化を観察した.結果:(1)f-QRSは全例で心拍数と有意な負の相関を,80%でHFと有意な正の相関を,80%でLF/HFと有意な負の相関を示した.(2)全例の平均値でみると,isoproterenol負荷前後でSAEの各指標は変化を示さなかった.しかし,isoproterenol負荷にてf-QRSの短縮する症例(5例,A群)と,延長あるいは不変の症例(5例,B群)が認められ,B群はA群に比し,負荷前の心拍数が有意に低く,副交感神経活動を反映する心拍変動の指標(5分毎のRR間隔の標準偏差の24時間平均値)が有意に大であった.結論:以上の成績は,SAEは交感神経と副交感神経の影響を受け,両者のバランスの違いにより,自律神経活動の変動に対するSAEの反応が異なることを示唆する.
  • 土尾 泰弘, 野上 昭彦, 内藤 滋人, 和田 淳, 岡本 栄一, 神山 宏, 外山 卓二, 星崎 洋, 大島 茂, 湯浅 和男, 谷口 興 ...
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 25-30
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:心筋梗塞患者における心室頻拍のsubstrateを加算平均心電図(SAECG) を用いて検出する際,梗塞部位別の陽性基準値が必要か否かを検討した.方法:前壁梗塞患者32名(男27,女5,64±8歳)および下壁梗塞患者25名(男20,女5,61±10歳)にSAECG とプログラム心室刺激を施行した.SAECG は時間解析指標として,filtered QRS (f-QRS),40μV以下のlow-amplitude-signal duration(LAS),QRS終末部40 msec のroot-meansquarevoltage(RMS),周波数解析指標としてarea ratio(area20-50Hz/area0-20Hz×105)およびnormality factorを算出した.結果:プログラム心室刺激によって前壁梗塞患者群で9名(28%),下壁梗塞患者群で10名(40%)に持続型単形性心室頻拍(SMVT)が誘発された.いずれのSAECG指標も梗塞部位に関わらず,SMVT誘発群と非誘発群の間に有意差が存在していた.SAECG時間解析指標ではSMVT誘発群あるいは非誘発群の中での梗塞部位による差異は存在しなかった.一方,周波数解析指標では,時間解析指標とは異なり,SMVT誘発群あるいは非誘発群の中で梗塞部位によって値が異なっていた.Reciever operating characteristic 曲線では,時間解析指標の各曲線は前壁梗塞,下壁梗塞間でほとんど変わりがなかったが,周波数解析指標の各曲線は,梗塞部位によって曲線がシフトしており,下壁梗塞においてはより厳しい基準値設定が必要と思われた.
    総括:SAECG時間解析指標には梗塞部位別の陽性基準値設定は必要ないが,周波数解析指標には下壁梗塞群でより厳しい陽性基準値設定が必要である.
  • Time domain 方式とfrequency domain 方式を用いての検討
    寺脇 一江, 長澤 進, 川上 澄子, 佐々木 亮太郎, 杉澤 一彦, 安冨 栄生, 田畑 文平, 岩崎 忠昭
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 31-36
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    陳旧性心筋梗塞(OMI)患者の加算平均心電図(SAE)の各パラメーターに対する加齢の影響,およびVT(+)群とVT(-)群の差異について,timedomain 方式とfrequency domain 方式を用いて検討した.
    対象はOMI 例322例でVCM3000での測定においてtime edomain 方式ではSAEのパラメーター,RMS40,QRSはともに年齢による影響を受けており,特にRMS40では60歳未満で60歳以上に比べ,VTに対するnegative predictive value が有意に低下した.
    Frequency domah 方式のパラメーターも,X,Y, Z, magnitude 誘導とすべての誘導のARにおいて年齢の影響を受けていることが判明し,VTに対する出現率等も,加齢の影響を受ける可能性が示唆された.
    以上より今後OMI例でのVTの出現率に対する検討の際には年齢を含めた評価が必要であると考えられた.
  • Prospective study
    江波 戸美緒, 中山 雅裕, 真島 三郎
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 37-41
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    加算平均心電図(SAE)の重症心室性不整脈,突然死予知に対する有用性は欧米の数々のprospectivestudyにより証明されてきた.しかし,本邦におけるprospective studyは少ない.本研究の目的は本邦において心筋梗塞後の致死性心室性不整脈予知に対するSAEの有用性は欧米と差違があるか,また長期予後予測に対しどの程度有用かを検討することである.
    対象は1986年2月より90年1月に急性心筋梗塞にて本院に入院した連続186例のうち,急性期の死亡,CABG例およびブロック,心房細動を除く145例である.全例において発症3-4週にSimsonらによるTime-domain法1)を用いてSAEを記録,解析した.Noise leve≦0.7μVにて記録が得られた130例を定期的に外来および電話問診にて追跡調査した.平均4.7±2.4年の観察期間中に不整脈事故(持続性心室頻拍,心室細動または突然死)は正常SAE群(104例)に2例(2%),異常SAE群(26例)に6例(23%),計8例に観察された.初回事故の63%は発症後2カ月以内に,87%が2年以内,全例が3年以内に起こっていた.また初回事故の75%が持続性心室頻拍(sustainedVT)であった.Kaplan-Maier法によるevent free rateは異常SAE群が正常SAE群に比し有意に低値であった.また異常SAEは左室駆出分画とともに不整脈事故の独立して有意な予知因子であった.突然死は3例(異常SAE群2例,正常SAE群1例)と少なく,その予知に対するSAEの価値を決定するのは困難であった.
    SAEは心筋梗塞後の致死性不整脈予知に有用であることは欧米のデータと一致した.しかしながら不整脈事故の頻度そのものが6.2%と同時期の欧米の報告に比し非常に低く,突然死も少数であった.また事故の発生状況からみてSAEの初回不整脈事故予知因子としての価値は長期的にも発症後の時間経過に影響を受けるものと思われた.
  • 諸江 一男, 三好 恵, 脇山 哲史, 宮脇 龍一郎, 占部 嘉男, 広木 忠行
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 42-45
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】高血圧性心臓病患者でACE阻害薬による心肥大退縮と致死的不整脈の基質となる遅延電位との関係を検討した.【方法】高血圧患者32名を心肥大群(H群),非心肥大群(N群)に分け,H群を肥大改善群(HI群),肥大非改善群(HF群)に分けリシノプリル(LIS)投与後加算平均心電図で検討した.【結果】1)RMS40はH群67±50,N群38±21μV(p<0.04)とH群で有意に高値であり,さらにHI群39±11,HF群86±57μV(p=0,07)とHI群は低値の傾向であった.2)HI群でRMSはLIS投与後39±11から43±19μVと増加し,HF群では86±58から65±47μVと減少した.【総括】LIS投与によりHI群でRMS値が増加したことは伝導遅延の改善,間質の線維化の縮小を示唆するものかもしれない.
  • フィルター,X, Y, Z誘導部位を中心に
    降旗 章子, 馬 依〓, 谷川 直, 小沢 友紀雄, 島袋 宏明
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 46-50
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】アナログフィルターを用いた体表面加算平均心電図の再現性,フィルター,誘導部位について検討を行った.【対象および方法】1993年10月から12月に当院不整脈外来を訪れた患者連続192人を対象としフクダ電子社製VCM 3000 を用い,再現性についてはR-trigger, forward(F)のアナログフィルターを用いて連続2回記録について検討した.フィルターの影響については, R-trigger, (F)およびbackward(B)のアナログフィルターの記録とVL-303を用いたnon(N)フィルターの記録に(F)および(B)フィルターをかけたデジタルフィルターの記録を対比検討した.誘導部位の影響については従来どおりの(X誘導は1誘導,Y誘導はaVF,Z誘導をV2とする)誘導1と,Z誘導はそのままで上下肢の誘導を下に下げた(X誘導を左右第3肋間で前腋窩腺,Y誘導を左鎖骨中線下で腰部水平位置とする)誘導2について検討した.【結果】再現性にっいては相関係数r=0.98,フィルターについてはアナログフィルターの(F)と(B)のfQRSは相関係数は相関係数r=0.94,両方向補正fQRSとデジタルは相関係数r=0.94,両方向補正fQRSとデジタルフィルターの(F)と(B)のfQRSはそれぞれ相関係数r=0.97,r=0.97,誘導1と誘導2については相関係数r=0.95であった.【結語】VCM3000の再現性は良好で,誘導部位やフィルターの方向に関係なくアナログフィルターでもデジタルフィルターでもほぼ同様の結果が得られた.
  • 手島 保, 桜田 春水, 岡崎 英隆, 野村 周三, 森本 理, 柳瀬 浩, 徳安 良紀, 本宮 武司, 平岡 昌和
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 51-55
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    Time domain 法による加算平均心電図の再現性についてprospective に検討した.対象は不整脈患者連続240例で,同一電極にて連続2回の記録を行った.1回目と2回目の記録の比較ではf-QRS,LAS 40, RMS 40ともに平均値には有意差はなく,それぞれの相関係数もr2=0.996,0.963,0.966と良好な相関関係が認められた.再現性不良例はf-QRS, LAS40, RMS40 ではそれぞれ19例(8%),40例(17%),55例(23%)に認められたが,正常・異常の判定結果が逆転した例はそれぞれ1例(0.4%),7例(2.9%),7例(2.9%)ときわめて少数であり,判定結果の再現性は良好であった.
    結論:実用臨床レベルではtime domain法による加算平均心電図の再現性は良好であると考えて良い.
  • 中里 祐二, 中田 八洲郎, 中里 馨, 戸叶 隆司, 安田 正之, 松本 佳久, 大野 安彦, 住吉 正孝, 小倉 俊介, 山口 洋
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 56-59
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:ST法における誘導別の診断結果の再現性につき検討すること.対象および方法:健常成人男性65名(平均年齢30歳)で,直行する双極XYZ誘導により加算平均心電図を15分間隔で2回記録後,ST法を行い時相間の相関の程度を表す4つの指標(ISCM,ISCSD,LSCR,SE)の測定値および診断結果の再現性につき各誘導別に検討した.診断基準は従来の報告に従った.結果:1)2記録間の診断結果一致率はX誘導で98%, Y誘導95%, Z誘導100%,XYZ誘導の平均95%であった.2)ISCSDはいずれの誘導においても,他の3指標に比し2記録間の相関は低値であった.結語:健常人におけるST法の診断結果の再現性はいずれの誘導でも良好であり,特にZ誘導が最良であった.ISCSDは他の指標に比し再現性が低かった.
  • 山田 貴久, 福並 正剛, 大森 正晴, 熊谷 和明, 大江 洋史, 阿部 泰士, 西川 永洋, 金 智隆, 伊達 基郎, 伯耆 徳武
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 60-64
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    【目的】P波同期式体表面加算平均心電図(PSAE)の再現性について検討.【方法】対象は洞調律を有し2回以上記録した心疾患患者72例と健常者22例の計94例である.P-SAEはband pass filterは40-300HzでP波同期にて200心拍以上加算して記録した.空間マグニチュード波形でフィルター化P波持続時間(Ad)と終末部20ms間の平均電位(LP20)を計測した.1回目のP-SAEの記録1時間後に再度P-SAEを記録した.次にP-SAE記録間隔を(i)2日から3カ月以内(s),(ii)4カ月から12カ月(M),(iii)12カ月以上の期間(L)に分け,各期間ごとにP-SAE諸指標の相関係数(r)を求めて比較した.【結果】(1)再現性:Ad, LP20のrは各々0.99,0.96で再現性は良好であった.(2)S期間M期間のrに比し,L期間のrは低値を示した.【総括】P-SAEの再現性は良好であった.P-SAE記録後1年から2年以上経過した際は再検する必要があることが示唆された.
  • Stephen C. Hammill
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 65-71
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
  • 有賀 雅和, 佐々木 康之, 宮沢 泉, 丸山 隆久, 椎名 裕之, 小口 猛, 古田 精市
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 72-78
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:体表面加算心電図mapping(SAE map)につきforward filter(F)群とbackward filter(B)群の差について比較検討した.対象と方法:対象は器質的心疾患を有する24例.VCM-3000を用いSAEおよび体表面48点のSAE mapをFおよびBで記録しfQRS,RMS40,Area40,RMS20,Area20を測定.SAEではvector magnitude(VM)の各指標につき,またSAE mapでは48点を前胸部と背部の2群に分け各指標の平均値につき,それぞれF群およびB群で比較検討した.結果:(1)VMではRMS20,LAS40がF群で大きく,その他の指標はF群で小さかったが,有意差は認められなかった.(2)SAE mapでは前胸部ではfQRSとRMS20,背部ではfQRSとArea40で有意差を認めた.(3)VTの有無で各指標に有意差は認められなかった.総括:SAEおよびSAEmapを施行するにあたり,F群とB群で有意差が認められる指標もあり,計測および診断にあたり留意すべき点と思われた.
  • 体表面高周波電位分布図と心室遅延電位検出の併用
    永井 伸枝, 上出 真一, 山口 珠緒, 伊藤 幹弥, 森 紳, 安保 泰宏, 中野 博, 近松 均, 菱田 仁, 渡邉 佳彦
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 79-82
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    体表面高周波電位分布図(HFP-MAP)と心室遅延電位(LP)の両者を併用し,心筋梗塞患者のもつ致死性不整脈発生のriskを予測した.発症から1カ月以上経過した心筋梗塞例(n=63)に,QRS波の25-50Hzの周波数帯域の体表面分布を表すHFPMAPと,加算平均心電図法によるLPを記録し,Holter心電図で検出された致死性不整脈との関連を検討した.HFP-MAPは分布様式によりほぼ等しい2個の極大を有するA型(n=12),一方が優位な極大を有するB型(n=12),極大が1個のみのC型(n=39)の3者に大別された.HFP-MAPがA型を示す12例中10例に致死性不整脈を認めた.C型を示す39例では,いずれも致死性不整脈を認めなかった.AあるいはB型を陽性の指標とすると,致死性不整脈検出のsensitivity は100%,specificityは71,0%,positive predictive value は33.3%,negative predictive value は100%であった.LPを指標とした場合は,それぞれ50.0%,81.8%,28.6%,91.8%であった.両方の指標を併用するとspecificityが94.5%まで上昇し,かつpositive predictivevalueが57.1%に上昇した.HFP-MAPがC型の場合はLPの判定結果にかかわらず致死性不整脈の発生riskはごく低く,逆にこれがAあるいはB型でかつLPも陽性の場合には60%近い的中率で致死性不整脈の発生がみられた.
  • 南家 俊彦, 杼木 秀高, 原 正壽, 宗 武彦, 桜井 庸晴, 中澤 潔, 佐藤 忠一, 村山 正博
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 83-87
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    周波数subtraction法を用い,QRS区間内高周波成分を検出し,その経時的な形態変化から拡張型心筋症に伴う伝導障害の解析を行った.対象は健常者(N群),拡張型心筋症(DCM群)とした.得られたsubtraction波形と原波形の全平均電位,持続時間,QRS終末部40msecの平均電位(RMS40)についてN群とDCM群で比較検討した.原波形では全平均電位と持続時間の有意差は認めなかったが,subtraction波形ではDCM群で,全平均電位とRMS40の低値,持続時間の著明な延長を認めた.以前の我々の研究で,伝導障害に伴う心室筋内伝導によるQRS区間内高周波成分は刺激伝導系を介する健常例に比し,電位の低下,持続時間の延長を示した.本研究のDCM群のQRS区間内高周波成分は持続時間の延長,電位の低下を認め,拡張型心筋症の心筋変性に伴う伝導障害の反映と考えられた.本法によるQRS区間内高周波成分の検出は原波形では検出不可能なQRS区間内に限局する心室内伝導障害を知るのに役立っものと考えられた.
  • 前原 和平, 圀分 俊典, 小野 正博, 古川 哲夫, 木戸 カヤノ, 丸山 幸夫, 粟野 直行
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 88-92
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    拡張型心筋症においてウェーブレット変換法を用いてQRS波形の時間・周波数解析を行い,左室機能との関連につき検討した.洞調律の拡張型心筋症20例と健常人12例を対象とし,電磁シールドルーム内で心電図を記録(DC-1 kHz)し,10心拍の加算平均心電図から1kHzにてサンプリングし,V5誘導のウェーブレット変換を行った.拡張型心筋症では健常人に比し高周波領域におけるウェーブレット変換波形の分裂数および時間幅の増大と波形下面積の減少が認められた[100Hzにおいてのピーク数:DCM12±2,健常人6±2,時間幅:DCM87±17,健常人64±11msec,波形下面積:DCML89±1.06,健常人4.43±1.04,いずれもp<0.01].さらに拡張型心筋症においてはpeak数(r=-0.72,p<0.01),時間幅(r=-0.63,p<0.01)と左室駆出率(13-41% ,平均26±9%)の間にいずれも有意な直線的相関関係を認めた.QRS波内部の微小高周波成分はリエントリーの基盤となる興奮波面の断列,遅延を反映すると考えられ,左室機能の増悪に並行して進行することが示唆された.
  • 住田 善之, 相原 直彦, 鎌倉 史郎, 下村 克朗
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 93-96
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:特発性心室細動例における加算平均心電図の特徴を明らかにし,その臨床的意義について検討すること.
    対象:特発性心室細動(IVF群)8例,および健常成人を標準12誘導心電図にて正常例(N群)22例と不完全右脚ブロック(IRB群)11例に分け対照とした.
    方法:ART社製1200EPXを用い,ノイズレベルが0.3μV以下となるまで加算し,Time Domain(TD)法,Area Ratio(AR)法,Spectro-Temporal Mapping(STM)法,Spectral Turbulence Analysis (STA)法の各種解析を行った.
    結果:TD法で,IRB群およびIVF群が,N群に比しTQRSD,T40は有意に延長,V40は有意に低値を示した(p<0.05).AR法は,Composite誘導において,IVF群が,N群およびIRB群に比し有意に高値を示した(p<0.05).STM法,STA法では各群間に有意差を認めなかった.
    総括:特発性心室細動例における加算平均心電図各種解析にて得た指標の一部は,正常群および不完全右脚プロッグ群との間に統計学的有意差を認め,何らかの伝導異常や心筋障害の存在が疑われた.
  • 小原 俊彦, 加藤 貴雄, 佐藤 越, 呉 小怡, 大村 和子, 小原 啓子, 金 應文, 黒木 伸一, 早川 弘一
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 97-101
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    従来のP波同期加算平均心電図の精度を向上させるため,前後両方向からのフィルター処理と,任意のP波加算が可能なシステムを試作,基礎心疾患,上質性不整脈を認めない50例を対象として,その解析精度の評価を試みた.XYZ誘導心電図のP波200回加算平均し,ベクトルマグニチュード波形を前方,後方,および前後両方向より50-250Hzのデジタルフィルターを用いて処理した.各処理方法におけるP波計測値(FPD,L20,D5)を比較した.フィルター処理後の波形および各計測値はフィルターの方向により大きく異なり,前方および後方よりの処理ではringingの影響と思われる処理方向への波形の変形が認められ,その結果FPD値は両方向処理に比べ大となった.P波の加算平均心電図を解析する場合,処理方法により,生じる波形の変化に留意する必要があると結論された.
  • P波同期式加算平均心電図を用いて
    高良 洋子, 上嶋 権兵衛, 秋元 奈保子, 塚原 玲子, 斎藤 徹
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 102-105
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    目的:高血圧性心疾患(HT)においてP波同期式加算平均心電図(SAE)を用い,心房性遅延電位(a-LP)の有無と発作性心房細動(Paf)出現とその背景因子について検討した.対象と方法:HT36例(男22例,女14例,平均年齢63.1±12.4歳)にSAE(使用機器フクダVCM3000)を施行し,FPD>125 msecまたはLASs>28msecを満たすものをa-LP陽性と判定.心エコーにおける左房径,左室壁厚,平均血圧,Paf出現の有無について比較検討した.結果:陽性群22例,陰性群14例で年齢,性別に差はなかった.左房径は陽性群で有意に大きく(p<0.05),左室壁厚は両群間で差はなかった.収縮期血圧,拡張期血圧ともに陽性群で高い傾向がみられた.Pafは陽性群にのみ4例みられた.また,FPDは左房径と有意な正の相関関係が見られた.考察:HTにおいて左房負荷がみられるものにPaf出現が予測され,またFPDは左房負荷の良い指標となりうることが示唆された.
  • 西田 隆寛, 安部 良治, 杉 薫, 野呂 眞人, 円城寺 由久, 池田 隆徳, 矢吹 壮, 山口 徹
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 106-109
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    WPW症候群と房室結節回帰性頻拍(AVNRT)に対する高周波カテーテルアブレーション(CA)の前後で加算平均心電図(SAE)を記録し,これらの疾患とCAの効果に対するSAEの意義を検討した.潜在性WPW症候群15例(cWPW群)およびAVNRT15例(AVNRT群)を対象としてSAEをCA前後で記録し,1)QRS持続時間(f-QRS),2)QRS初期5-40msecの平均電位(E5-40)を比較した.その結果,cWPW群ではAVNRT群に比しCA施行前ではf-QRSが有意に延長,QRS初期電位は有意に低値であった.また,cWPW群はCA施行後f-QRSが有意に短縮し,E5-40が有意に増加したが,AVNRT群ではCA施行前後で各指標の有意な変化を認めなかった.以上からSAEは非侵襲的に潜在性WPW症候群と房室結節回帰性頻拍を区別し得る可能性,ならびにCA効果判定に有用性があることが示唆された.
  • 松下 昌之助, 三井 利夫, 野田 泰永, 寺田 康, 厚美 直孝, 軸屋 智昭, 榊原 謙
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 110-114
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    開心術の体外循環離脱時に体表心電加算平均法を経時的に測定すると,離脱中の急性心室負荷に一致して,QRS内高周波電位(40-300Hz)を下げる症例が多くみられた.この現象を周波数解析法を用いてさらに検討し,心筋の伸展により電位に変化が生じるcontraction-excitation feedbackとの関連を検討した.【方法】開心術30例(年齢0-73歳)の体外循環離脱直前,離脱中,離脱後に体表心電加算平均法のQRS vector magnitude に対し周波数解析を行い,高周波数成分と低周波数成分の面積の比であるarea ratio(0-40Hz/40-100Hz)の変化を検討した.【結果】体外循環離脱前のarea ratioは9.88±10.43であり,離脱中は13.16±10,98に増加した(p=0.0060).また,離脱後は939±9.10と再び低下した(p=0.0016,vs離脱中).40-100Hzの高周波数電位面積は,離脱前の78.9%から64,5%に有意に低下し(p=0.0180),離脱後には78.2%とほぼ離脱前値に戻った(p=0.0045).離脱中の急性心室負荷時のarea ratioと大動脈遮断時間との相関(r=0.540)や遮断解除後体外循環時間との相関(r=0.710)は有意であった.【総括】体外循環離脱時の急性心室負荷による訂area ratioの増加には,高周波数成分(40-100Hz)の減少による例が多くみられた.急性心室負荷による周波数成分の変化は一過性ではあるが,心筋伸展が周波数成分構成に一定の可逆性の影響を与えるという点でcontraction-excitation feedbackに関連する現象ではないかと考えられた.
  • 田原 浩, 末田 泰二郎, 福永 信太郎, 渡橋 和政, 末田 隆, 浜中 喜晴, 松浦 雄一郎
    1995 年 27 巻 Supplement7 号 p. 115-119
    発行日: 1995/12/25
    公開日: 2013/05/24
    ジャーナル フリー
    加算平均心電図(SAECG)による心室遅延電位は,心室頻拍の予知に有用である.従来より心室内伝導障害はSAECGの対象から除外されていたが,最近では伝導障害例に対しても検討が行われている.また心筋梗塞部位別の心室遅延電位診断基準の必要性については一定の見解を得ていない状況である.本研究は陳旧性心筋梗塞(OMI)患者に対して右室ペーシング前後のSAECGを記録し,梗塞部位別に検討を加えることを目的とした.
    対象はOMI25例(前壁梗塞(A)10例,下壁梗塞(I)11例,前壁+下壁梗塞(W)4例)と正常対照(N)9例である.ペーシング前とペーシング時(L群:80/min,H群:120/min)に,フクダ電子VCM 3000を用いSAECGを記録しfQRS,RMS40,LAS40を求めた.
    ペーシング前にはOMI群とN群に指標の差は認められなかったが,OMI群のLP(-)群を梗塞部位別に検討すると,WのfQRSはAとIに比較し延長し,梗塞部位の違いによりSAECG指標に差が認められた.OMI群,N群ともペーシング時にはfQRSとLAS40は延長しRMS40は低下したが,L群とH群には差が認められなかった.OMI群を梗塞部位別に検討すると,Aと1のfQRS,RMS40,LAS40に有意差を認めた.
    ペーシング前およびペーシング時には,梗塞部位の違いによりSAECGの指標には有意差を認め,OMI患者に対するSAECGでは梗塞部位を考慮して診断する必要性が示唆された.
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